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デレック・ジーの2023 ジロ・デ・イタリア
今年のジロ・デ・イタリアで大活躍したデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)が彼のパワーデータをインスタグラムで公開していました。彼の走りをデータで見ていきましょう!
ジロ3週間
走行時間 92h
距離 3410km(トンネル含まず)
TSS 5,376
消費エネルギー 84,000kcal
獲得標高 45,725m
解説
一週間の平均走行時間は約30時間 , TSSは1,800tss, 消費エネルギーは28,000kcalにもなります。
多くのアマチュアサイクリストのトレーニング時間は6-10時間、TSSは300-500前後です。ジロではアマチュアの3倍の仕事を3週間に渡って続けることになります。
TSS ジーの1時間あたりのTSSは5,376÷92=58tss/h
1時間FTPで走るとTSSは100になります。ですから全工程を通しておおむね全開の60%の強度で走り続けたことになります。トップレベルのサイクリストで世界のトップ選手と変わらないFTPを持つ選手は意外に多く居ます。しかし、60%の強度で21日間走れる能力を持っているのは世界でも限られたワールド・ツアーの選手だけです。
クイーン・ステージ(第16ステージ)
https://www.procyclingstats.com/race/giro-d-italia/2023/stage-16/today/profiles
時間 6時間20分
距離 196km
TSS 423
消費カロリー 6,666kcal
獲得標高 5076m
平均ワット数 293W
NP 339W
解説
ジロ・ツール・ブエルタ、いづれのグランツールでもクイーンステージは獲得標高5,000mあたりに設定されることが多いです。アップダウンを繰り返しつつ富士山の1.3倍の高さを6時間で稼いでしまうのですから驚異的です。
クイーンステージは多くの選手にとって400TSSを超えます。400tssの意味するところは、この日彼は6時間かけて1時間のタイムトライアル4本分のストレスを体にかけたという意味です。
平均ワット数からエネルギー量を計算すると7,750kJ。1時間あたりのエネルギー量は1,220kJに達します。エネルギー量は体のサイズに大きく左右されますが、春のクラシックで活躍する選手の1時間あたりのエネルギー量は1,000kJ/hが目安です。グランツールの3週目に来て春のクラシック並の負荷のステージが登場していることが分かります。
翌々日からは2日連続の獲得標高4,000m超、さらに最終日前日の個人TTと繋がっていきます。例えるならクラシックの翌々日にさらにクラシックを1レース走るようなものですから、超人的な回復力が要求されます。
最もキツかったステージ(第13ステージ)
https://www.procyclingstats.com/race/giro-d-italia/2023/stage-16/today/profiles
時間 2時間18分
距離 73km
TSS 207
消費カロリー 2,922kcal
獲得標高 2,350m
平均ワット数 354W
NP 395W
解説
この日、ジーは4位に入っています。短いステージになるとその分、スピードは上がりレースは難しくなります。距離が短いからラクということは無いわけです。
また距離が短い分、タイムカットの時間も短くなります。その為、短距離の山岳ステージは、スプリンターにとってミスが許されません。
この日のジーの1hあたりのTSSは90tss/h。 1時間の全開走が100tss/hになりますから、90%で2時間以上走ったことになります。
2時間18分の平均ワット数が354Wからエネルギー量は3,313kJ。 1時間あたりのエネルギー量は1,410kJにも達します。
デレック・ジーのデータから、グランツールがいかに厳しいものかが伝わってきます。データを見ることで、より彼らの超人的な能力をうかがい知ることが出来ますね!
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中田尚志
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トレーニング・データを解析する
昨日のデータを元にトレーニング・データを解析する方法をお伝えします。
(1)各エフォートを確認する
昨日のメニューは 3 x 30分のテンポ(76-90% of FTP)。 走行中にラップボタンを押し、走行後に各エフォートを見れるようにしておきます。
走行データを各パワーゾーンごとに色分けしたのが上記の写真です。ざっと見てテンポ(緑色)の面積が多く、ターゲットを刺激できていることが分かります。
よく見るとテンポを超えている時間も多く、最大限の効果を狙うならもう少し負荷を落とし、更にもう一本行ったほうが良かったかもしれない。という次回へのヒントも得られます。
トレーニングの刺激は強度と量で決まります。ですから、必ずしも強度を上げるばかりがトレーニングの刺激を高めるわけではありません。強度をコントロールし、量を増やすことが最適なトレーニング刺激になることも多いです。
(2)データの見方
更に詳しく見ていきましょう。テンポの場合、最初に見るべきは下記の3点です。説明を簡単にするためにグラフはWKO(パワー解析ソフト)のものですが、トレーニング・ピークスで同じようにデータを確認することが出来ます。
- FTPに対する強度
- ラップ 平均パワー
- ラップ平均心拍
- EF(Efficiency Factor)…心拍1bpmあたりのパワー
1.FTPに対する強度
80〜82%でテンポを刺激できていることが分かります。
2.ラップ平均パワー
この数字を上げていく。もしくはこのワット数で維持できる時間を延ばす。のが今後のトレーニング管理になります。
3.ラップ平均心拍
トレーニングが進むと血液の拍出量は増え、同じパワーを出しても少ない心拍数で走れるようになります。
今回は146-154bpmでしたが、トレーニングを重ねることで、同じ200-206Wでも例えば140-150bpmといった少ない心拍数で走れるようになってきます。
4.EF
こちらも3.に似ています。 EFは心拍1bpmあたりのパワーです。 EF=平均NP ÷ 平均心拍 で算出されます。
現在は1.35~1.44bpm/W こちらが例えば1.40-1.50bpm/Wになれば、パワーアップしていると評価できるわけです。
(3)ゴールの立て方
パワートレーニングの世界はいつも “トレーニングはテスト”です。
今回のトレーニングデータから、上記の情報を得ました。これらをベースにトレーニングのゴールを立てることが出来ます。
トレーニング効果が見込める8-12週間後に同じトレーニングを行ってみて、下記の変化があればトレーニングは成功したことになります。
1.ラップ平均心拍は同じで、ラップ平均パワーが上がっている。
2.EFが向上している
3.ラップ平均パワーは同じで、ラップ平均心拍が下がっている。
データを解析することで更に効果的にパワーアップ出来ることを願っています!
Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志