以前のFBポストを再掲しています。
記事は2016年ドーハで行われた世界選手権開催時のものです。
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灼熱のドーハで行われていた世界選手権。男子ITTでは気温が40℃まで上がったそうです。
ファビアン・カンチェラーラに並ぶ4度目の世界選制覇を遂げたトニー・マルティン。
サイクリング・ウィークリーによるレポートです。
トニー・マルティンの世界選対策
(1)暑さ対策
バスルームでローラーに乗り灼熱の気温に適応
「クレージーだと言う人も居たけど、今日のレースよりももっとキツいことをしたよ。」
気温が少しでも下がる事を狙って今回の世界選は史上最も遅い時期に開催されましたが、それでも40℃ですから対策が大きく影響します。
「20-25℃で出せるパワーが40℃では出せなくなる。」とスティーブ・カミングス。
(2)エアロポジションの調整
「2011-2013世界選を連覇し、その後スランプに陥った。昨年のリッチモンド世界選では自己最悪の7位。リオ五輪では優勝したファビアン・カンチェラーラから3分18秒遅れ。何かを変えないといけないと思っていた。」
「肘を少し落とし手のひらを上げるポジションから、世界選3連覇当時のポジションに戻した。エアロダイナミクスは少し犠牲になったけど、より快適になった。快適性は大きなファクター。時にはエアロ効果を犠牲にしても優先すべき。」
マーティンは2015のポジションではエアロポジションにより約5-10%パワーを落としていたと感じている。エアロの観点では良かったが、慣れることが出来なかった。元のポジションではよりパワーを出せている。
(3)精神的側面
3連覇当時のポジションに戻すことで、肉体的に改善されると共に精神的にも3連覇当時の感覚を取り戻し自信になった。
(4)ペーシング
「パワーメーターもスプリットタイムも見なかった。最も重要なことは良いリズムに乗り力強く安定したペースに乗せることだ。」
肉体的・精神的に高い能力が要求されるTTだけに、こういった微調整がレースでは効いてきます。
またTTはエアロポジションによって得る空気抵抗削減効果と失うパワーのせめぎ合いですが、「このポジションなら間違いない」と確信が持てることも大切ですね。
このあたりが “ TTは単に平均パワーの最大化ではない。“といわれる所以です。
「自分は復活出来ると100%確信している。どんなスポーツマンでも1-2年悪い年があると思う。遅かれ早かれ自分はトップに返り咲けると信じているよ。」
世界選前に発売されたサイクリング・ウィークリーの雑誌版でマルティンはこう語っていたといいます。
世界選の準備を重ねる中で彼は勝てる自信を取り戻していたのかもしれません。
Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志
引用元