USA Track Nat’s |
暦の上では秋になりますが、まだまだ暑い日が続きます。
暑い中でもレースにガンガン参加されている方も多いと思います。今回は暑い中でのレースに対処する方法をご紹介しましょう。
レースに参加する場合、暑い中でのトレーニング方法で紹介したような、場所・時刻などを選ぶ事は出来ません。ですから、如何に暑さに対処するか?が対策の焦点になってきます。
レースの日の暑さに対応する方法
(1)日陰を作る
日本のレースは、サーキット・河川敷などの日陰が少ない場所で行われる事が多い為、レース前から直射日光にさらされる事が多々あります。もし可能であればテントなどを用意して日陰を作りましょう。テントの設営が認められていない場合は橋の下、建物のそば、木の下などに駐車して少しでも日光を避ける努力をしましょう。この時、太陽の向きに合わせてウォームアップの時間に日陰が多くなる場所を確保するのがコツです。
(2)会場入り
暑い日は、いつものレースより会場での滞在時間を短くする方が良いです。暑い中、戸外でスタートまで長時間待機することは確実に体力を消耗します。到着がギリギリではいけませんが、もしいつもレース3時間前に会場入りしているのであれば2時間前でも良いでしょう。泊りでの遠征の場合、会場近くに宿を確保してアップがてらホテルから自走し、そのままレースに出るのも良い方法です。シマノ鈴鹿のように会場と駐車場が離れている場合や荷物が多い場合、早めに行って日陰の待機場所を確保するか、会場入りを遅らせて暑さにさらされる時間を短くするか悩ましいところですが、私は暑さにさらされる時間を短くする方をお勧めします。
(3)日焼けを防ぐ
小麦色に焼けた肌は、健康的で強く見えます。レースに出た証明に焼きたい方も居るでしょう。しかし日焼けは体力を消耗します。たいていレースは練習よりも時間が短いですが、戸外に居る時間は長くなります。必ず日焼け止めを塗って日焼けを防ぎましょう。
(4)水分を確保する。
レース会場にはソフトドリンクや魅力的な効果をうたったスペシャルドリンクが並んでいるかもしれません。しかし、最優先して確保すべきは、やはり純粋な水です。落車した場合の洗浄や頭からかぶって冷却に使うことも出来ますから多めに準備しておきましょう。また会場でスペシャルドリンクが配られていても、それが初めて飲む物の場合は、レース直前に飲んではいけません。
高エネルギードリンクを暑さで弱った胃腸は受け入れないかもしれないからです。安全の為、レース前は事前に飲んだことがあるものだけに口をつけましょう。新しい物を試したい場合は、練習で試してから実戦投入するか、もしくはレース後に飲みましょう。
(5)ウォームアップ
アイスベスト |
ウォームアップの目的は、筋肉・関節を温め心肺機能を激しい運動に耐えれるように準備させる事です。暑い日は、あまりにウォームアップに入れ込み過ぎると体がオーバーヒートし、レース前に消耗してしまいます。寒い日に行うアップよりも短めに切り上げ、不必要な熱は取っておきましょう。もし可能な場合は、ファンで冷却するかアイスベストを着用して無駄に熱で消耗しないように心がけましょう。具体的なウォームアップについてはブログの最後にご紹介します。
(6)レース
暑い日のレースは、スタート後ペースが上がり一旦アタックが決まると後半ペースが落ちる事が多いです。
暑い中でも集中を! |
しっかりとレースを見極め、乗るべきアタックに乗りましょう。もし乗り遅れると、暑い中で距離だけを消化するレースになってしまう羽目に陥ります。ここで難しいのは暑い日は、自分自身もアタックが打てる回数が減ることです。ですから全てのアタックに反応すると自滅してしまいます。「これだ!」と直感したアタックに全神経を集中させましょう!
また暑さは集中力を低下させることがあります。しかし、レースは高速で行われますから、しっかりと集中し落車の危険予知や自身のハンドリングに気を使うべきです。
フラフラしているようなライダーが居たら一声かけて、あとは近づかないことです。
(7)レース後
フィニッシュしたらクールダウンをして体と神経を鎮めます。水分と栄養を取って体の回復を促進しましょう。前述のスペシャルドリンクを試したければ今です。明らかに回復が促進されたら次のレースから採用、お腹を壊したら不採用です。
そして出来るだけ早くシャワーを浴び肌を清潔に保ちましょう。身体がほてっている場合は水風呂や水シャワーで無駄な熱を取ります。短いレースでも大量に汗をかいて体内の水分は減っていますから、湯船に長く浸かる事は避けましょう。
(8)機材
装備するボトルは必要に応じてダブルボトル。水は冷やしておきましょう。ひとつはスタート前に溶けるように、片方はレース中盤で溶けるように凍らすのも良いアイデアです。お腹の弱い選手は冷やし過ぎないように!また片方は水、片方はエネルギードリンクにして、水を前半の水分補給とシャワーに、エネルギードリンクを補給食代わりに使う方法もお勧めです。
前述したように暑い日のレースは後半いつもよりペースが落ちる為、1/1000秒を詰めるような機材の効果は薄れます。一旦気持ちが決まったら、あまり機材の事は気にせず体の状態を最高に持って行くことに神経を集中する方が、効果的です。
(9)その他
暑い日、自動車の車内は大変な高温になります。ダッシュボードや窓ガラス越しに直射日光が当たるところにサングラスやヘルメット・カーボンホイールやフレームを置くと熱で変形して使い物にならなくなる可能性があります。毛布やカバーをかけて直接熱にさらされないようにしておきましょう。
(10)暑い日のウォームアップの例
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WU:エンデュランス(Power Z2 56-75%, HR Z2, RPE 2-3) 15分
・3×30秒 高回転走 レストは1分
・VO2MAX or 106%FTP で90秒 x 2 間は適当(3分程度)
・軽くダウン 5分
もしレースが短く、強度が高いものであると予想された場合は、下記の中から適したものを選んで追加されるのがお勧めです。
・5秒間のスプリント 数本 ギアは全力よりも1~2枚軽く
・FTP FTP(Power Z4 91-105%, HR Z4, RPE 4-5)で5~10分
・VO2Max VO2Max(Power Z5 106-120%, HR Z5, RPE 6-7)で3分、ギアは軽めで96-105rpm
※ウォームアップはレースに向け身体を準備するだけでなく精神を集中する効果もあります。自分の中で「これをやっておけば、体が動く」という確信をもてる方法を模索し、プラン通りに遂行することが大切です。上記のアップをベースに自分なりのスタイルを作ってみて下さい。
暑い夏も、もうすぐ終わりです! しっかりと対策して好成績を狙いましょう!
では良いライドを!
Peaks Coaching Group
中田尚志
中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了