アメリカのプロクリテで最強の選手、ダニエル・ホロウェイはトラックで2020東京五輪への出場を目指しています。
五輪を見据えて伊豆ベロドロームで開催されたジャパン・トラックカップにアメリカ代表として参戦しました。
彼のペダリングは正確でスムーズ。
高速下でも足を使わないように優しく踏む技術や爆発的な加速、加速後スピードを殺さず出来るだけ長く維持する技術に長けています。
今回はウォームアップとクールダウンのビデオを紹介しましょう。
(1)トラックとクリテリウム
トラックとクリテは共通点が多いです。
・繰り返すダッシュ
・繊細なハンドリング
・刻々と変化するレース展開を読む能力
・速いケイデンス(90rpm 以上)
・15秒以内にON / OFFを繰り返す
ケイデンスは激しいスピードの変化に対応するために平均的なロードレースの90rpmより速くなります。
トラックとクリテを比較すると、トラックは更に早く120rpmを超えることも珍しくありません。
トラック・エリミネーション
黄緑の実線はケイデンス
黄緑の破線は90rpm
黄色はパワー
アイロン・ヒル クリテリウム(レース中盤)
黄緑の実線はケイデンス
黄緑の破線は90rpm
黄色はパワー
2015アイロンヒル・クリテ(ダニエルの車載カメラ)
2015アイロンヒル・クリテ(ダニエルの最終発射台アルド・イレシュッチの車載カメラ)
こういったレースはペダリングの技術を磨いてくれます。
・ハイケイデンスで正確に踏む技術
・前走者のスピードに合わせるように(車間を一定に保つ為に)トルクやケイデンスを瞬時に調整する技術
・激しく変化するケイデンスに合わせてどの領域(0-120rpm)でも力をだせる技術
などです。
(2)ダニエル・ホロウェイのペダリング
ダニエルは前述の低回転から高回転までをこなし、足を溜めるペダリングから切れ味鋭いスプリント、さらにはそのスピードを維持出来るようなペダリングとそれを可能にするポジションを実現しています。
彼のチェーリングは60T(!!)しかし無理に踏み込むのではなくスムーズに回す技術がこの大ギアを可能にしています。
(c)山岸正教
・鋭い踏み込みと高回転を実現するためには若干踵を上げた踏み込み。
鋭い踏み込みの為にはある程度、腰は前に置き真下に踏み込む事になります。
その時踵が下がっているとスピードが死ぬので、踵は上げます。
・なめらかな上死点・下死点の切り替え
トラックは固定ギアを使うためにペダルの動く速度(CPV=Circumferential Pedal Velocity)を一定に保つペダリングが要求されます。
ペダリング中、CPVは常に変化します。
時計で言う3時 or 9時頃の踏み込みではCPVが最も速くなり、上死点・下死点(時計で言う12時 or 6時)は最も遅くなります。
この差が大きすぎるとギクシャクしたペダリングになってしまいます。
踏み込みでついたスピードを上死点・下死点で殺してしまうからです。(バックを踏む状態になる or クランク一回転の中でパワーの変動が大きすぎるムラのあるペダリングになる。 )
踏み込み時はアンクリングをせずダイレクトに踏み込みのパワーをペダルに伝えて、上死点・下死点では踏み込みのスピードを殺さないように少しアンクリングを加えてペダルを送りCPVを一定にしてやります。
・安定した骨盤
骨盤が安定していないとパワーをロスします。クルマに例えるとエンジンマウントがしっかりしていない状態になり踏み込みのパワーを上下左右に逃してしまうからです。
・前傾した骨盤
ハイスピード・大パワーを出す時は骨盤を若干前に倒したほうが、大パワーを発揮する臀筋群を使えるようになります。回して休む時は若干骨盤を立てた方が回転を維持しやすくなります。
・リラックスした上半身
前傾気味の骨盤から脊柱は折れることなく伸び背中はリラックスしたカーブを描きます。後ろから見て多少左右に骨盤から上の上半身が揺れるのは推進力を殺していない限り問題ありません。むしろ緊張してガチガチに固まってしまう方が滑らかなペダリングやスムーズな呼吸を妨げるので問題です。
(3)ペダリング・ポジション変更のポイント
皆さんがスムーズでパワフルなペダリングを目指す場合、これらのポイントを押さえて、あとは身長や体型、タイプ(クライマー・スプリンター・種目など)に合わせて調整をして行きましょう。
形をコピーするのではなく、スムーズなハンドリング・スピードを維持するペダリング・踏むペダリング・休むペダリングなど様々なシチュエーションに対応出来るポジションをゴールにして自分なりに作って行くのが重要です。
また
レベルによってポジションは変わっていきますから、レベルに合わせてあくまで自身に合った部分を取り入れていくことが大切です。
(4)スマホを活用しよう!
ペダリングやポジションを改善するには、通常のライド中に意識することはもちろん今回のようにビデオに撮るのもお勧めです。
自身の走っている姿をビデオで見ることで、色々な角度から改善点を見つけ出すことが出来るからです。
たとえば走行中に自身の視点から足首の角度を確認することは難しいですが、ビデオで真横から撮影すれば簡単にチェックできます。
ビデオはスマートフォンで手軽に撮れますから、定期的に撮影して比較すると良いでしょう。
その場合は、一定のパワーゾーン(テンポ=76-90% of FTPがお勧め)で撮影すると比較しやすいです。
スマートフォンの画像は歪みが大きく解像度も高くないので全てを正確に映し出してくれるわけではありませんが無いよりマシです。(少なくともショーウインドウ越しに一瞬映る自分をチェックしてポジションを判断するより良いです!)
うまく走れるようになるには日々の研究が必要不可欠です。
最近はスマートフォンなど身近にあるツールを使ってパフォーマンスアップにつなげることが出来ますから、これらを活用して走りを磨いて下さいね!
男子マディソンでポイントを取りに行くダニエル・ホロウェイ
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