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[Training] CXのすゝめ Part2

先日シクロクロス(CX)のメリットとして下記を挙げましたが、「自転車の取り回しが上手くなる」ということについては、レース経験の浅いロード選手にも大きなメリットがあります。

それはロードバイクでこういうトレーニングをするのはクラッシュのダメージを考えるとリスクが大きいですし、Rの小さなカーブをハイスピードで回るトレーニングは場所の確保も含めて中々難しいからです。

 

CXのハンドリング練習

アメリカ自転車競技連盟主催のCX育成キャンプ

 

CXのトレーニングで転ぶと痛い思いはしますが、ダートや芝の上でクラッシュしても大きな怪我には繋がりにくいです。

またCXでは自転車が流れる(スピードが死なない)ラインを瞬時に読む能力が必要になりますが、これはロードでも役立ちます。

最速ラインを読んだり、砂が浮いているのを見て避けれるようになるからです。

また落車回避も上手くなります。

 

数年前のパリ〜ルーベでピーター・サガンがカンチェラーラの落車を避けたのをご記憶の方も多いかと思いますが、バランス感覚の良い選手は自身が転びにくくなるだけでなく落車した選手を避けるのも上手な例と言えるでしょう。

 

 

 

実際のトレーニング

実際のトレーニングはオフロードで行います。山の中や公園、未舗装路など人の来ないところを探して走ります。砂や砂利、シングルトラック、ジープロードなど色々な路面を走ったほうが経験値が上がり上達は早くなります。またドロップオフや障害物を置いて3D的な動きをするのもお勧めです。

 

トレーニングのポイントは「テーマを決めること」

立ち上がりの加速、コーナーリングのスピード、ハンドルを切らず倒すことで曲がる・・など毎ラップテーマを決めて走ると良いです。

 

パイロンや空き缶を置いてコーナーに見立てて攻めると良いでしょう。

タイムを測るのも効果的です。

 

8の字トレーニング

下記のビデオにあるようなトレーニングがお薦めですが、まずビギナーが始めるには「8の字」から入ると良いと思います。

 

どこでも出来ますし、左右のバランス感覚も均衡が取れるからです。まだ経験の浅い選手は左右どちらかのコーナーリングが上手に出来ない場合があります。

私の経験では右の低速コーナーが不得手な選手が多いように思います。理由はおそらく日本は左側通行なので右のコーナーを攻めることが少ないからだと思われます。

 

方法は簡単です

パイロンや小石・空き缶などを置いて8の字に回ります。

 

ステップ1 : 低速で狙ったラインをトレースできるように

ステップ2 : 次にパイロンギリギリの最速ラインを攻めれるように

ステップ3 : パイロンを若干離してコーナー脱出後にダッシュ!ブレーキしてコーナーに進入!を繰り返します。タイムを測ると進歩が見えます。

ステップ4: 障害物を置く。コースのどこかに障害物を置いて避けて走ります。石ころなどを置いてジャンプして避けるなどが良いでしょう。

 

大切なのは漫然と8の字を描いて走るだけでなく狙ったラインをトレースすること。最速を狙うには充分に減速しコース幅をいっぱいに使ってコーナーリングし、出口で詰まらないようにすることです。また荒れたダートだといつもアウト・イン・アウトが早いとは限りません。路面の凹凸や砂の状態を選んで曲がったほうが早い場合も沢山あります。

 

 

CXのメリット
・シーズンオフでも緊張感を保てる
・自転車の取り回しが上手くなる
・ペダリングが上手くなる
・悪天候に強くなる
・ロードより寒くない
・AC,VO2Max, FTPパワーを楽しみながら鍛えれる

・怪我が少ない
・精神的なトラウマを残さずに苦しめる…etc

 

[サイクルモード] アスリートワークショップ 11月3日

今年もhood trainingの旭大和さんと同日開催で行わせて頂きます!

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皆様のご参加をお待ちしております!

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Peaks Coaching Group – Japan

中田尚志

 

 

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[Training] CXのすゝめ Part1

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そろそろ「オフシーズンに何をしよう?」と考えている方も多いと思います。

もし冬もレースに出たいならお勧めはシクロクロス(CX)です!

シクロクロスに取り組むメリットは書ききれないほど沢山あります。

 

CXのメリット
・シーズンオフでも緊張感を保てる
・自転車の取り回しが上手くなる
・ペダリングが上手くなる
・悪天候に強くなる
・ロードより寒くない
・AC,VO2Max, FTPパワーを楽しみながら鍛えれる

・怪我が少ない
・精神的なトラウマを残さずに苦しめる

 

 

シクロクロスに出ている選手に聞けば殆どの選手が「苦しいけど楽しい!」と話すでしょう。

また、もし同じ強度のトレーニングを一人で出来るか?と聞いたら「絶対無理!」と口を揃えると思います。

 

パワートレーニング的な視点から見ると、メリットのひとつに「リズムの変化に強くなること」があります。

この時期は日照時間の関係からローラーに乗ることが多くなりますが、ローラートレーニングだとパワー・ケイデンスともに一定ペースになりがちです。

しかし、CXであれば路面や相手のペースがあるために否が応でも激しくペースは変化します。

 

下記の写真はローラーのトレーニングとCXのレースの比較です。

黄色…パワー
黄緑…ケイデンス

 

CXの方が激しいペースの変化があるのは一目瞭然です。

実際のロードレースでは刻々とパワーは変化しますから、この変化に慣れておくのはロードレース専門の選手にも大きなメリットがあるわけです。

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Peaks Coaching Group Japan
中田尚志

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平成を駆け抜けたプロロード選手 市川雅敏 その2

1990年 世界選手権 宇都宮大会 

「最悪だったね。」

 

市川さんは当時を振り返ってつぶやく。

 

「スタート地点でまだウダウダ言われたら走るの止めようと思ってた。」

 

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(1)自分たちの時代
1990年は自身の好調や同年代の選手が活躍しだしたのを見て「自分たちの時代が来た」と感じていたという。プロ生活は4年目。29才になっていた。

その年の8月に宇都宮で世界選手権が開催された。

 

ジロを総合50位で終えた市川さんにとってこの大会はキャリア最高の時期を飾る凱旋帰国のレースになるはずだった。

 

「自分が選手をやっている間に日本に世界選手権が来ることはもう無いと思う。頑張りたいね!」

涼しい北海道で調整した市川さんはTVインタビューにそう答えている。

 

(2)日本と欧州の間で
アジアで初めての世界選手権開催とあって主催者は多くの式典やパーティを準備し、市川さんはその場に頻繁に駆り出された。

プロロードマンの体調を考慮してくれるようなことはなく、レースを前に練習にさえ行けずにコンディションは落ちる一方。しかし、スタッフがスケジュール調整をしてくれるわけでもなければ直接交渉する手立てもない。

自国開催の世界選手権で良い走りがしたい市川さんのストレスは溜まる一方だった。

 

「プロロード選手の練習時間なんて誰も分かってないわけよ。競輪のプロも居たけど彼らは6時間も乗らないしね。」

プロロードの世界を理解していない周囲に全てを一から説明しなければならないストレスから市川さんは孤独感を深めていく。

 

追い打ちをかけるようにストレスを与えたのは「ウエア問題」。

日本チームのウエアは当時ミズノがスポンサーしており、上下ミズノ製ウエアを着用することを求められた。

 

「プロはさ、下は所属チームのレーパンで上はナショナルチームのジャージを着るってのが当然じゃない。でもスポンサーなんだから上下着てくれって言うんだよね。メチャクチャだよね。普段給料もらっているのはフランク(所属チーム)なんだからさ。」

 

精神的なストレスが解消したとしても身体的な問題があった。
レーサーパンツを変えることでサドルの高さが変わってしまい本来のポジションが取れない。
それはコンマ・ミリ単位でサドルの高さを調整していた市川さんにとって、レースでパフォーマンスを発揮できなくなることを意味していた。

 

しかし市川さんが最もストレスを感じたのは、会社側と直接交渉出来ないことだった。

 

「会社の人と直接話せないんだもん。チームの関係者が”ミズノがそう言っています”って言ったってラチが開かないよね。」

 

ヨーロッパでは代理人を通さず常に一人でチームの代表と交渉してきた市川さんにとって違和感を覚えるのは当然だった。

本番を前に欧州では当然とされている慣習が自国では理解されない歯痒さを抱えることになる。
渡航当初に経験してきた欧州レース文化のカルチャーショックは、今や体の一部になり自身の価値観になっていた。

スケジュール調整にしろウエアの問題にしろ交渉する担当者さえハッキリしない日本のシステムに市川さんはストレスを募らせた。

 

一方ミズノ側にしてみればアマチュアが上下自社製品を着用するのに、プロロードの選手だけが他社製品のレーサーパンツを着るというのは許容出来ない行動だった。

最も注目度の高いプロロードでエースの市川さんが自社製品を着用しないのは彼らにしてみれば逆宣伝になってしまう。それだけは避けたかったのである。

 

結果的に話し合いは平行線。

 

当日まで全くレースに集中出来ない状態が続き、スタート前でさえまだ話し合いは続いた。

 

「スタート前にまだ(話し合いを)やってんの。俺たち今から260km走るの分かってんの?って感じだよね」

 

結論は出ないまま市川さんは普段どおり所属チームのレーサーパンツを着用してスタート地点につく。

 

「チーム関係者に”はいはい分かりました”って言いながら、フランクのレーパンで準備した。だって責任者と話せないんだから。発言に責任取る必要ないでしょ。」

 

「スタート地点でまだウダウダ言われたら、走るの止めようと思ってた。」

 

(3)世界選手権プロロード
混乱の中でスタートした世界選だが市川さんは沿道の観客の多さに驚いたという。

 

「自分がヨーロッパで走ってるなんて誰も知らないと思ってたし、日本にこんなにもプロロードのファンが居たんだって。お客さんは本当多かったよね。」

前日までのゴタゴタですっかりコンディションは落ちていたが完走。

 

「集団から千切れて止めようかな〜って思ってたら、ロミンガーが”おいマサ、ここで止めたら暴動が起きるぞ。一緒に走ってやるから最後まで行こう。”って言うんだよ。プロって勝負に絡めなかったらさっさと止めるんだけど、その日だけは最後まで走ったね」

 

多くのレースを共にしたトニー・ロミンガー、ヨルグ・ミューラー、ロルフ・ヤールマンのスイス勢と日本の三浦恭資選手と共にフィニッシュ。

フィニッシュラインではスイス勢に前を譲り感謝の意を表したという。

こうして日本初の世界選手権が幕を閉じた。

 

続く
#市川雅敏

バイクショップイベント、社員研修などで市川さんのお話を聞いてみたい方がいらっしゃいましたら、ダイレクトメッセージをお願い致します。

詳細ご説明させて頂きます。

 

 

Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志

takashi( @ ) peakscoachinggroup.com