何才までエリートで勝てるのか?

全てのプロスポーツで現役の寿命は延びていると言われています。

理由は科学的なトレーニングや栄養学の発達、怪我のリハビリ技術の進歩、更にはマスターズの年齢まで現役を続けることに対する認識(心理的バリアがなくなったこと)などが挙げられます。

では何才までエリートのレースで勝てるのでしょうか?


(1)アンバー・ニーベンの例
アンバー・ニーベン(Amber Neben)は、現在44才。

 

彼女は選手生活の中で多くの栄光と困難を経験した選手です。

 

幼少時に髄膜炎を患い当時医師は最悪の事態になることもありうると両親に伝えたといいます。

さらに優秀な成績を収めたランニングでも疲労骨折を経験。

しかしこれが結果的に彼女を自転車の世界へ導くことになります。

 

自転車競技者としても優秀な成績を収めていた彼女ですが更に不幸が襲います。

一般的に手に入るサプリメントを購入したにも関わらず、それにドーピング物質が含まれていていたのです。

CASに申立を行い彼女の無実は証明されましたが、半年の出場停止と18ヶ月のドーピング検査義務は避けられませんでした。

 

更には2007年(32才)の時に皮膚がんを発病。その輝かしいキャリアと共に常に困難が待ち受けていました。


このような困難にも関わらず2008年(33才)の時に個人タイムトライアルで世界チャンピオンに輝き世界屈指のタイムトライアリストへと成長します。

しかしまたもや彼女に不幸は襲いかかり、レース中に選手生命が危ぶまれるような大クラッシュに見舞われました。

その後、懸命のリハビリが実り復活。


2016年(41才)の時に再度世界チャンピオンに返り咲きます。
更には2017年(42才)全米選手権でロード・ITTの2冠を達成。

 

現在は2020東京五輪を目指していま

2019年のシーズン初戦のレッドランズ・クラシック(Redlands Classic)では得意のTTで優勝し、総合優勝も獲得
順調にTOKYO2020への歩みを進めています。

彼女は40代に入っても30分間 280W(5.6W/kg)を維持することが出来ています。
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(2)自転車選手にとっての年齢とは?

自転車選手にとっての年齢は髪の色では決まりません。
年齢を決めるのはバイク上のパフォーマンスと言えます。

33才の時に続いて41才で再度世界チャンピオンになれるということは、出せるパワーは変わっていないか上がっているわけですから彼女にとって老化は何も進んでいないと言えます。

むしろ経験を積んでレースが上手になっている分、円熟味を増して進化していると言えるでしょう。

現在44才の彼女が勝つことは、エリートで勝てるマスターズの最高年齢記録が更新されることを意味しています。
きっとこの先も記録を更新して行くことでしょう。

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(3)アンチエイジングの確認方法

パワートレーニングではFTPをはじめMMP(各時間あたりのMaxパワー)を更新していくことで、アンチエイジングに成功しているかを確認することが出来ます。

パワーアップすれば年齢がどうであれ進化です。

マスターズの年齢に差し掛かった皆さんにおすすめするのは毎年自身のMMPを更新していくこと。

どの時間帯でも構いませんから毎年MMPを更新(5秒でも1分でも20分でも構いません)して行けば、どこかが進歩している=アンチエイジング出来ていると言えるでしょう。

少しでも前年を超えるパフォーマンスを出してアンチ・エイジングを進めて下さいね!

Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志

#peaksCoachingGroup
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写真: Redlands Bicycle Classic

[Training] トレーニングを研究する


計画的に追い込むことで闇雲にもがくよりも、質の高いトレーニングが出来ます。

 

(1)トレーニング内容

下記の画像はクライアントさんのトレーニングデータです。
赤: 心拍
紫: パワー
グレーバックはプランです。

MS1: FTPを 1 x 10分
MS2: マイクロバースト(15秒 120% / 15秒 80%) 1 x 10分
MS3: マイクロバースト(15秒 150% / 15秒 50%) 1 x 10分

1本目はある程度安定した集団内での走り、2本目はアタックの掛け合いや激しいペースの変化をシミュレーションするものです。

Feb27th

Mar6th

 

(2)トレーニング比較
2/27はMS2の前半で頑張りすぎて後半崩れて行っています。

またMS3は途中で限界を迎え一旦ペースを落とさざるを得なくなり心拍が一度落ちています。

 

3/6は、同じトレーニングに再挑戦!
今度はMS2の設定を少し下げて最後までOFFの強度(80% of FTP)を維持する計画に変えました。
これにより負荷がかかっている時間を長くしようとする作戦です。

 

結果は10分間最後まで負荷を維持でき尚且つ限界まで(心拍MAX179bpm)まで追い込め、さらにMS3も前回よりも高いパワーを維持できています。

またラストは179bpmと前回よりも高い心拍を記録し、10分間キッチリ追い込めています。

 

これにより3本トータルの仕事量は、3/6の方が高くなっています。

 

(3)トレーニングを研究する
このようにトレーニングの結果を見直し、計画をたてることで闇雲にモガくよりも、質の高いトレーニングが出来ます。

 

 

Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志

100分の1秒を削るために

トラック競技の強化は自転車競技の究極の形です。

改善を図りタイムが短縮できれば正解。
タイムが縮まらなければまた別の方策を練ります。

トラック競技は、ほぼ一定条件下でトライアル&エラーを行えるのでスピードの追求が行いやすいのです。

 

22才にして7度の世界チャンピオンに輝き、個人追い抜きの世界記録保持者でもあるクロエ・ダイガード(Chloé Dygert)

左は初めて団体追い抜きでワールドカップに出た時のもの。

右は団抜きで世界チャンピオンになったときのもの。

違いは頭の位置です。
右の方がほんの少し頭を下げているのが分かると思います。

 

団体追い抜きは平均時速55.5kmの高速で争われる競技です。
この速さでは空気抵抗が走行抵抗の90%を占めると言われています。
さらに空気抵抗の70%は人の体が受けていると言われています。

ですから、ほんの少し頭のポジションを変えるだけでタイムに違いが出てくるのです。

選手・コーチたちは少しでもパワーを上げること、そしてホンの少しでも抵抗を減らすことを日々研究してタイムを削っていきます。

 

Peaks Coaching Group-Japan
中田尚志