還暦で自己ベストを狙う 長崎県の菊池さん
何度かご紹介している長崎県の菊池さん。
一昨年の冬に脳梗塞を患うも、昨年は遂に全国制覇を成し遂げられました。
しかし、やはり病気の影響は有り、これまで毎年更新されていたベストタイム更新は成りませんでした。
今年の目標は「60歳で58歳の自己を超える」。
2022年、58歳時のハロン・ベストタイムは11秒43
今年はそのタイムを超えるためにトレーニングを積んでおられます。
1.これまでのトレーニング
今年は順調にトレーニングを積むも、タイムが出るべき5月になってもタイムが出ず壁を感じる日々でした。 ハロン(200m)は、ピュアなスプリント能力と思われがちですが、助走を含めるとアネロビック・キャパシティ(AC)やVO2Maxの高さも必要とされる時間になります。
データと映像(毎回ビデオ撮影されています)を確認したところ、二つの課題が浮かび上がりました。
・ハロンに入るまでの助走で脚を使いスプリントが出し切れていないのでは?
・ハロンの駆けおろし時に上半身と下半身の連動を改善すれば、よりスムーズに加速できるのではないか?
もう少し助走でスピードに余裕があれば、ラスト200mで100%スプリントの能力を活かすことが出来るし、よりスムーズに駆けおろし出来ればスピードに乗ってタイムを向上させられるのではないかと考えたわけです。
2.HIITを取り入れる
これらの課題を改善するために、5月の末からはトレーニングにHIITを取り入れました。(20秒ON / 15秒OFF) x 10
HIITの狙いとしてはVO2Max/ACを向上させるだけでなく、加速のスムーズさを手に入れる目的もありました。 HIITをスムーズにこなすには、ダンシングでスムーズに加速する必要があります。 短い時間で10回のスプリントをこなすわけですから、自然と無駄のない加速のフォームが身につきます。 1週間に1度こなすたびにパワーは上がり、3回のトレーニングで何と50Wも平均パワーが上がりました。(直近の1回は9回スプリント)。
劇的に向上した理由は二つあると考えています。
1.実際に能力が伸びた部分(高強度インターバルは行う度にパワーが改善することが多い)
2.ペダリングが変わった。
ここからハロンのタイムも向上するのではとの期待がありました。
3.結果
本日のトレーニングでは、ハロン11秒45を記録!
2022年 58歳の菊池さんまであと2/100秒に迫りました。 これからのシーズンでこの100分の2秒を削るために努力を続けられます。
還暦での自己ベスト更新成るか? これから先のシーズンが楽しみです。
ちなみに菊池さんは全てのトラック・トレーニングの記録をトレーニング・ピークスだけでなく、エクセルでも管理されています。
そのデータを確認すると、2022年にベストを出したのは7月16日。
菊池さんの場合、毎年6月から7月にかけてタイムが出ることが多いです。これから1ヶ月でどのようにタイムが変わっていくか?
私も楽しみです。
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小橋勇利コーチのクライアント優勝!
- 2024年06月4日
- ブログ
小橋コーチの指導する高山選手が北海道で行われた道新杯 S-3クラスで優勝!
作戦通りにレースを進め、後続に1秒差をつけて優勝されました。
久々の勝利で嬉しさもひとしおでした。
小橋コーチによるコーチングのレポートです。
1.高山選手の近況
2024年シーズン初めにお仕事の事情や、体調不良などもありうまく練習できない日々が続き1〜2月でかなり調子を落としてしまった。
直近の練習では少しずつ上がってきているものの、まだまだ昨年のベストコンディションにはほど遠いため、S-3(中級クラス)には高山選手よりも格上の選手が多いようであった。
2.レース戦略
事前のミーティングでは数名の選手の名前が上がった。レースも短く、コースはハイスピードでコース幅が目まぐるしく変動するため、一度マークしている選手数名にまとまって抜け出せれてしまうと後半にプロトンが追い上げるシナリオは描きにくく、マークする選手を絞って、その対象の抜け出しを絶対に外さない(見落とさない)必要があった。
レースに絶対はないが、事前に予想される展開としてはマークする選手を筆頭にアタックが散発的に起こり一度は抜け出すが集団も元気なままのため逃げが出来てはすぐにくっ付いてのシャッフルが絶え間なく起こる展開だった。
話し合いの結果、作戦としては、常に先頭でレースを見ながら後半のスプリントに備える。(高山選手はスプリントのデータが優れているため、スプリンタータイプと判断している)マークしている選手の抜け出しには脚を使ってでも乗るが 前に乗って後ろに引っ張る展開にする
最終LAPに入る前に前列への位置取りを行うというものだった。
3.風を読む
風向きは事前のミーティングではホームストレートが追い風の予想であったが、当日もおおよそ同じ風向きになった。
4.小橋コーチによるレースデータ解析
レーススタート後は予想していた展開に近いような展開になり、一時集団の先頭から6〜8名程度で抜け出し(割れた)場面も高山選手は前に残っていた。
データを見るとdFRC(※)を減らしながらもうまく後半にマネジメント出来ていること、FTPを越えている場面が多く決して高山選手が余裕で集団に残っているわけではないことが窺い知れる。他のライバルよりもFTPが低い選手はより精度の高い動きが求められるため、今回のレースは非常に巧みな走りでスプリントへ持ち込んだことが分かる。ファイナルラップの図1では他の選手のアタックのタイミングに合わせてうまく抜け出している。これは適切な位置取りがあったからこそである。
ここは上りから下りに入り、その後タイトコーナーがあるため、一度差が開くと集団は追いにくいポイントであった。
タイトコーナーを抜けると集団が2名から完全に離れていることを確認。
図2では2名でのマッチスプリントになりそうであったが、事前のミーティング通り追い風のため少し早い地点からのスプリント開始。
これが功を奏し、この2名での抜け出しのうち高山選手のみが集団から逃げ切る形でゴールしたようであった。
※dFRC(ダイナミック・ファンクショナル・リザーブ・キャパシティの略)
FTPを超えて使えるエネルギー量(単位kJ)を表したもの。簡単に言うと脚の残り具合を表す。理論上0kJになるとオールアウトしていることを表す。
5.高山選手のこれから
目指している目標に到達するには引き続きコンディションとフィットネスレベルは引き上げていく必要はあるが、今回は瞬間的に自身の勝率を高める最善な判断出来たのは大きな成果と自信に繋がったのではないかと思う。
高山選手のこれからの成長も非常に楽しみになる素晴らしい1戦であった!
6.小橋コーチについて
小橋コーチはジュニア時代から活躍し、ロード・MTB・シクロクロスを問わず数々の勝利を手にしてきました。
その活躍は国内にとどまらず、アジア、欧州へと繋がって行きました。その中で得た経験を活かし全てのカテゴリーの選手のコーチングが可能です。特にジュニア育成は大成功を収め、昨年は殆どの全国大会を小橋コーチが指導する選手が制覇しました。
現在は、北海道を中心にパワートレーニングのコーチとして、ライドのオーガナイザーとして、そしてチームオーナーとしてマルチに自転車の普及に尽力しています。