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クリテ最強の男 ダニエル・ホロウェイのペダリング

アメリカのプロクリテで最強の選手、ダニエル・ホロウェイはトラックで2020東京五輪への出場を目指しています。

 

五輪を見据えて伊豆ベロドロームで開催されたジャパン・トラックカップにアメリカ代表として参戦しました。

 

彼のペダリングは正確でスムーズ。

高速下でも足を使わないように優しく踏む技術や爆発的な加速、加速後スピードを殺さず出来るだけ長く維持する技術に長けています。

今回はウォームアップとクールダウンのビデオを紹介しましょう。

 

(1)トラックとクリテリウム

トラックとクリテは共通点が多いです。

・繰り返すダッシュ

・繊細なハンドリング

・刻々と変化するレース展開を読む能力

・速いケイデンス(90rpm 以上)

・15秒以内にON / OFFを繰り返す

 

ケイデンスは激しいスピードの変化に対応するために平均的なロードレースの90rpmより速くなります。

トラックとクリテを比較すると、トラックは更に早く120rpmを超えることも珍しくありません。

 

トラック・エリミネーション

黄緑の実線はケイデンス

黄緑の破線は90rpm 

黄色はパワー


スクリーンショット 2018-07-08 15.05.30

 

アイロン・ヒル クリテリウム(レース中盤)

黄緑の実線はケイデンス

黄緑の破線は90rpm

黄色はパワー

スクリーンショット 2018-07-08 15.10.11

2015アイロンヒル・クリテ(ダニエルの車載カメラ)

 

2015アイロンヒル・クリテ(ダニエルの最終発射台アルド・イレシュッチの車載カメラ)

 

こういったレースはペダリングの技術を磨いてくれます。

・ハイケイデンスで正確に踏む技術

・前走者のスピードに合わせるように(車間を一定に保つ為に)トルクやケイデンスを瞬時に調整する技術

・激しく変化するケイデンスに合わせてどの領域(0-120rpm)でも力をだせる技術

などです。

 

(2)ダニエル・ホロウェイのペダリング

ダニエルは前述の低回転から高回転までをこなし、足を溜めるペダリングから切れ味鋭いスプリント、さらにはそのスピードを維持出来るようなペダリングとそれを可能にするポジションを実現しています。

彼のチェーリングは60T(!!)しかし無理に踏み込むのではなくスムーズに回す技術がこの大ギアを可能にしています。

DSC_1147

(c)山岸正教

 

・鋭い踏み込みと高回転を実現するためには若干踵を上げた踏み込み。

鋭い踏み込みの為にはある程度、腰は前に置き真下に踏み込む事になります。

その時踵が下がっているとスピードが死ぬので、踵は上げます。

 

・なめらかな上死点・下死点の切り替え

トラックは固定ギアを使うためにペダルの動く速度(CPV=Circumferential Pedal Velocity)を一定に保つペダリングが要求されます。

ペダリング中、CPVは常に変化します。

時計で言う3時 or 9時頃の踏み込みではCPVが最も速くなり、上死点・下死点(時計で言う12時 or 6時)は最も遅くなります。

この差が大きすぎるとギクシャクしたペダリングになってしまいます。

踏み込みでついたスピードを上死点・下死点で殺してしまうからです。(バックを踏む状態になる or クランク一回転の中でパワーの変動が大きすぎるムラのあるペダリングになる。 )

踏み込み時はアンクリングをせずダイレクトに踏み込みのパワーをペダルに伝えて、上死点・下死点では踏み込みのスピードを殺さないように少しアンクリングを加えてペダルを送りCPVを一定にしてやります。

 

・安定した骨盤

骨盤が安定していないとパワーをロスします。クルマに例えるとエンジンマウントがしっかりしていない状態になり踏み込みのパワーを上下左右に逃してしまうからです。 

 

・前傾した骨盤

ハイスピード・大パワーを出す時は骨盤を若干前に倒したほうが、大パワーを発揮する臀筋群を使えるようになります。回して休む時は若干骨盤を立てた方が回転を維持しやすくなります。

 

・リラックスした上半身

前傾気味の骨盤から脊柱は折れることなく伸び背中はリラックスしたカーブを描きます。後ろから見て多少左右に骨盤から上の上半身が揺れるのは推進力を殺していない限り問題ありません。むしろ緊張してガチガチに固まってしまう方が滑らかなペダリングやスムーズな呼吸を妨げるので問題です。

 

 

(3)ペダリング・ポジション変更のポイント

皆さんがスムーズでパワフルなペダリングを目指す場合、これらのポイントを押さえて、あとは身長や体型、タイプ(クライマー・スプリンター・種目など)に合わせて調整をして行きましょう。

形をコピーするのではなく、スムーズなハンドリング・スピードを維持するペダリング・踏むペダリング・休むペダリングなど様々なシチュエーションに対応出来るポジションをゴールにして自分なりに作って行くのが重要です。

 

また
レベルによってポジションは変わっていきますから、レベルに合わせてあくまで自身に合った部分を取り入れていくことが大切です。

 

(4)スマホを活用しよう!

ペダリングやポジションを改善するには、通常のライド中に意識することはもちろん今回のようにビデオに撮るのもお勧めです。

自身の走っている姿をビデオで見ることで、色々な角度から改善点を見つけ出すことが出来るからです。

たとえば走行中に自身の視点から足首の角度を確認することは難しいですが、ビデオで真横から撮影すれば簡単にチェックできます。

 

ビデオはスマートフォンで手軽に撮れますから、定期的に撮影して比較すると良いでしょう。

その場合は、一定のパワーゾーン(テンポ=76-90% of FTPがお勧め)で撮影すると比較しやすいです。

スマートフォンの画像は歪みが大きく解像度も高くないので全てを正確に映し出してくれるわけではありませんが無いよりマシです。(少なくともショーウインドウ越しに一瞬映る自分をチェックしてポジションを判断するより良いです!)

 

うまく走れるようになるには日々の研究が必要不可欠です。

最近はスマートフォンなど身近にあるツールを使ってパフォーマンスアップにつなげることが出来ますから、これらを活用して走りを磨いて下さいね!

 

男子マディソンでポイントを取りに行くダニエル・ホロウェイ

 

 

 

 

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18 October 1997  91st Giro di Lombardia ABE Yoshiyuki (JPN) Mapei - GB Photo : Yuzuru SUNADA / Slide
18 October 1997
91st Giro di Lombardia
ABE Yoshiyuki (JPN) Mapei – GB
Photo : Yuzuru SUNADA / Slide

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[市川雅敏] 最高のチームの作り方 その2

ギジガーは心理・肉体面両面での選手管理に長けていた。父親のように選手に接し諭したという。

 

春先ホテルには体重計を持ち込み市川さんの体重を測り「マサ、まだ2kgオーバーだな。これはボトル4本を背中に背負っているのと同じだろ?少し落としたほうが良いよ。」とアドバイスした。

 

市川さんはギジガーの指導の元で順調にコンディションを高めていく。ティレーノ・アドリアティコでは数日間山岳賞をキープ、続くロマンディではジロを狙うエース、ダニエル・シュタイガーやロルフ・ヤールマンを好アシストしチーム内での信頼を築き上げていった。

 

一方のカーリン・カールはトレンティーノで良い走りが出来なかった。

 

市川さんの選考レースがロマンディ、カールはトレンティーノであることを既に知っていたチーム関係者にとって、どちらがジロに行くかは明白だった。

“市川雅敏は日本のパイオニア。彼の夢は実現した。

「ロマンディのクイーンステージで強かったマサトシをジロに選考した」チームGMタールマン”

当時の模様を伝える新聞

IMG_7674 (3)

 

かくして市川さんはジロのメンバーに選ばれた。

めでたくメンバーに入ったのは、エース・シュタイガー、実力者・ヤールマン、市川さんが師匠と慕うビターリ、インテルジロを狙うベシャールなど。

 

「ジロではやってやるぞ!」

 

全ての選手にとって不満の無い選考にチームの士気は上がり、皆がギジガーの采配に期待した。

 

「監督のサジ加減一つのベルギーチームと違って選考がクリアなの。監督に選手が電話して足を引っ張り合いすることもねえし、そんな事してもギジガーの考えは変わらないしさ。ロマンディが終わったときには、自分がジロに出ることは分かってたよ。」

 

「このチームに入って本当に良かった。」

クリアな選手選考、選手が慕う監督の人柄、科学的なトレーニングのアプローチ、どれをとっても最高のチームで迎えるジロに市川さんの胸は高鳴った。

IMG_7682

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2回に渡ってご紹介した[市川雅敏] 最高のチームの作り方。 いかがだったでしょうか?

良いチームは綿密な計画の元で作られて行くということが伝わっていたら嬉しいです。

 

よろしければシェアよろしくお願い致します。

#市川雅敏

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Abenova presents 市川雅敏氏 夕食会

市川雅敏さんから学ぶプロレース観戦術

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スクリーンショット 2018-06-19 12.00.40

 

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[市川雅敏] 最高のチームの作り方 その1

ツール・ド・フランスに向けて各チームがメンバーを発表する時期になりました。

メンバーの選考はどのチームにとっても頭を悩ます問題です。スター揃いのチームでは総合を狙うのか?ステージをメインに狙うチーム構成にするのか?総合を狙うチームにするにしても山岳でのアシストと平地での風よけの人数構成をどうするのか? ベテランを起用し確実性を狙うのか?勢いのある若手を使うのか?など悩みは尽きません。

最強スプリンターの一人であるケイレブ・イワンが、総合を狙うアダム・イエーツを中心に考えたミチェルトン・スコットのメンバーから外れたりと、強い選手が必ずメンバーに入れるとは限らず、どこで結果を出したいかを考えるチームの方針、監督の采配によってメンバーは決まります。

チームの思惑によって悲喜こもごもが起こるのがこの時期です。

メンバー選考にしこりを残してはチームの士気に関わりますし、何より成績を出すことが出来ません。全員が一つになってレースに向かえるチームを作ること。またそういう雰囲気を作るのも監督の能力のひとつです。

そこで今日は市川雅敏さんに学ぶ最高のチームの作り方をご紹介しましょう!

監督 ダニエル・ギジガーの采配

1990年 プロ4年目を迎えた市川さんはスイスを拠点にしたフランク・トーヨーに移籍。

ここで有能な監督に出会い、最高のチーム作りを学んだといいます。

フランク・トーヨーで采配をふるうのは、前年引退し監督に就任したダニエル・ギジガー。

元祖TTスペシャリストとしてエアロスキンスーツ、内蔵ワイヤのフレームをプロの世界に持ち込んだこの男は、緻密なトレーニングプログラムとオーガナイズされたチーム体制を構築することで、最高のチームを作り上げたと言います。

市川さんがプロ生活の中で最高のチームだったと評するフランク・トーヨーのチーム作り。

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“「やるぞ!」チームの士気は最高潮 ジロのスタート地点に並ぶ市川雅敏さん”

最高のチームとは?

プロ選手は勝つことで評価され、富と名声を手にする。

そこで監督は勝てるチーム、賞金を獲得出来るチームづくりを目指すわけだが、レースは一人で勝てるわけではない。

勝ちを狙うエースがいて、エースの勝利のために尽くすアシストが居てこそチームに勝利が転がり込む。

そのためには各選手が自身の役割を理解しチームメートの役割に敬意を払う必要がある。

戦術がブレるような自分勝手な走りをする選手が居ては勝てないし、またエースは絶対的な信頼を得ていなくてはならない。

メンバーが一丸となって勝利に向かえるのが、最高のチームだというわけだ。

プロチームの力学

プロで走るということはお金を稼ぐために走るということ。

通常プロ選手は契約にもとづいた給料の他にレースで獲得した賞金をチームで分配することで副収入を得る。

獲得賞金が増えればメンバーの士気は上がり、さらなる勝利の為に自ずとチームの結束は固くなる。

一方で活躍できず賞金が得られなければメンバーの士気は下がり、各選手は来期の移籍を考えて自身の成績を求めた自分勝手な行動に出やすくなる。

エースがアシストを信頼し、アシスト選手は全力でエースを助けたくなる心理に持って行くことがプロチームのスタッフには要求される。

ダニエル・ギジガーのアプローチ

市川さんが前年ベルギーで所属していたHITACHIは、エースのクリケリオン(’84世界チャンピオン)他クラシックハンターが揃うビッグ・チームだったが、チームオーガナイズはめちゃくちゃで、メンバー選考は常に場当たり的。

市川さんは、ツール・ド・フランスのスタート地点に招集されながら、数日前に選考から外れたこともあったという。

「誰がツールに行くんだよ!」メンバー選考は監督のサジ加減ひとつ。

場当たり的なメンバー選抜に関してチーム内に遺恨が残り選手はストレスにさらされる。

選考されるためにチーム内では常に足の引っ張り合いがあり、自ずとチームの士気は下がった。

突如メンバーから外されたと思えば、突然レースに招集されることもある。そのような中でレースに向けての綿密なコンディション作りなど不可能だった。

一方フランク・トーヨーは小さいチームながらギジガーの指揮の元、全てがオーガナイズされていた。

シーズンが始まる前にギジガーは各選手のレーススケジュールに見合ったトレーニングプログラムを作成したという。

“ギジガーが市川選手に与えたトレーニングプログラムの一部”

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市川さんに与えられたプログラムは春先イタリアのライグエリアで始まり、ティレーノ・アドリアティコで調子を上げ、ツール・ド・ロマンディでジロを走れるコンディションを作っておくこと。

同じくメンバー入りを目指すカーリン・カールにはジロの前哨戦ジロ・デル・トレンティーノ(現ツアー・オブ・ジ・アルプス)でジロを走れるコンディションを作っておくことが求められた。

プロはレースによって出場メンバーが常に変わるし、たとえ同じレースに出走したとしても選手によって与えられる役割が異なるので順位だけではジロのメンバーの選考をすることは出来ない。

そこで似通った脚質のメンバーを異なるレースに出して、それぞれの走力を見て選考しようというわけだ。

ギジガーはこのプログラムをチーム内で情報共有し、市川さんの選考はロマンディ、カールはトレンティーノであることを周知した。

次回に続く

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市川雅敏さんから学ぶプロレース観戦術

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