目線を変えよう!
この時期、暑くなってきて既にバテ気味の方もいらっしゃるかもしれません。
ロード選手であれば全日本選手権ロードが終わった時点で「ホッ」と一息ついて、次に向かうのに中々気持ちが持っていけない状態かもしれません。
冬の間から体を作り込んできた疲労がある上に、大きなレースが終わり、更にはこの暑さに見舞われると「次に向けてさあやるぞ!」とやる気満々になれないのも無理はないと思います。
そういった状態から抜け出すためにお勧めするのは今までと目線を変えてトレーニングすることです。
人間の脳は同じことを繰り返すとすぐに飽きるように出来ています。
毎日同じ時間に同じような道を走って、同じようなトレーニングをすることに脳が飽きてしまっていると「ガンガン行くぜ!」という気持ちに今ひとつなれなくなるのは不思議なことではありません。
ですから、あえて目線を変えて今までと違うことを行い、リフレッシュ出来る環境に身を置くことで、新しい気持ちでトレーニング出来るように自身を導きましょう。
目線を変えるお勧めの方法
1.トレーニングコースを変える 2.トレーニング内容を変える 3.人と走る 4.種目を変える 5.場所を変える。 |
1.トレーニングコースを変える
いつも同じ道を走っていると飽きてしまいます。
脇道や裏道を”開拓”することで自転車を始めた頃のような冒険心を満たすことが出来ますし、メニューをこなすのに良い道が見つかるかもしれません。
大きなレース直前と違って今の時期なら道に迷ってメニューを遂行することが出来なくてもそれほど大きなロスにはならないので新しい道を探すには良い時期です。
交通事情等でコースを大きく変えれない場合は、クーラーの効いた部屋でZwiftをやるのもお勧めです。
色々なコースを選べますし、案外飽きずにトレーニング出来ます。
またZwiftから実走に戻ったときに走り慣れた道を気持ち新たに通れるのも良いところです。
2.トレーニング内容を変える。
トレーニングの変え方は数種類あります。
・いつものメニューを違う場所で行う。
普段行っている登りのFTP走を別の道でやってみる。平坦でやってみるなど。
・スタート/フィニッシュ地点を変える。
たとえば10分走のスタート地点をいつもより50mほど先に設定します。そうするとフィニッシュも自ずと50m前後先になります。
そうすればいつもより遠くに行けるので何だか速く走っている感覚になれますし、いつもより頑張れたりもします。
・メニュー自体を変える その1
FTP走を普段2 x 20分で行っているなら、30分+15分にしてみる。もしくは4 x 10分にしてペースを上げる。など。
これは気分が変わるだけでなく、ペースが変わることでFTPにおける有酸素/無酸素の比率が変わるので伸び悩みを打破する効果もあります。
・メニュー自体を変える その2
一定走ばかりしていたら飽きてしまいます。バリエーションを加えてみましょう。
レースは一定走ではありませんから、色々な走りに対応するためにもこれは必要です。
WU:15分エンデュランス 3 x 30秒の高回転走で足を目覚めさせよう。 ——– MS1: 1 x 15分 Ramp SST/FTP SSTでスタートし、2分ごとにペースを上げて行き最後の1分はFTPの105%を維持。 5分流し。 ——- MS2: 1 x 15分 Race winning 30秒のダッシュでスタート。その後すぐにスイートスポットで巡航。ラストの60秒はペースアップし限界まで追い込むこと。 ケイデンス:自由 5分流し。 —— MS3: クリスクロス 1 x 15分 88-92%FTPでのインターバルを行う。ただしその間、2分に1回30秒間FTPの120%までペースを上げる。 30秒が経過したら、もとの88-92%に戻す。(しかし85%以下に下げてはいけない。) —— CD:10分 流し。 もし時間が許せばもう一本SST/FTPトレーニングを追加しよう! |
3.人と走る
競り合いはトレーニングを激しくしてくれますし、時間が早く過ぎる感覚があります。
仲間とトレーニングすることで、あっという間に時間が過ぎた経験は皆さんもあると思います。
4.種目を変える
ロードのプロ選手でもこの時期MTBに乗ったり、ロング・ツーリングに行ってしまう選手さえいます。
いつもと全然違う刺激が入ることで、気分が変わるだけでなく強化できる可能性もあります。
5.場所を変える
思い切って数日間のトレーニングキャンプに出かけるのもお勧めです。
夏の間も涼しい北海道や長野県の山中で合宿すれば体力の消耗も防げますし、初めて走る道や峠はいつも楽しいものです。
MTBの池田祐樹選手は、今年もコロラド州にプライベート合宿へ。
今年はいつも滞在していた場所とは違うところに居ます。
こんな場所で「飽きてどうしょうもない」とは絶対に思わなくて済みそうですね!
その他
・タバタトレーニング(20s ON / 10s OFF ) x 8=4min など高強度のトレーニングを行って「飽きる暇さえ与えない。」
・クリテやトラックレースなど高強度なレースに出る。
など経験豊富な選手にしかお勧め出来ない劇薬的な方法もありますが、試す価値はあります。
飽きを防いで毎日充実したトレーニングが出来るようにご参考いただければ幸いです!
(C)池田祐樹
クリテ最強の男 ダニエル・ホロウェイのペダリング
アメリカのプロクリテで最強の選手、ダニエル・ホロウェイはトラックで2020東京五輪への出場を目指しています。
五輪を見据えて伊豆ベロドロームで開催されたジャパン・トラックカップにアメリカ代表として参戦しました。
彼のペダリングは正確でスムーズ。
高速下でも足を使わないように優しく踏む技術や爆発的な加速、加速後スピードを殺さず出来るだけ長く維持する技術に長けています。
今回はウォームアップとクールダウンのビデオを紹介しましょう。
(1)トラックとクリテリウム
トラックとクリテは共通点が多いです。
・繰り返すダッシュ
・繊細なハンドリング
・刻々と変化するレース展開を読む能力
・速いケイデンス(90rpm 以上)
・15秒以内にON / OFFを繰り返す
ケイデンスは激しいスピードの変化に対応するために平均的なロードレースの90rpmより速くなります。
トラックとクリテを比較すると、トラックは更に早く120rpmを超えることも珍しくありません。
トラック・エリミネーション
黄緑の実線はケイデンス
黄緑の破線は90rpm
黄色はパワー
アイロン・ヒル クリテリウム(レース中盤)
黄緑の実線はケイデンス
黄緑の破線は90rpm
黄色はパワー
2015アイロンヒル・クリテ(ダニエルの車載カメラ)
2015アイロンヒル・クリテ(ダニエルの最終発射台アルド・イレシュッチの車載カメラ)
こういったレースはペダリングの技術を磨いてくれます。
・ハイケイデンスで正確に踏む技術
・前走者のスピードに合わせるように(車間を一定に保つ為に)トルクやケイデンスを瞬時に調整する技術
・激しく変化するケイデンスに合わせてどの領域(0-120rpm)でも力をだせる技術
などです。
(2)ダニエル・ホロウェイのペダリング
ダニエルは前述の低回転から高回転までをこなし、足を溜めるペダリングから切れ味鋭いスプリント、さらにはそのスピードを維持出来るようなペダリングとそれを可能にするポジションを実現しています。
彼のチェーリングは60T(!!)しかし無理に踏み込むのではなくスムーズに回す技術がこの大ギアを可能にしています。
(c)山岸正教
・鋭い踏み込みと高回転を実現するためには若干踵を上げた踏み込み。
鋭い踏み込みの為にはある程度、腰は前に置き真下に踏み込む事になります。
その時踵が下がっているとスピードが死ぬので、踵は上げます。
・なめらかな上死点・下死点の切り替え
トラックは固定ギアを使うためにペダルの動く速度(CPV=Circumferential Pedal Velocity)を一定に保つペダリングが要求されます。
ペダリング中、CPVは常に変化します。
時計で言う3時 or 9時頃の踏み込みではCPVが最も速くなり、上死点・下死点(時計で言う12時 or 6時)は最も遅くなります。
この差が大きすぎるとギクシャクしたペダリングになってしまいます。
踏み込みでついたスピードを上死点・下死点で殺してしまうからです。(バックを踏む状態になる or クランク一回転の中でパワーの変動が大きすぎるムラのあるペダリングになる。 )
踏み込み時はアンクリングをせずダイレクトに踏み込みのパワーをペダルに伝えて、上死点・下死点では踏み込みのスピードを殺さないように少しアンクリングを加えてペダルを送りCPVを一定にしてやります。
・安定した骨盤
骨盤が安定していないとパワーをロスします。クルマに例えるとエンジンマウントがしっかりしていない状態になり踏み込みのパワーを上下左右に逃してしまうからです。
・前傾した骨盤
ハイスピード・大パワーを出す時は骨盤を若干前に倒したほうが、大パワーを発揮する臀筋群を使えるようになります。回して休む時は若干骨盤を立てた方が回転を維持しやすくなります。
・リラックスした上半身
前傾気味の骨盤から脊柱は折れることなく伸び背中はリラックスしたカーブを描きます。後ろから見て多少左右に骨盤から上の上半身が揺れるのは推進力を殺していない限り問題ありません。むしろ緊張してガチガチに固まってしまう方が滑らかなペダリングやスムーズな呼吸を妨げるので問題です。
(3)ペダリング・ポジション変更のポイント
皆さんがスムーズでパワフルなペダリングを目指す場合、これらのポイントを押さえて、あとは身長や体型、タイプ(クライマー・スプリンター・種目など)に合わせて調整をして行きましょう。
形をコピーするのではなく、スムーズなハンドリング・スピードを維持するペダリング・踏むペダリング・休むペダリングなど様々なシチュエーションに対応出来るポジションをゴールにして自分なりに作って行くのが重要です。
また
レベルによってポジションは変わっていきますから、レベルに合わせてあくまで自身に合った部分を取り入れていくことが大切です。
(4)スマホを活用しよう!
ペダリングやポジションを改善するには、通常のライド中に意識することはもちろん今回のようにビデオに撮るのもお勧めです。
自身の走っている姿をビデオで見ることで、色々な角度から改善点を見つけ出すことが出来るからです。
たとえば走行中に自身の視点から足首の角度を確認することは難しいですが、ビデオで真横から撮影すれば簡単にチェックできます。
ビデオはスマートフォンで手軽に撮れますから、定期的に撮影して比較すると良いでしょう。
その場合は、一定のパワーゾーン(テンポ=76-90% of FTPがお勧め)で撮影すると比較しやすいです。
スマートフォンの画像は歪みが大きく解像度も高くないので全てを正確に映し出してくれるわけではありませんが無いよりマシです。(少なくともショーウインドウ越しに一瞬映る自分をチェックしてポジションを判断するより良いです!)
うまく走れるようになるには日々の研究が必要不可欠です。
最近はスマートフォンなど身近にあるツールを使ってパフォーマンスアップにつなげることが出来ますから、これらを活用して走りを磨いて下さいね!
男子マディソンでポイントを取りに行くダニエル・ホロウェイ
Abenova presents 砂田弓弦 x Peaks Coaching Group Japan セミナー
・日時: 8月11日(土) PM2:00-5:00
・募集人数: 20名
[市川雅敏] 最高のチームの作り方 その2
ギジガーは心理・肉体面両面での選手管理に長けていた。父親のように選手に接し諭したという。
春先ホテルには体重計を持ち込み市川さんの体重を測り「マサ、まだ2kgオーバーだな。これはボトル4本を背中に背負っているのと同じだろ?少し落としたほうが良いよ。」とアドバイスした。
市川さんはギジガーの指導の元で順調にコンディションを高めていく。ティレーノ・アドリアティコでは数日間山岳賞をキープ、続くロマンディではジロを狙うエース、ダニエル・シュタイガーやロルフ・ヤールマンを好アシストしチーム内での信頼を築き上げていった。
一方のカーリン・カールはトレンティーノで良い走りが出来なかった。
市川さんの選考レースがロマンディ、カールはトレンティーノであることを既に知っていたチーム関係者にとって、どちらがジロに行くかは明白だった。
“市川雅敏は日本のパイオニア。彼の夢は実現した。
「ロマンディのクイーンステージで強かったマサトシをジロに選考した」チームGMタールマン”
当時の模様を伝える新聞
かくして市川さんはジロのメンバーに選ばれた。
めでたくメンバーに入ったのは、エース・シュタイガー、実力者・ヤールマン、市川さんが師匠と慕うビターリ、インテルジロを狙うベシャールなど。
「ジロではやってやるぞ!」
全ての選手にとって不満の無い選考にチームの士気は上がり、皆がギジガーの采配に期待した。
「監督のサジ加減一つのベルギーチームと違って選考がクリアなの。監督に選手が電話して足を引っ張り合いすることもねえし、そんな事してもギジガーの考えは変わらないしさ。ロマンディが終わったときには、自分がジロに出ることは分かってたよ。」
「このチームに入って本当に良かった。」
クリアな選手選考、選手が慕う監督の人柄、科学的なトレーニングのアプローチ、どれをとっても最高のチームで迎えるジロに市川さんの胸は高鳴った。
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2回に渡ってご紹介した[市川雅敏] 最高のチームの作り方。 いかがだったでしょうか?
良いチームは綿密な計画の元で作られて行くということが伝わっていたら嬉しいです。
よろしければシェアよろしくお願い致します。
#市川雅敏
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Abenova presents 市川雅敏氏 夕食会
市川雅敏さんから学ぶプロレース観戦術
2018/6/30(土) 18:00~2018/6/30(土) 21:00
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