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レーサーがシーズン終盤にやっておくべきこと

シーズンも最終盤に来て、既に来季のトレーニング計画を練り始めている方も多いのではないでしょうか?

この時期にお勧めしたいのは、昨年と今年のパワーデータを比較し「昨年に比べて今年はどれぐらい進歩したか?」を数値化しておくことです。

こうすることで「全体的に強くなった。弱くなった」と漠然と捉えるよりも明確に数字で課題を浮き上がらせることが出来ます。

(1)ケース・スタディ
京都市にお住いのTさんは、45才。学生時代に競技に取り組んだ後、30代後半になってレース活動を再開したカムバック・サイクリストです。最近多いタイプの選手ですね。

カムバック直後、70kgあった体重は主にMTBマラソンなどに出場しているうちに60kgにまで減り、地元のカテゴリー1のクリテリウムでは2位に入れるまでに脚力は戻りました。

そんな彼が来年更に能力を伸ばすために必要な条件をパワーデータから見て行きましょう。

彼のパワーを昨年と今年で比較したところ、赤色のアネロビックキャパシティ(121-151% of FTP), オレンジ色のVO2Max(106-120% of FTP)は顕著な伸びを見せています。

一方で茶色のスプリントについては昨年よりも劣っていて、黄色のFTPに関しては現状維持だったことが分かります。
ここから、この冬彼が取り組むべきトレーニングはスプリントとFTPであることが見えてきます。

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(2)冬の課題と強化方法
・スプリント・・・筋力強化
・FTP・・・SST&FTPワーク

スプリント・・・彼の場合、学生時代にロードからトラックまでこなしていたため、ペダリング技術はかなり高いレベルにあります。
ですからスプリント力の低下に関してはテクニックよりも、加齢による筋量&筋力低下によるものが大きいと思われます。

その為、筋力強化を行えば昨年を上回る可能性があります。
また今まで特にストレングストレーニングや重いギアでのトレーニングに注力していたわけではないので、これらを行えば大幅に過去を上回る能力が獲得できる可能性もあります。

FTP・・・彼の場合、週末のロングライドによって持久力は高い為、エンデュランス(56-75%)能力は既に高いレベルにあります。

その為、FTPを増やすにはSSTやテンポ(76-90%)、さらにはFTP(91-105%)のトレーニングを冬の間から増やす必要があります。

また筋力低下がFTPの向上を妨げている可能性がある為、
1.SSTやFTPのトレーニング時に一枚ギアをかける。
2.SSTのトレーニングにスプリントを挟むなどの方法がFTP向上に効果的だと思われます。

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(3)強化をしていくために

一定レベル以上のマスターズレーサーにとって「乗り倒して強くなる」時期は過ぎている為、いかに弱点やレースで必要とされる能力にフォーカスしてトレーニングするかが成功のカギになります。

上記のように各パワーゾーンの変遷を確認することで、冬のトレーニングでフォーカスすべき課題がクリアになります。

そうすれば来年は今年以上のパフォーマンスを獲得することが出来、年齢を重ねても向上していくことが可能になります。

マスターズの年齢になり多くのレース経験・トレーニング経験がある上にパワーを向上させることが出来れば、若い時よりもパフォーマンスを向上させることが出来ます。
そうすれば加齢は減退ではなく向上の要因と捉えることが出来ます。

皆様も一年の総決算をこの時期しておかれることをお勧めします。

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中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了




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パワートレーニング・コーチから見たコロラド自転車事情vol.2

シクロワイヤード様に記事を掲載させて頂きました。
コロラド自転車事情の第二弾は、トレーニングピークスでの講義とエンデュランス コーチング サミットの模様です。

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25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了




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リッチモンド世界選手権データ解析 ジュニア女子

日本の梶原選手が4位に入ったのも記憶に新しいリッチモンド世界選手権女子ジュニア。

独走で優勝したクロエ・ディガート(Chloe Dygert)選手のパワーデータが公開されました。

彼女はITTでも優勝。地元アメリカに2枚のアルカンシェルをもたらしました。

クロエ・ティガート photo by Tommy Cheng

・選手データ
名前:クロエ・ディガート USA
FTP:285w(!)
体重:62-65kg
w/kg=4.5-4.4w/kg

・レース概要
距離:64.9km
タイム:1:42:16
NP 286w (一定パワーで走ったと仮定した場合のAVG)
TSS 174
エネルギー量: 1441kJ
Max :1,040w

1周ごとのNP(ノーマライズド・パワー)
———————————————————
1st Lap 287w 25:21 集団
2nd Lap 281w 26:04 前半集団、後半逃げにブリッジ
3rd Lap 289w  24:43 4名での逃げ
4th Lap  294w 25:48  独走
———————————————————

23番通り・ガバナー通りのパワー
———————————————————
       23rd st 0.25km | ガバナー通り 1.31km
1st Lap   541w 42sec | 241w 3:29
2nd Lap   629w 36sec | 298w 2:52
3rd Lap   520w 42sec | 317w 2:56
4th Lap   556w 40sec | 296w 3:00
———————————————————

(1)コースの特徴
今回のリッチモンドのコースは、1周16kmのコースの後半4kmに難しい箇所が集中するコースでした。
・舗装路の緩斜面から石畳の急斜面に変わるリビーヒル
・急勾配の石畳 23番通り
・フィニッシュに至るガバナー通り
この3つの坂とそれらを繋ぐダウンヒルがコース最大の特徴です。
 
 
(2)レース展開
ディガートは2周目から先行した3名の逃げに追いつき4名で逃げ続けました。(2周目の23番通り 629w 36sec)
そして、3周目の終わりからはTTで優勝した脚を活かして独走。(ガバナー通り317w 2:56)。
ラスト4周目の23番通りは後続に1分以上の差をつけていたにも関わらず、556w 40秒
まったく脚の疲れを見せない好走でした。
 
男子でもFTP285wあるアマチュアは少ないですが、石畳の23番通りを629wで登れるアマチュアは更に少ないでしょう。

(3)パワーから見た考察
また彼女のFTPは285wですが、レース全体のNPは286w。これは一定ペースで走ると286wで1:42:16巡航出来ることを示します。
FTP285wの選手が1時間以上285wを維持することは考えられませんから、レース当日の彼女のFTPはもっと高かった可能性が高いです。成長著しいジュニアレベルではレースで過去の自身の能力を大幅に上回るパフォーマンスを出せることがある好例でしょう。

(4)Wチャンピオンを生んだ理由
彼女はまだ18歳。自転車を始めて早いうちに頭角を表しましたが、昨年はバスケットボール中に痛めた十字靭帯の損傷の為、シーズンを棒に振ってしまいました。しかし飛びぬけて精神力が強いと言われる彼女は、地道にリハビリを続け今大会で二冠を達成しました。

彼女が通常所属するチームは、五輪2大会連続金メダルのクリスティン・アームストロングが運営に関わる Twenty16 Sho-air。
また婚約者はU23のスター選手ローガン・オーウェン。
更に監督として戦術を指示したのは、元名選手のイナ・トイテンベルグ。
これらの有能な指導者が、2個の金メダルに貢献したことは間違いありません。

またバスケットボールで鍛えたバランス能力がハンドリングスキルに活かされている可能性が十分あります。

更にアメリカでは、トップカテゴリーに所属する彼女は、年齢に関わらずエリート女子と一緒にレースを走れるのも大きいですね。
(ジュニア女子/エリート女子両方に出場可能なので、仕上がり具合や大会規模によって自由にエントリーするレースを選べます。)

ジュニアにも関わらず、来年のリオ五輪を既に視野に入れている彼女。
これから注目の選手ですね!

Training Peaks Data クリックすると開きます。

http://home.trainingpeaks.com/public/workout/L6OCCVYI3HLDK3TBEIUFUCKRTQ

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中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了