[レース] 2017年のベストレース


今年もたくさんのレースが開催されましたが皆様にとっての2017年のベスト・レースは何でしたか?

 

私にとってのベストレースは女子の世界選手権ロードレースです。

 

優勝したシャンタル・ブラーク(Chantal Blaak)の展開を読む力、アタックをかけるタイミングはロードレースのお手本のようでした。彼女の世界選優勝を追っていきましょう!

(さらに…)

[ストーリー] なぜマクナルティーは欧州ではなくアメリカでレースする事を選んだのか?


アメリカのサイクリング誌Velonewsに興味深い記事がありましたのでご紹介します。


ブランドン・マクナルティーは、現ジュニア世界選手権ITTチャンピオンで、グレッグ・レモンの再来と言われるほどの逸材です。

 

欧州のレースでも既に実績を挙げていて、複数のワールドツアーチームがU23の育成チームに彼を欲しがったほどです。
(ワールドツアーチームの多くはデベロップメントチームと言って、U23の選手を育成するチームを持っています。)

 

しかし、マクナルティーが選んだのは、米国内のコンチネンタルチーム、ラリーサイクリング(Rally Cycling Team)でした。

 

 

「難しい選択だった」

 

 

ワールドツアーに入るにはU23時代に欧州で成績をあげることが必要です。
しかし、これまで多くの才能ある若者が文化の壁、言葉の壁、家族から遠く離れた生活に適応できずに競技を離れて行きました。

 

マクナルティーと彼のコーチ陣の一人であるロイ・ニックマン(TDF出場経験もある元プロ選手)は、彼のシャイな性格や既に高い競技力を持つ事を勘案し、性急に事を進めて競技から離れる危険を冒すことよりも徐々に適応して行く道を選びました。

 

アメリカのワールドツアー育成チームはアクセル・メルクスが運営するAXEON(アクション)が有名ですが、ラリーにもワールドツアーで活動経験のある現役プロやコーチ、チームスタッフがいます。
(例えばダニー・ペートは元チームsky所属したプロでU23のITT世界チャンピオンにも輝いた選手です。彼は、チャンピオン獲得後に欧州でフルシーズン過ごす道を選びましたが、適応するまでに大変な時間を過ごしたと言います。)

 

 

 

ジュニア世界チャンピオンのパワー

体重68kg 30分 380W

 

USAサイクリングのコーチの一人バーニー・キングは、マクナルティーのパワーファイルを見て驚愕しUSAサイクリングの強化副委員長ジム・ミラーに転送します。

 

「パワーメーターが壊れてるんじゃないのか?彼ぐらいの年齢のジュニアは340Wぐらいだ。TJ、フィニー、クラドック(現ワールドツアーの選手達)でさえ。」

現在アメリカのホープと言えばアドリエン・コスタ。しかし、彼は同等以上かもしれない。

 


ワールドツアーに行くために

 

マクナルティーはナショナルチームの一員としてチェコで行われる歴史のあるステージレース、ピースレースに参加。
第一ステージで優勝し、44年の歴史の中で初のアメリカ人総合優勝者になりました。

 

「今までワールドツアーに行った選手がこのレースに参加してきたけど、勝てなかった。ブランドンはクイーンステージに勝ち総合も獲ってしまった。」

 

過去に輝かしい成績を出したアメリカ人がたった2シーズン欧州で過ごした後に引退した例は今でもアメリカのコーチの記憶に残っています。

ニックマンもキツすぎるレースプログラムをこなさせない事を条件にラヴィクレールと契約しましたが、結果的に31日間連続で出場させられる羽目になった経験を持っています。「これは自分は消耗品として扱われたと言う事だ。サイクリングはビジネスなんだよ。」

 

“強い物だけが生き残る” このスタイルが誰にとっても合う訳ではありません。

 

 

時には足踏みとも思える時間を取ることが結果的に競技力を向上させるだけでなく、自転車をずっと好きでいられるようにしてくれます。

幸いアメリカには育成を目的としたレースやチーム、車連のバックアップ体制があります。

 

自転車を本当に愛し、選手達が豊かな競技人生を送れるように願うコーチや監督も多いことが高い競技力を生んでいると感じます。

彼らが欧州に選手を連れて行きレースを経験させ、彼らの性格・パワーを分析した上で最善の道を選手に提案することが出来るのが、大きな強みと言えるでしょう。

 

その為に、各地域のコーチが中央のコーチと連携している点も見逃せません。

キングがミラーにパワーファイルを送らなければ、マクナルティーの並外れたパワーを元にTJやフィニー、クラドックと言った先輩の通った道筋を参考に彼にとって最善の方策を提案する事は不可能だったかもしれません。

 

またそうした組織的な努力がアメリカ国内に居てもある程度のレベルには到達できる環境を作り出しています。

 

もうひとつ加えるならば、単に高い競技力を手に入れる為に欧州に行くのではなく、アメリカの国内チームでは自転車だけでは食べていけない現状があります。

その為、才能のある選手はいつか欧州に送り出し、欧州で通用する選手にすることで食べて行けるようにしたいという関係者の願いもあります。

アメリカのレース界も大きいですが、それでも職業として成り立つのは本場欧州のみと言う認識が、彼らをいつか欧州で通用する選手を育てたいという活動につながっていると感じます。

 

 

中田尚志

出典・引用元: Velonews
Why Brandon McNulty chose to race in the U.S., not Europe

http://www.velonews.com/2017/06/from-the-mag/why-brandon-mcnulty-chose-to-race-in-the-u-s-not-europe_440975

 

 Why Brandon McNulty chose to race in the U.S., not Europe | VeloNews.com

 

[パワー] ミラノ・サンレモ パワーデータ

Training Peaksに掲載されたミラノ・サンレモのパワーデータです。

無題

 

(1)選手
ウィル・クラーク(キャノンデール・ドラパック)
192㎝
81kg
FTP 438W (5.4w/kg)

 

(2)ミラノ・サンレモ2017
レース全体 7:16:48
NP 301W 
AVP 259 (3.1W/kg)
IF 0.68
平均時速 39.5kph
消費エネルギー 6899kJ
TSS 340

 

用語解説
NP=Normalized Power:

もし一定のペースで走っていたら何ワットになっていたか?を表します。
パワーの上下動は体に負荷をかけます。その為、レースの平均ワット数は強度を正確に表しません。
ウィル・クラークの場合、平均ワット数は259Wですが、レース全体で平均301Wで走り続けるのと同じ位の負荷がかかっているということをNPは表します。

 

TSS=Training Stress Score:
FTPで1時間走ったらTSSは100になります。
ミラノ・サンレモはウィル・クラークにとって7時間で1時間の全力疾走を3.4本行ったのと同じ負荷という意味です。

 

(3)レース
ミラノからサンレモまで291㎞を走るレースはゴールスプリントで決まる事が多いですが、レース距離の長さと終盤のチプレッサ (5.6 km  勾配4.1 %)、ポッジオ (3.7 km 勾配3.7%)をメインとする丘陵地によって単にスプリント力があるだけでなくスタミナも要求されます。

 

この日最も6時間以上も逃げに乗ったウィル・クラークのデータをパフォーマンス ディレクターのキース・フローリーの解説で見て行きましょう。

 

・世界最長のクラシックであり、ポッジオ・チプレッサの前の小刻みな丘陵地が脚を削り取る。

・ポッジオでアタックしゴールまで逃げ切るとすると時間は8分程度。

・曲がりくねったポッジオを下るにはテクニックが必要。さらにそこからゴールまではまだ3kmある。

・チームメートのトム・スクインジとクラークはスタート直後にアタック265㎞までその逃げは続いた。

・スタート直後のアタック
 20秒 784W(9.42W/kg)
 30秒662W(7.96W/kg)
 60秒545W(6.55W/kg)

・6h30m続いた逃げのパワー
 NP301W AVP260W 平均時速39.84kph
 前半の内陸部 NP 271W
 後半の海岸線 NP 332W

 

逃げは常に一定ペースを刻んでいるのではなく、後続集団との距離を測りながらペースをコントロールしています。
残り距離に対して集団が警戒しない程度の差をキープする為に前半はある程度脚を残しながら逃げて、後半はペースを上げているのがパワーから見て取れます。

驚異的な身体能力を持つワールドツアーの選手達。

 

今年のクラシックシーズンも楽しみですね!

 

元記事

https://www.trainingpeaks.com/blog/power-analysis-cannondale-drapacs-will-clarke-milan-san-remo/

 

パワーデータ

http://home.trainingpeaks.com/athlete/workout/7TWDWYERC7OEJWKRNGNTUBMFPM

 

この記事が気に行ったら下記のいいね!シェアツイートを押して頂けると嬉しいです!

[クライアント募集] 

この度、PCG-Japanのコーチ、ゲン・コグレ氏がクライアントを若干名募集することになりました。
 
あなたもアメリカ・ノースカロライナ州からオンラインコーチングを受けてみませんか?
ご興味のある方は私、中田尚志宛 takashi■peakscoachinggroup.com にご連絡をお願い致します。
送信時は■を@に代えて下さい。

coach_02_Gen_Kogure

コーチングを受けて新たなバイクライフを送ってみませんか?
 
(1)募集内容
募集人数: 若干名
コーチングレベル: シルバー
費用: $260/月≒29,518円/月(JPY113.53で計算)
お支払い方法: クレジットカードにてドル払い
 
(2)コーチング開始までの流れ
・オンラインミーティング(skypeと同様の物です)にて、コーチングについて説明
・2週間の無料トライアルを受けて頂きます。
・本契約もしくはトライアル終了をご判断いただきます。
・本契約後、課金開始。
 
(3)ゲン・コグレ氏について
PCGブログ