調子を上げる方法 -限界まで追い込む-


先日はシーズン中の休養後エアロビックベースを維持/強化することについて書きましたが、今日は3.レースに向けての強化について書いてみたいと思います。

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レースが空いた時の、基本的な流れ。

1.休養

2.エアロビックベースの維持

3.レースに向けての強化

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シーズン中、レースが空いた時は休養後1-4週間エアロビックベースを作った後に、再度レースに向けて強化して行きます。

休養を取り、エアロビックベースを再構築した体はフレッシュになり、激しいトレーニングに耐えれるように準備が整っています。

その状態からレースでの限界能力に体を順応させ激しいリズムの変化に耐えられる脚を作らなければなりません。

この時に必要なのは「量より質」です。

有酸素トレーニング(FTP以下のトレーニング)は、走っていて気持ちが良くハッピーな気分になれるトレーニングです。

4時間を超えても足は力強く、遠くまで行けた充実感で満たされます。ずっと走っていたいと思える状態です。

対して無酸素トレーニングはたった1分以内でも、脚は限界に達し、身体は酸素を欲しがり焼けつくような痛みに襲われます。

早くゴールが来て欲しいと思うようなトレーニングです。

レース後半のアタックの掛け合い、ギリギリ先頭集団について頂上を超える時、ゴールスプリント・・・。これらの時は体は無酸素状態に置かれておきます。

この状態をシュミレーションし強化しておくことが、レースでの勝敗を分けます。またこれらのトレーニングをこなすとレースが出来る状態まで調子は上がります。

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リオ五輪に向けて合宿を行う山本幸平選手は、この日午前中に3時間のダッシュ含むFTP/VO2Maxのトレーニングをした後、午後はたった1時間ですが、死ぬほど激しいトレーニングをしています。

インターバルが終わった後は草むらに倒れ込み、しばらく動けないほどに追い込みました。

メニューの例

Boulder CX pyramid interval 1h

このトレーニングはアメリカコロラド州ボールダーに住むコーチ、ニール・ヘンダーソンが考案したもの。

彼はBMCのローハン・デニス、テイラー・フィニー、女子アワーレコードホルダーのエヴェリン・スティーブンスなど世界のトップ選手を指導している。

WU: 20分 エンデュランス 3 x 1分の高回転走を入れよう。

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MS1: 1 x 5分 VO2Max(Power Z5 106-120%, HR Z5, RPE 6-7)

アップの仕上げ。レンジに入れて高出力の動きを確認しよう。限界までモガく必要はない。

10分 流し

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MS2: Pyramid Interval

12分におよぶピラミッドインターバル!

ON ― OFF

5秒モガキ ― 55秒流し>235%

10秒―50秒流し>220%

15秒―45秒流し>200%

20秒―40秒 200% of FTP

25秒―35秒 180% of FTP

30秒―30秒 160%

35秒―25秒 140%

40秒―20秒 120-141%

45秒―15秒 115-141%

50秒―10秒 110-130%

55秒―5秒 105-135%

12本のモガキが終わった時にはXCOのゴールぐらいに疲労していること。流しの間も足は軽く回すこと。

前半はシャープな加速とギア選択、流しで回復させることを意識。

後半は深く追い込むことを意識。流しの間も足は軽く回すこと。

地形:12分以上の登り(緩斜面がベター)

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CD: 15分 流し

これらの激しいインターバルは、比較的効果が表れるのが早く、一回行うごとにパワーが向上しているのを感じれると思います。

今までの限界を超えることで、体は順応しレースで勝負できる足が出来上がります。

幸平選手は、インターバル終了後60秒で60bpmを下げることが出来ます。

インターバル中のパワーだけでなく終了後1分の心拍でもコンディションの向上を測ることが出来ます。

このトレーニングを行った後は大きな達成感を得ることが出来ると思います!

※注意点 このトレーニングは限界までプッシュすることが大切です。その為、疲労が無くフレッシュで追い込める体調を作って臨むことが重要です。

また高度な集中力を必要とするので、脇道が無く人や車が来ない道を選んで行ってください。

年齢を重ねても強くなる方法~マスターズレーサーの強化Part3~


前回はマスターズのパフォーマンスを下げる要因と対策について書いてみました。
今回は、それらを踏まえた上で、どうパワートレーニングに活かして行くかを書いてみたいと思います。

43才までプロのトップで走ったイエンス・フォイクト

(1)筋力強化
マスターズの年齢になると筋量の減少が加速します。

それを防ぐためにバーベルを上げるストレングストレーニング、もしくはバイク上で出来るストレングストレーニングを行う必要があります。


バイク上でのストレングストレーニングは全力で50-60rpmになるような重いギアでのトレーニングが効果的です。
上半身のバランスを取り、しっかりとペダルに体重が乗るように踏み込みます。
この時、脚は引っ張り上げる必要はありません。(引き足は推進力としては効率が悪いです。)
ダウンストロークに集中して踏み込みましょう。

また大切なのは時間を区切ることです。
30年ほど前に盛んに行われた延々アウター縛りで走る方法は今ではあまり意味がないことが分かっています。
それはベンチプレスで50kgを1回しか上げれない人が100kgを1回挙げれるようになるためには、50kg→60kg→70kgと重量を増やして行く必要があり、回数を増やすことではないのと同じ理屈です。

50kgを30回上げれるようになっても100kgを挙げれるようにならないのと同じで、アウターで3時間走れても筋力はつきません。
重いギアでゆっくり長距離を走るのが得意になるだけです。

ビッグギア・インターバル
WU(ウォームアップ)の後、
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MS1: SST 10min
5分 50-60rpm
5分 90-100rpm
5分 流し
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MS2:Big gear repeats
1分 全力で50-60rpmになるギア
1分 >120rpmになるギアで
1分 流し
以上3分を1セットとして7セット21分
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CD(クールダウン):15分

(2)ホルモン分泌量の減少
ストレングストレーニング、ハイ・インテンシティ(高強度)トレーニングは、ホルモンの分泌を促します。
またFTP120%を超えるような短時間・高強度のトレーニングは、レースの出場回数が減る傾向のあるマスターズにとって、レースに備える意味でも重要です。


トレーニングの最後に下記のインターバルを1本追加する。


・5 x 1分 全力
地形: 7-8分の登り
レスト 30秒(レスト中も登り続けること)


・1 x 5分 タバタ
(20秒ON/10秒OFF) x 10回=5分
最後の1本は30秒モガキ!
地形: 5分以上の登り
レスト10秒の間も登り続け、脚は止めずに動かし続けること。

・3 x 3分 VO2Max
地形: 登り
レスト: 3分
30才以上になると、VO2Maxは伸びなくなってくると言われています。
その為、意識してVO2Maxは入れておく必要があります。
VO2Maxは伸びなくなりますが、この領域のパワーを強化する事は可能です。
意識して行っておくことで、若い選手とも対等に走れるようになりますし、同年代に対してはアドバンテージになります。

(3)回復力の低下
加齢と共に回復が遅くなるのは、ある程度仕方ありません。回復を少しでも早くする努力と共に、回復時間を考慮に入れてトレーニングを組む必要があります。


週あたりのTSSを管理し、あまり極端にアベレージを超えないようにします。
例えば週あたりのTSSが600tssを無理なくこなせる場合、3週間でTSSは1800をコンスタントに、こなせる計算になります。 
このAVGをベースに増減はさせますが、極端に超えるようなトレーニングは控えるべきです。

ある週に激しくトレーニングし900tssを超えてしまった場合、次の週は200tssぐらいになるでしょうし、その翌週もまだ回復出来ていないかもしれません。3週目に400tssをこなせたとしても3週間のTSSの合計は1500tssとコンスタントに1800tssをこなせた時よりも、ボリュームは300tss(概ね週末の長距離1日分)減ってしまいます。

体に激しいダメージを与えた分、故障や病気になる可能性も増えます。

ボリュームをコントロールして充分に回復をとりながらコンスタントにトレーニングした方が結果的には、強くなれる可能性が増えます。

実はここにマスターズが陥りやすい落とし穴があります。
多くのマスターズは、若い頃と同じ距離をこなせることに達成感を感じます。そうする事で「まだまだ10年前と同じ練習がこなせる。」と若さを感じることが出来るからです。
しかし加齢の為、同じ距離をこなすと回復に時間がかかり強度は落ちてしまいます。結果、ひたすら低強度で距離をこなす練習になってしまいFTPより上の領域は刺激できなくなってしまいます。
走行距離は減らしても強度は落とさないのが重要です。

次回は、アンチエイジングをパワーで評価する方法を書いてみたいと思います。



2015.12.19(土) 大阪開催が決定しました!  

大阪開催決定!

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・時間:   3時間                   
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Twitterを始めました!フォローよろしくお願いします。

https://twitter.com/PCGjapan

中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了




年齢を重ねても強くなる方法 ~マスターズレーサーの強化 Part2~


前回は選手のパフォーマンスを決める要素から、マスターズ強化のアプローチを考えました。今回はマスターズに起こる肉体の変化と対策について考えてみます。

マスターズ40歳以上の部

何がパフォーマンスを下げるのか?

(1)筋量低下

40歳以上になると筋量は自然に毎年0.5~1.0%減ると言われています。

忙しさによってトレーニング量が減ることや睡眠不足も筋量低下を加速させます。

マスターズで強い選手は、たいていしっかりと筋肉のついた脚を持っています。

→ストレングストレーニング・ビッグギアトレーニングで筋量を維持すれば加齢による低下をカバー出来ます。

(2)ホルモン分泌量の減少
加齢により20代の時に比べて男性ホルモン・ヒト成長ホルモンの分泌量は減ります。これらの減少は回復を遅らせ新たな成長を遅くします。またストレスや睡眠不足はホルモン分泌量の減少を更に加速させます。

→ストレングストレーニング、ハイ・インテンシティ(高強度)トレーニングはホルモン分泌を促進することが分かっています。トレーニングに取り入れて行きましょう。

(3)回復力の低下
回復力が低下するのも加齢の特徴です。それだけにマスターズは早く回復できるように努めるのが大切になってきます。
忙しいとどうしても睡眠時間が短くなりがちですが、睡眠不足は回復を遅らせます。
毎日睡眠を2時間減らしたサイクリストはFTPが平均20watts減ったと言う研究もあるぐらいですから、睡眠時間を確保し質を向上させましょう。
また加齢により筋肉・関節は硬くなりますからストレッチやマッサージを行い回復の促進に努めるべきです。

→ストレッチ・マッサージなどケア。睡眠時間の確保。

(4)飲酒
マスターズは仕事上の付き合いで飲酒の機会も多いかと思いますが、過度な飲酒は成長ホルモンの分泌を止め、肝臓内のグリコーゲンを消費し、睡眠を浅くします。
ですから各ホルモンが分泌される練習直後と就寝前は特に飲酒は控えるべきです。
(もちろん禁酒が一番良いですが、自転車以外の楽しみを全て奪うのはストレスの多いマスターズにとって精神衛生上良くないと思います。)

20年以上にわたりプロのトップで
活躍したフレディ・ロドリゲス

加齢による変化は肉体的な変化もありますが、
仕事の忙しさや付き合いなど生活環境の変化から起こっていることも沢山あります。

現在持っている回復力を100%引き出す努力をすれば、少なくとも何もしないよりは早く回復出来るようになりますから、相対的に回復が早くなったことになります。

循環器系の能力はトレーニングを行っていれば、維持出来る事が分かっていますから、上記の点に気をつけてトレーニングすれば加齢によるパフォーマンスダウンは避けれるはずです。

次回はこれらをベースに行ったマスターズのパワートレーニングをご紹介したいと思います。

上げるべき要素
・モチベーション
・パワー
・バイクスキル
・メンタルストレングス

減らすべき要素
・筋量低下
・ホルモン分泌量の低下
・回復力の低下

Peaks Coaching Group パワーセミナー追加開催決定!

12/13パワーセミナー開催

「実践!パワートレーニング ~プロのコーチングの実際とアマチュアへの活用法~」


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2015.12.12(土) 追加開催が決定しました!  
 午前の部 9:45~12:45,             
                            
2015.12.13(日)                   
 午前の部 9:45~12:45,             
 午後の部 13:30~16:30            
・場所:   CROSSCOOP新宿 セミナールーム 
・時間:   3時間                   
・費用:   7,560円(税込み)            
・申込: 下記じてトレサイトよりお申し込みください。
http://www.jitetore.jp/contents/fast/event/201510220808.html      

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中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了