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[Track] HUUB WATT BIKEのマシン
4kmチームパーシュートで旋風を巻き起こしたフーブ・ワットバイクチーム。
彼らの出した3分53秒は今季のワールドカップが始まるまで、「史上5番目に速い”ナショナルチーム”」でした。
彼らは地元ダービーを拠点にするためダービーダス(Derbados=ダービー共和国)と自身たちを呼んでいます。
選考や規律があまりに厳しいイギリス・ナショナルチームに反旗を翻す形でチームを結成し自身達で国を作ったというわけです。
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HUUB Wattbike p/b Vita Coco のバイク
チームの選手であり創設者でもあるダン・ビグハムのエンジニアリングと競技で培われた知識により、彼らのマシンには面白い工夫がなされています。
(1)空気の乱流を防ぐDHバー
バイクの一番前についているDHバーは最初に空気を切り裂く場所です。腕とDHバーの間で乱流が起こると抵抗になるために前腕とDHバーの隙間を無くし、一体成型にすることで空気抵抗を10-15W低減しています。
(2)62 x 15Tのギア
世界の男子トップ選手は4kmTPにおいて4倍以上のギア比を踏みます。62 x 15Tであればギア比は4.13倍
54 x 13T も概ね同じ4.15倍ですが、62 x 15Tの方が後ろのスプロケット1枚にかかるトルクは減ることやチェーンの屈曲が緩くなるために駆動抵抗は減ります。
その為、大ギア x 大ギアの62 x 15Tの方が小ギア x 小ギアの54 x 13Tよりも駆動抵抗が少ないというのがダンの考え方です。(ビッグギアプーリーと同じ考え方)
(3)ワックス・コーティングされたチェーン
チェーンの摺動抵抗はチェーンの表面ではなく、実はピンとプレートが擦れることによって起こります。その為、チェーン表面にオイルを付けるよりもチェーン内部のピンとプレートを潤滑させるほうが効果的です。
その為、ダンはチェーンのワックスを開発しました。
一度チェーンを脱脂することでファクトリーオイルを落とします。
その上でワックスでチェーンを煮ます。そうすることでチェーン内部にまで潤滑剤を浸透させ駆動抵抗を減らします。
(4)ピラミッドサイクリングデザイン(Pyramid Cycle Design )の特注カーボンチェーンリング
62−65T ともなるとチェーンリングの半径が通常よりも大幅に大きくなります。その為、少しでも精度が出ていないとチェーンリングは上下左右に跳ねてしまいます。
また大きくなればなるほど剛性を確保するのは難しくなります。
世界のトップ選手だと4kmのスタートでもゆうに1,000Wは超えるので硬いカーボンチェーンリングを使用しています。
(5)ウォーカー・ブラザーズ(Walker Brothers Wheels )のテンション構造のディスクホイール
カーボンハニカムのいわゆる板ディスクではなく、スポークのようなテンションディスクにすることで、軽さと剛性そして足に対する反力の少なさを実現しています。
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超低予算の実質アマチュアチームですが、各国のナショナルチームが参考にするほど機材に工夫を凝らしてタイムアップを図っています。
莫大な資金があり風洞実験を繰り返すことの出来る各国のナショナルチームに対抗すべく、創意工夫と科学的アプローチでここまでやれるというのを証明したフーブ・ワットバイク。
機材の高額化、チーム予算の高騰が止まらない自転車チームの運営ですが、創意工夫でまだまだアマチュアがプロに勝てる余地はありそうです。
Peaks Coaching Group Japan
中田尚志
Powered by Izumi Chain Mfg. Co. – 和泉チエン株式会社
[Training] 限界まで追い込む
https://www.facebook.com/danslamusette/videos/1040847829597447/
映像はCXの名物レース ナミュールを終えたマチュー・ファンデルポール。
優勝後テントに向かっていますが、あまりの苦しさに視線は定まらず、ヨダレは出たままです。
CXは1h続くHIIT(高強度インターバル)のようなものなので、フィニッシュ後も強烈な酸素負債が残りこういった状態になることはままあります。
彼の場合は55秒の差をつけて優勝を決め最後は流したにも関わらずこの状態です。
ここまで追い込むには普段のトレーニングから苦しんでおかなければなりません。
限界まで追い込むことが苦手な選手は多いです。
レースは同じぐらいのレベルの選手が競っているので、明暗を分けるのは相手よりもホンの少しでも頑張れるかどうかです。
追い込むのが苦手な選手は限界突破の方法をトレーニング時に研究しておく必要があります。
(1)動機づけ
まずそもそもトレーニングの価値を考える必要があります。
「ここで苦しんでおけば、強くなれる。速くなれる。自身にとってこのACトレーニングをすることは勝利を呼び込むんだ」という意識付けがないことには限界まで頑張れませんし、その価値も分かりません。
訳も分からずしゃにむに頑張っても長続きしません。
(2)集中する
限界まで追い込むには静かな道で集中して走る方が良いです。
脇道がなく人やクルマの来ない安全な道で集中力を高めましょう。
気が散るような道路環境は追い込めないばかりか危険です。
近くにそういった環境がない場合はローラーを使うのも一手です。
(3)ストレスを減らす
自宅から100kmも離れた場所で「ここでぶっ倒れても良い」と思ってインターバルをするのは難しいです。
頭のどこかで帰りのことを考えてしまうからです。
終わったらすぐに帰宅出来る場所の方が心置きなく集中して追い込めます。
(4)パワーメーターを使う
インターバルの時にパワーメーターでラップをとります。
例えば2分のインターバルを4本するとしたら、1本目400Wだったら、次は410W、その次も410W、どうにも苦しくなってきたらせめて一本目の400Wは維持するように。。。
っと数字を見ながら限界を突破して行くわけです。
そして次回は今回の平均(400+410+410+400)÷4=405Wをターゲットとして一本目は405Wで(これは少し楽に感じるはず)、次も405W, その次は410W、最後の一本は絶対に410Wを超えるように!と目標を作ると限界を突破しやすくなります。
苦しいときはあれやこれやとたくさん考えるよりも一つのことを実現する方法を考えた方が、成功確率は高くなります。ここでは数字を上げる=速くなると単純化するわけです。
その実現方法としてペダリングやフォームに気をつけるわけです。
こうして平均パワーが上がった時に脚力と共に精神的な限界の突破能力も高くなっているはずです。
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中田尚志