リチャード・カラパスのツール・ド・フランス ステージ優勝のデータ
東京五輪チャンピオン、リチャード・カラパスのヘッドユニット動画から彼のパワーを見てみましょう。
ツール・ド・フランス 第17ステージ 優勝
The numbers it takes to win a stage at the Tour 🤯 A quick scroll through Richie’s Wahoo that saw him soaring towards a Stage 17 victory. 🎥: EF Pro Cycling
Posted by Velo on Wednesday, July 17, 2024
Wahooヘッドユニットに表示されたデータ
走行時間 4h6h45s
距離 176km
平均時速 43km
最高時速 94.7km
NP(ノーマライズドパワー) 323W
TSS304
IF(インテンシティファクター)0.86
エネルギー量 4020kJ
20分Max 398W
30分 360W
データから見えるもの
NP
カラパスのNPは323W。 これは、この日の彼は4時間6分にわたって、ずっと323Wをキープするのと等しい負荷を身体にかけたという意味です。
TSS
304TSS これは4時間6分で1hのTT3本分のストレスを身体にかけたという意味です。
IF
0.86 平均してFTPの86%の強度で走り続けたという意味です。プロ選手はFTPも高いですが、FTPに対して高い強度で長時間耐えれる能力もまた高いです。
別の言い方をするとテンポからSSTの強度でアマチュアよりもずっと長く走り続ける能力があると言えます。
エネルギー量
1Wで1秒漕ぐと1Jです。4020kJをカロリーになおすと960kcal。人間の身体は1J出すのに4J程度のエネルギーを使うと言われています。
960 x 4=3840kcal。 概ね3840kcalをこの日だけで消費したことになります。3840kcalというとビッグマック7個分、コーラ24本分のカロリーに相当します。これだけカロリーを4時間のレース中に消費したことになります。
カラパスのFTPは?
IFはNPをFTPで割って算出しています。ですので逆算するとヘッドユニットに設定したFTPが出てきます。
カラパスのFTP 323W÷0.86=375W
カラパスの体重がチーム発表の62kgとするとパワーウエイトレシオは6.04kg/W。
ツール期間中はもう少し体重が下がって、もう少しパワーウエイトレシオは高いかも知れません。
ツール・ド・フランスは第3週。 16ステージをこなしてこのパフォーマンスは驚異的ですね。
まだまだ続くツール・ド・フランス。 最後まで選手の走りが楽しみです!
クライアント募集中!
ピークス・コーチング・グループでは現在パワーベースでコーチングを受けるクライアントを募集しております。
「パワーメーターを持っているけど、どうやってトレーニングすれば良いか分からない」
「FTPが頭打ちになっている。」
「レースで勝ってみたい」
など、あらゆるトレーニングの課題にお応えします。是非お問い合わせ下さい。
コーチングについて
中田尚志
パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しパワートレーニングを学ぶ。帰国後8年間で14人の全日本チャンピオンを生み出し、五輪選手のコーチを2度経験。日本とアメリカの自転車文化に詳しい。
ステージズ・パワーの没落
ジョー・ドンブロスキーの話
ジョー・ドンブロスキーはバージニア州の出身。
丁度私がバージニアに住んでいる頃にプロになった。本人とは1回しか会ったことはないけど、友人のジェレマイア・ビショップがコーチをしていたこともあり近い存在だった。
ジョーはアマチュアのジロでアメリカ人として初めて総合優勝。
最近は珍しい生粋のクライマーながら総合優勝を狙える選手として、当時は大きな期待が寄せられていた。
チームskyから新人としては例外的な3年契約のオファーを得てプロ入り。一年目からツール・ド・スイスであわやステージ優勝のところまで行き、彼の未来は明るく見えた。
しかし、プロ2年目に足の血行障害(イリアック・アテリー)を発症。
片方の足に力が入らなくなる状態に陥り手術。
その後はEF、UAE、アスタナに所属し、米国内のレースではエース、それ以外は山岳で総合を狙う選手の重要なアシスト要員としてグランツールに出場していた。
突如潮目が変わったのは昨年。
アスタナはカベンディッシュのツール最多勝を目指すチーム編成に方針転換。
平坦一本で勝利を狙うチームに山岳アシストの居場所は無くなった。
チーム方針が変化すると突如高給取りの選手は居場所が無くなる。
いくら強い選手とは言え、カベンディッシュのゴールスプリントをお膳立てをする選手に鞍替え出来るわけもない。
今季はチームが決まらないまま渡欧。
トレーニングを続けながら就職活動を行うもチームは見つからず引退となった。
どれだけ強くともチームが見つかるわけではない。プロサイクリングの厳しさを再認識した出来事だった。
Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志