前回はマスターズのパフォーマンスを下げる要因と対策について書いてみました。
今回は、それらを踏まえた上で、どうパワートレーニングに活かして行くかを書いてみたいと思います。
43才までプロのトップで走ったイエンス・フォイクト |
(1)筋力強化
マスターズの年齢になると筋量の減少が加速します。
それを防ぐためにバーベルを上げるストレングストレーニング、もしくはバイク上で出来るストレングストレーニングを行う必要があります。
バイク上でのストレングストレーニングは全力で50-60rpmになるような重いギアでのトレーニングが効果的です。
上半身のバランスを取り、しっかりとペダルに体重が乗るように踏み込みます。
この時、脚は引っ張り上げる必要はありません。(引き足は推進力としては効率が悪いです。)
ダウンストロークに集中して踏み込みましょう。
また大切なのは時間を区切ることです。
30年ほど前に盛んに行われた延々アウター縛りで走る方法は今ではあまり意味がないことが分かっています。
それはベンチプレスで50kgを1回しか上げれない人が100kgを1回挙げれるようになるためには、50kg→60kg→70kgと重量を増やして行く必要があり、回数を増やすことではないのと同じ理屈です。
50kgを30回上げれるようになっても100kgを挙げれるようにならないのと同じで、アウターで3時間走れても筋力はつきません。
重いギアでゆっくり長距離を走るのが得意になるだけです。
ビッグギア・インターバル
WU(ウォームアップ)の後、
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MS1: SST 10min
5分 50-60rpm
5分 90-100rpm
5分 流し
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MS2:Big gear repeats
1分 全力で50-60rpmになるギア
1分 >120rpmになるギアで
1分 流し
以上3分を1セットとして7セット21分
——
CD(クールダウン):15分
(2)ホルモン分泌量の減少
ストレングストレーニング、ハイ・インテンシティ(高強度)トレーニングは、ホルモンの分泌を促します。
またFTP120%を超えるような短時間・高強度のトレーニングは、レースの出場回数が減る傾向のあるマスターズにとって、レースに備える意味でも重要です。
トレーニングの最後に下記のインターバルを1本追加する。
・5 x 1分 全力
地形: 7-8分の登り
レスト 30秒(レスト中も登り続けること)
(3)回復力の低下
加齢と共に回復が遅くなるのは、ある程度仕方ありません。回復を少しでも早くする努力と共に、回復時間を考慮に入れてトレーニングを組む必要があります。
週あたりのTSSを管理し、あまり極端にアベレージを超えないようにします。
例えば週あたりのTSSが600tssを無理なくこなせる場合、3週間でTSSは1800をコンスタントに、こなせる計算になります。
このAVGをベースに増減はさせますが、極端に超えるようなトレーニングは控えるべきです。
ある週に激しくトレーニングし900tssを超えてしまった場合、次の週は200tssぐらいになるでしょうし、その翌週もまだ回復出来ていないかもしれません。3週目に400tssをこなせたとしても3週間のTSSの合計は1500tssとコンスタントに1800tssをこなせた時よりも、ボリュームは300tss(概ね週末の長距離1日分)減ってしまいます。
体に激しいダメージを与えた分、故障や病気になる可能性も増えます。
ボリュームをコントロールして充分に回復をとりながらコンスタントにトレーニングした方が結果的には、強くなれる可能性が増えます。
実はここにマスターズが陥りやすい落とし穴があります。
多くのマスターズは、若い頃と同じ距離をこなせることに達成感を感じます。そうする事で「まだまだ10年前と同じ練習がこなせる。」と若さを感じることが出来るからです。
しかし加齢の為、同じ距離をこなすと回復に時間がかかり強度は落ちてしまいます。結果、ひたすら低強度で距離をこなす練習になってしまいFTPより上の領域は刺激できなくなってしまいます。
走行距離は減らしても強度は落とさないのが重要です。
次回は、アンチエイジングをパワーで評価する方法を書いてみたいと思います。
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中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了