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さぁパワートレーニングを始めよう! Part6実践編①

前回のFTPテストでパワートレーニングを始める準備が整いました。

Photo credit: VeloNews

しかし、FTPを測ったとはいえ今すぐトレーニングの全てをパワーベースのトレーニングに変える必要はありません。

そもそも「FTP105%で20分x 2 、AC30秒を6本、最後のテンポは90%FTPまで上げてみよう。」なんて言われても、自分にとって効果がある練習なのか分からないばかりか、何のことだか分からない方も多いはずです。

また今までのトレーニング方法から一気にパワートレーニングに移行する事に懐疑的な方や不安を感じ躊躇している選手もいるでしょう。

そんな場合は普段のトレーニングにパワートレーニングを少しずつ取り込んで行き、しっかりと効果を確認しながらトレーニングを進めて行くのが有効です。下記のメニューはデータ収集の役割もあり、今後トレーニングを進めて行くうえで必ず役立ちます。

メニュー1 MAXチャレンジ

月々のベスト・ワット数

既に皆さんの定番練習コースの中で、「あの標識から頂上までダッシュ!」「この山に来たらタイム計測」などのポイントがあると思います。
そういった場所でパワーを計測しましょう。
測る時間は下記の時間を参考にしてください。
距離で区切るよりも私は時間をお勧めします。その理由は、時間であれば世界中どこに居ても同じ条件で計測が可能な為、簡単に比較が出来るからです。

(1)スプリント 5~15秒
スプリント領域の最高ワット数の計測です。5秒・10秒・20秒の最大ワットを測りましょう。ベロドロームや人・車の来ない道路で計測しましょう。
自分が回し切れる最大のギアに入れ全力疾走開始です!
この領域はあまり細かい規定時間にこだわる必要はありません。5秒なら8秒程度、10秒なら12秒程度加速にかかるギアを見つけてモガキます。
その中でベストな5秒・10秒のワット数を後で抽出します。
5秒間の平均ワット数が、男性なら体重の20倍、女性なら15倍を超えたなら、十分スプリンターとして活躍して行けるでしょう。
例:体重60kgの男性なら1,200w     体重50kgの女性なら750w

余談ですが一流のトラックスプリンターなら25倍を超える出力を発揮します。

(2)アネロビック 30秒~2分(Anaerobic Capacity無酸素運動容量)
無酸素性能力の計測です。30秒・1分・2分と時間を区切りそれぞれの時間全開でモガキます。(それぞれ別で行います。)
前回測定したFTPの120~150%をマークする事を目標にします。
例:FTP300w  450wで30秒 360wで2分を目指す。

(3)VO2MAX 3~8分
最大酸素摂取量レベルの計測です。3分・5分・8分(それぞれ別で行います。)と時間を区切って走りましょう。ここで大切なのは最後まで踏み切ること!計測中最後の1秒・1ストロークまで全力でペダリングします。
途中飛ばし過ぎて最後はヘトヘトでは平均パワーは下がってしまいます。スタートから最後の1秒まで力強く走れるペーシングが大切です。
前回測定したFTPの106~120%を目指します。
例:FTP300w 360wで3分 318wで8分

(4)LT 10~60分
FTPテストというと身構えてしまいますが、定番練習コースの中で20分程度の峠を見つけ全開で走ってみるのも良いものです。意外とベストワット数を更新できるかもしれません。
前回測定したFTPの100~105%を目指します。
例:FTP300w 315wで10分 300wで60分

20分間の出力が、男性で体重の5倍、女性で4.5倍を超えたら、国際レースを視野に入れてトレーニングしても良いでしょう!

全ての領域で目標達成できたら素晴らしい!
もし、出来なければその領域のトレーニングを増やす必要があるかもしれません。
帰宅したらPCにデータをダウンロードして各最大パワーを記録しておきましょう。

今日記録したパワーは次回更新すべきパワーです!

年ごとのベスト・ワット数

これらのデータを蓄積していくことは良いトレーニングになるだけでなく、今後みなさんが自転車競技を続けて行くうえで貴重な「財産」になります。

「昨年の自分が、出力していたワット数は?」
「2年前の自分は? 3年前と比較すると?」

ずっと記録を取り続けて行けば
「40歳の自分は、いまでも28歳の時と同じ出力で走れてる!」なんて事に気づくかも知れません。

また一旦競技生活から離れた場合に「よし、ベストな時代の自分に戻ろう!」なんていうモチベーションを得てトレーニングに戻ることも出来るでしょう。

こうやってデータを蓄積し、パワーデータをモチベーションにトレーニングするサイクリストをData driven cyclist(データ・ドリブン・サイクリスト)と言います。
皆さんも是非、データを活用し、トレーニングのモチベーションにして下さい。

一番上の写真はツアー・オブ・ヒラで総合優勝、そしてATOC(ツアー・オブ・カリフォルニア)では総合11位に輝いたカーター・ジョーンズ選手です。

彼はU23時代からパワートレーニングに取り組み、UCI2.2のレースで総合3位(左写真)、カスケードクラシックで新人賞(下写真)など着実にステップアップを遂げてきました。

コーチであるスティーブ・マクレガーとカーターは長年お互いに協力しながら、少しずつパフォーマンスを高めて来ました。スティーブのPCにはU23時代から今日に至るまでのパワーデータが一つ残らず保存されています。

その記録は、また先の未来を創る為の資源となるのです。

パワーデータという財産は、プロツアーを目指す若者から、アンチエイジングを目指すマスターズの選手まで、かけがえのない財産となるはずです!!

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パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)他、著書多数。

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さぁパワートレーニングを始めよう! Part5 FTP計測編②

前回ご紹介したFTPテストはトレーニング強度を決める大切なものです。

ここでテストの方法について補足説明させて頂きます。


(1)ロードについて
①コース選びについて
事故を避けるのはもちろん、クルマや人とすれ違う為にパワーを抜かなければならないような場所はテストに不向きです。出来るだけ人や車が通る可能性の低い場所を選びましょう。

②環境について
同じ手順でテストを行っても、計測する環境によって多少FTP値に差が出ます。個人差はありますが、おおむね 登り>平坦>ローラーの順で登りが一番値は高くなります。これにはペダル1回転の間に負荷がかかる時間や動員される筋肉、気温などが影響しています。繰り返し同じ環境でテスト出来る場所を選びましょう。







(2)体調・集中力について
既にテストを行ったことのある方なら経験があるかと思いますが、テスト後に必ず「あと数ワットは行けた。」と思うものです。

限界まで追い込めるように数日前から体調を整えベストスコアを叩き出しましょう!

また繰り返しになりますが、集中力を高める為にもロード選びは慎重に。
人・車以外にも、あまり自転車が多い所もお勧めしません。
限界までプッシュしている時に、他のライダーに悠然と追い抜かれたら集中力が切れてしまいます。
また自分が追い越す場合でも、後ろにつかれると思わずペースが乱されてしまうものです。静かに集中できるところが一番です。チームで計測を行う場合は時差発走が良いでしょう。

また計測中はヘッドユニットに気を取られず、しっかりと前を向いて走りに集中しましょう。人が来ないはずのロードでも、動物が横切る可能性だってあります!(事実、アメリカではよく鹿やウサギ、時にはクマが道を横断します。日本でも可能性はあるでしょう。)











(3)ペダリングについて
「最も美しいペダリングが最もパワーの出るペダリングです。」
スムーズで美しいペダリングは、効率が良く高出力を維持できるものです。
パワーを高く表示させるため、力んだり、ギクシャクと踏み込むペダリングをすれば一瞬表示は高く出ますが、決して長続きしません。特にパワーメーター初心者は意識してスムーズなペダリングを行ってください。

(4)記録単位について
必ず記録単位は1秒ごとにして下さい。これは今後トレーニングデータを収集する時も同じです。1秒を超える単位でのデータ収集は解析には不向きです。

(5)ヘッドユニットの画面設定について
画面設定を変更できる場合は、やる気をかき立てられるように、デザインしてみましょう。ここではGarminEDGE510(英語版)を例にとってご説明します。

(クリックすると拡大されます。)

画面設定の目的…ひとつの画面に必要な全ての情報を表示させ、テスト中はヘッドユニットを操作する必要が無いようにします。
重要な情報を見やすい位置に配置し、走りに集中できるようにします。


・現在のパワーをトップに置き、その下に平均パワーを表示し対比できるようにします。


・30秒の平均 30秒の平均を表示させ現在の傾向(過去30秒平均パワーを上げているのか下げているのか?)を確認できるようにします。


・ラップタイム 残り時間が分かるように表示させます。


・ハートレート 心拍数をタコメーターとして使う為に表示させます。


・ケイデンス リズムを一定に保つために表示させます。


・ハートレートやケイデンスをNP(ノーマライズドパワー)、距離、スピードなどに置き換えるのも有効です。自分なりにデザインしてみましょう。

(6)キャリブレーション(校正)の手順について
ここでもGarmin EDGE 510(英語版)とパワータップG3を例にとってご説明します。他のヘッドユニットも概ね方法は同じです。各メーカーの手順に沿って行いましょう。

・ホイールを回転させパワーメーターを起動する。


・無負荷の状態にする。(ペダルに足を載せないで壁などに立て掛ける。)

・ヘッドユニット(今回はEDGE510)を起動する。



・画面中央を押してメニューバーを表示させツールアイコンを押す。


 ・Bike Profilesを選択する。




















・使用しているBikeを選択する。




















・パワーメーターのアイコンを押す。






















・Calibrateを押す。




















・Calibrateを押す。






















・完了!


















(7)測定する場所がない場合
計測する場所が確保できない場合は、下記の方法を試します。
またテスト環境がある場合でも、下記のデータと見比べてFTP値の精度を確かめるのも良い方法です。テストの回数が多いほど、またデータは多ければ多いほど精度はあがります。

FTPテスト代替案
・長いTT(40km程度)のパワーデータ
・60分のクリテリム・ロード・TTなどレースデータのNP(ノーマライズドパワー)

・2 x 20分の限界走の平均値
・30分のTT(練習)

・パワー分析
・20分のTTの91% (事前の5分走を行わない。)

(8)どれを採用すればよいの?
前回ご紹介したハンター・アレンのFTPテストと上記6つのテストの結果は、近いものの完全には一致しません。また20分テストで3%を除くか5%を除くのかも悩ましい所です。
あるFTPテストの結果は300wであり、あるテストの結果は290wかもしれません。では一体どれが正解で、どの数値を採用すれば良いのでしょうか?
答えは全て正解です。どれを採用しても良いのです。

FTP=1時間の最大平均パワー

これが唯一のFTPの定義です。その他の方法は、このFTPを類推する為の手段です。ですから複数のテストを試し、1時間の全力疾走の平均値に一番近くなる方法を採用すれば良いのです。
FTPは日々の体調によって変わります。ですからテストでは1wattでも数値を上げるように努力することが大切ですが、日々のトレーニングはゾーンで把握する事も必要です。

ある時は1wattでも出力を上げる努力を。そしてある時は大まかなゾーンでワット管理を行うフレキシブルさが必要なのです。

「数値に操られるのではなく、操ろう!」これがパワートレーニングの基本です。

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さぁパワートレーニングを始めよう!Part4 FTP計測編①

さていよいよFTPの計測です。

FTP=1時間の最大平均パワー。 ということをご紹介しましたが、だからと言って毎回テストで1時間全力疾走する必要はありません。
計測は精神的・肉体的負荷を考慮し、20分のテストを行います。20分であれば普段のスケジュールにも取り込みやすいですし、定期的に測ることも簡単です。


FTPの計測に必要な物は下記の4点です。
(1)機材
信頼性の高いパワーメーターとヘッドユニット&データをダウンロードするソフトウエア。
(2)ロード
20分以上、車や人が来ない登りもしくは平坦。下りは含まない方が良い。
日本の場合、勾配が一定な峠の登りがよいでしょう。
近くにない場合はローラーか信号や交差点がない周回コースなどで代用します。
(3)良い体調
今後のパワーゾーンを設定する大切なテストです。レースと同じように体調を整えて挑みましょう。
(4)集中力
繰り返しになりますが、レースと同じ集中力が必要です。痛みに耐え限界まで自分をプッシュするには集中力が必要です。

・パワーメーターによっては気温の変化が精度に大きく影響するものもあります。なるべく気温の変化が少ない日を選ぶ方が無難です。

パワーメーター

テストの準備は整いましたか?
ではスタート!っと言う前にもう一点!走行前に必ずキャリブレーション(校正)を行ってください。これを行わないとせっかくのテストデータはゴミ箱行きになってしまいます。
キャリブレーションの方法については次回詳しくご説明します。

さぁいよいよスタートです!

下記の手順にならってテストを行ってみましょう。
 

FTPテストの例
WU: 10-20 分 エンデュランスゾーンで。 3 x 1分のファーストペダル(高回転走)を入れて足を目覚めさせよう。
——-
MS1: 5分全開。この5分は限界で行うこと。スタートしてすぐにスピードに乗せる。しかしゴール前に失速してしまうほどには上げないこと。ゴールまでしっかりとキープできるペースをつかむことが重要。
最後の45秒は、限界まで追い込むこと。
この5分間の目的は 1.VO2Max領域の能力を測ること 2.続くFTPテストに向けて予備疲労させておくこと。それによりFTPテストの精度が上がる。

終了したらZ2エンデュランスレベルに戻し15分回復させてからMS2に進もう。
——-
MS2: 20分のタイムトライアル

TEST!

スタートして20分間限界を維持する。静かにスタートし最初に飛ばし過ぎないこと! ペースに乗せるまで2分ほどかける。終盤は限界まで追い込む。
終了したら10分間イージースピニングを行って回復。

帰ったらデータをダウンロードしてチェックしよう。
20分のアベレージパワーから3-5%除いた値があなたのFTP値です。
——-
CD: 10-15 分のイージースピニング

お疲れ様でした!良い走りは出来ましたか?

もしMS1の5分走の疲労があまりにも大きくMS2でパワーを維持できなかったのなら、次回は5分走を今回出したFTPの110%程度で行ってみましょう。

今回出した20分の平均パワーを下記の表に当てはめて自分だけのパワートレーニングチャートを作りましょう。

このテストは数か月に1回行い、現在の調子を確認すると共に最適なパワーゾーンを適宜見直して行きましょう。

パワートレーニングチャート

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パワー・トレーニング・ゾーン計算ツール Powered by じてトレ

(テスト結果から3-5%除いた値を入力して下さい。)

FTP W  

レベル %:FTP比 パワー(W)
L1 回復走 ~55% W
L2 耐久走 56~75% W
L3 テンポ走 76~90% W
SST・スイートスポット 88~94% W
L4 LT(乳酸閾値) 91~105% W
L5 VO2max 106~120% W
L6 無酸素運動容量 121~150% W
L7 神経筋パワー  

協力:じてトレ  http://www.jitetore.jp/

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ダウンロードはコチラ

https://files.secureserver.net/0seLpJPsQbFPXW

尚、Anaerobic capacityをじてトレでは無酸素運動容量、PCGではアネロビック(AC無酸素性運動)と表してしますが、内容は同じです。混乱を避けるために今後用語は統一して行く予定です。

次回はテストについての詳しいガイドラインをご紹介します。


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