アメリカ・ノースカロライナ州在住のPCG-Japanコーチ、ゲン・コグレの春のトレーニングプランです。12週間のセルフトレーニングメニューで、週8~12時間練習される方向けです。データ解析や通話コンサルティングは含まれません。
ご購入はこちら→リンク
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そろそろ2017年のレースカレンダーも確定しつつあるこの時期、今シーズンの活躍を誓って乗り込みをしている選手も多いと思います。
しかし、短い日照時間・不順な天候・期末に向けての仕事など何かとトレーニングを妨げる要因が多く満足に距離を稼げないのがこの時期です。
年末年始に食べ過ぎて太った上に乗り込みが出来ず焦っている選手も居るかもしれません。
アメリカでは、ハロウィン・サンクスギビング(感謝祭)・クリスマスのホリデーシーズンを越えて「ヤバい太った!」とコーチに電話してくる選手が増える時期です。
そこで今日は時間が無い時のトレーニングPart1に続いてPart2を書きたいと思います。
(話は逸れますが、日本の選手はダイエットを頑張るあまりパワーを落としている選手が多いと感じます。ダイエットはあくまで実出力(アブソリュートパワー:absolute powerといいます)を落とさず、体重を減らしてパワーウエイト・レシオをあげないと意味がありません。
体重と同時にパワーも落としてしまっては全体的なパフォーマンスの向上は望めません。あくまでパワーを落とさずに体重を減らすのが重要です。また欧米のコーチはよく「痩せろ」と言いますが、それは欧米人は日本人よりカロリー摂取量が多く太りやすい事も忘れてはならないと思います。)
乗り込みの時間が取れない場合のトレーニング
乗り込みはFTP以下の強度での走り込みを指します。有酸素運動のパワーを上げ、体調を整え、FTP以上のトレーニングを行う土台になります。これをエアロビックベースの構築と言います。
1.無酸素は有酸素に代えられない
時間がない場合はトレーニングの強度を上げて時間当たりのTSS・kJを上げるのが有効です。
要するにトレーニングの密度を上げる訳です。
しかし、時間がないからと言って”モガキ倒せば良い”わけではありません。
エネルギー代謝から言って無酸素運動を有酸素運動に代える事は出来ません。あくまでエアロビックベースは有酸素領域で構築しなければなりません。
その為、エンデュランス領域での乗り込みに代わる強度の上限はテンポ~SST(88-94% of FTP)になります。
2.テンポを増やす
プロ選手の場合、2月から始まるシーズンに向けて12月はエンデュランスやテンポをこなし、1月になると更にFTPやVO2Maxのトレーニングも取り入れて行きます。
プロはエンデュランスゾーンで6時間も走ってエアロビックベースを作れますが、アマチュアの場合は、プロほどには乗り込む時間と体力がありません。
この対策として乗り込みの強度を上げ、短時間で有酸素能力を刺激するのが有効です。
テンポ(Power Z3 76-90%, HR Z3,RPE 3-4)は有酸素の上限に近い為、時間当たりの効果が高いです。
ハンター・アレンの言う「パワートレーニング成功の秘訣は各パワーゾーンで過ごす時間の最適化」はここでも当てはまります。
時間の無い選手は、テンポを増やし、持ち時間の中でパワーゾーンの割当を最適化するわけです。
※FTP 300W の選手のテンポの例
3.テンポの方法
時間:最初は20分程度から始めて、回を追うごとに10分程度延ばして行きます。エリートの選手であればMax90分程行います。
パワーでの管理方法: 20分以上の実走になると信号や起伏の変化もあります。テンポの管理にはNP※を使うのが有効です。
テンポを行いNPがテンポのレンジに入っていれば、多少信号や起伏の変化があっても体に与える刺激はテンポの強度に入っていると考えて大丈夫です。
※NP(Normalized Powerノーマライズド・パワー)=もし一定ペースで走った時にどれぐらいのパワーになるかの想定値。
NPは20分程度だと実際より高く表示されるので、20分程度のテンポであればレンジの上限に入るように頑張りましょう。
4.テンポのダイエット効果
テンポは乗り込みの代りになると共に副産物として、ダイエット効果があります。
時間当たりの消費エネルギー量が大きく沢山のカロリーを消費出来るからです。
強度が高ければ高いほど時間当たりの消費エネルギー量は多くなりますが、FTPを超えると持続時間は急に短くなります。
有酸素運動のテンポは強度を確保しつつ、長く続けることが出来るので結果的に消費エネルギーを増やすことが出来るのです。
下のグラフはテンポ(82% of FTP)・エンデュランス(66% / 56% of FTP)の消費エネルギーを比較したものです。
例えばFTP300Wの選手がテンポ(246W)で40分巡航すると600kJほど消費出来ます。
それは低いエンデュランス(56%,168W)の60分のエネルギー消費に匹敵します。
エンデュランスで60分のエネルギーをテンポでは40分で消費出来ますから、単純計算で時間を2/3に短縮出来るわけです。
寒さの厳しい日が続きますが、テンポを活用して上手く乗り込みを乗り切って頂きたいと思います!
東京・名古屋・福岡でパワーセミナーを開催します!
1/28(土)14:00~16:00
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http://www.jitetore.jp/contents/fast/event/201701182146.html
大阪のパワーセミナーに参加頂きありがとうございました。
参加者の方から興味深いご質問を頂きましたので、シェアしてみたいと思います。
Q1. TABATAを実施する際のパワーはFTPの何%で行うのがよいでしょうか?
質問者: セミナー参加者 堀様
A. PCGでは最初から全開!とペーシングの2種類の強度設定をお勧めします
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回答の前に少しHIITについて説明させて頂きます。
(1) Tabata(HIIT)について
Tabataを含むHIIT(High Intensity Interval Training)はエフォートとレストの時間比率を2:1以下にする高強度のインターバルトレーニングです。
HIIT
例: (20秒ON / 10秒OFF) x 8 =4分のTabata
(40秒ON / 20秒OFF) x 10 =10分のAC HIIT
Classic
クラシックなインターバルはエフォート:レスト=1:1~3とエフォートとレストが同じ or レストの方を長く設定します。
例: (3分ON / 3分OFF) x 3 = 15分のVO2Maxインターバル
(2分ON / 4分OFF) x 5 = 26分のACインターバル
パワートレーニングの観点から言うと、HIITは心肺機能にはVO2Max(HR Z5, RPE 6-7)の負荷をかけつつパワーはAnaerobic Capacity (Power Z6 121-150%, HR Z6, RPE >7)の強度でトレーニングする手法です。
クラシックは心肺機能・パワー共にターゲットのパワーゾーンを狙い撃ちして能力を伸ばす手法です。
HIITは高強度トレーニングを短時間で行えるメリットやレースでのパワー特性に近く、よりレースに即したトレーニングが出来ると言われています。
クラシックはターゲットのパワーゾーンに居る時間が長い為、よりフォーカスしたトレーニングが出来ると言われています。
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(2)実現可能な強度について
Tabataに限らずHIITについては、FTPをベースにすると実行できる強度は個人差が大きいです。
Tabataの場合、ある人は20秒ONの強度が170%以上を維持出来、ある人は150%以下かも知れません。
その為、それぞれの選手について強度設定/目標は変わってきます。
全体的に見て、トラック中距離、クリテ、短いロードレース、MTB XCO、 CXの選手はこういったトレーニングは得意です(>170% of FTPが可能) 。
一方、長いロードレース、ヒルクライマー、TTer は競技特性やFTPの高さからFTPに対してあまり高い強度は出ません。(160% of FTP程度になる)
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(3)Tabata(HIIT)の実行方法について
Tabataの実行方法そのものについては2つの考え方があります。
方法1. 最初から全開!どれだけタレても完遂!!
酸素負債を抱えれば抱えるほど効果があるという考え方。
これはタバタ本来のコンセプトで、無酸素を重ねて行っても時間の経過により有酸素の部分が出て来るので無酸素/有酸素両方に効果が得られるというものです。ペーシングは一切考えずとにかく最初から全開=酸素負債を最大にする走りが要求されます。
1. 最初から限界!
黄色の実線がパワー、黄色の点線がFTP、 ピンクが160% of FTP、緑が170% of FTP。
方法2. FTPの160-170%を繰り返す。
最後まで強度を下げない方が効果があるという考え方。
方法1.を行った場合、人によっては最後の方は酸欠でFTPさえ出ない事もしばしばです。
パワーベースで考えた場合、FTPさえ出てない強度になってしまうよりも、エフォート全体(Tabataなら4分)で大きなエネルギーを取り出した方が効果的との考え方から、ある程度ペーシングする方法です。
FTP以下の強度になると、あくまで筋肉にかかっている負荷はFTP以下なので、それよりも高いパワーを維持した方が良いという考え方です。
ちなみに160-170%の強度設定は、多くの人がここに収まる為です。可能なら170%以上にするべきですし、難しければ160%以下でも構わないです。
2.ある程度ペーシング
黄色の実線がパワー、黄色の点線がFTP、 ピンクが160% of FTP、緑が170% of FTP。
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(4)どちらを行うべきか?
実は、パワーの世界でもHIITに関して明確な答えがまだ見つかっていません(HIITが比較的最近登場したこと。個人差が大きい為に長期的な研究結果がまだ無い。)。その為、これといったガイドラインはありません。
PCGでは上記の二つを組み合わせています。
方法1を採用する場合
レースが近い、限界まで追い込みたい、負荷をかけたい場合。
例:トレーニング時間がなくその日のトレーニングがタバタのみの場合。など。
方法2を採用する場合
HIITの経験が浅い、足が出来ていない、一旦他の方法で追い込んだ後に仕上げで行う場合。
例: 初めてTabataにチャレンジする、本番のレースまで時間がある、トレーニングの仕上げに行う。など。
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(5)経験則
私のクライアントさんを見て来た印象では、1を行った方が仕上がりは比較的早く、2を行った方が長期的な向上が見られるように感じられます。
理由としては方法1は、より高強度な為、体が高強度に対して開発されやすい。
2の方がターゲットに居る時間が長いので、長期的な向上を見込める。といったところでしょうか?
このあたりはあくまでレースに向けたトレーニングをする中で、他のワークアウトも組み合わせており、Tabataの効果だけを追ったわけではないので、もう少し専門的にデータを集めないと断言は出来ません。
あくまでこれまでの印象です。
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(6)最も重要なこと
確実に言えることは、どちらの方法を行うにしても限界まで追い込まなくてはならないということです。
方法1では2本目から既に足がもつれそうになりますが、それでもモガキ倒す必要があります。
方法2ではペーシングするといっても低い強度でペース走を行ってはトレーニング効果は薄くなります。
維持出来る限界で繰り返すことが必要です。
またHIITは調子を上げてくれる分、ダメージも大きいので、行うタイミングを選ぶのも大切です。
レースから遠く離れた時期に行っても、あまり意味がないばかりか、ピーキングを考えると害になりかねません。
この先、研究が進み方法1 or 2のみを行った方がいいのか?
もしくは1/2の最適な組み合わせが分かる日が来るかもしれません。(もし研究機関でこのようなデータをお持ちの方はご連絡お願いします!)
上記を参考にして皆様もご自身を実験室に色々と研究を重ねて頂ければと思います。
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