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ツール・ド・フランスのTTT/ITTパワーデータ比較 Part2

前回はチームタイムトライアル(TTT)/個人タイムトライアル(ITT)に要求される能力を検証しましたが、今日は更に深く検証し実際の強化方法についてご紹介します。

TTに求められる能力
(1)FTP・VO2Max
TTT/ITTともに高速巡航を支えるのは有酸素能力です。
FTP(1時間全力疾走した時の平均パワー≒LTパワー)が高いほど高速巡航が得意になります。TTの場合、ロードレースと比較して時間が短く強度が高いので有酸素能力の上限近くを鍛える事が成績に直結します。
下記の図は2011年ツール・ド・フランスのクリス・アンケル・ソレンセン選手のTTTのパワーデータです。
黄色の破線は彼のFTP360wattを示しています。先頭を引いた時はFTPよりも高い強度、隊列の後ろに回った時はFTPより低い強度を中心に進んでいることが見てとれます。もしFTPが低いと隊列について行くことさえ困難になってしまいます。
言い換えればチームの強さ≒FTPの平均値の高さと言えますし、個人TTの強さ≒FTPの高さとも言えます。

(2)ケイデンス
TTTとITTを比較した場合、ケイデンスはTTTの方が5~10回転速くなります。これはTTTの方が平均スピードが高いこと。また先頭に出たときは無酸素領域の高負荷に入ることによります。ケイデンスを高く保ちつつスピードの変化に対応する方が高速の状況下では効率的な走りが出来ます。
各グランツールのTTステージを比較しても個人TTと比較してケイデンスは4~10回転/分早くなっています。チームで集まれない日は、いつもよりケイデンスを5~10rpm上げて走るのはTTTをシュミレーションする上で有効です。

1分間のペダル回転数比較

(3)ノーマライズド パワー
レース中の平均パワーとノーマライズドパワー(NP・・・アベレージでペダルを踏んだと仮定した時のパワー)を比較した場合でも、TTTはパワーの変動が大きくITTは少ないため、TTTの方が平均パワーとNPの差は大きくなっています。
その為、その差を表すVI(バラエティインデックス)は大きくなります。
これはTTではより安定したFTPのパワー、TTTではそれにプラスしてアネロビック領域の強化も必要な事を表しています。

平均パワーとノーマライズドパワー比較

上記の内容を理解したうえで必要な能力にフォーカスして強化をはかることが、TTレースで好成績を収めるためのキーになります。またTTに強い選手がロードにも強い(カンチェラーラ・フルーム・コンタドールなど)ことを見ても分かるように独走力の強い選手はロードレースでも強いです。ですから一定期間TTの為に集中したトレーニングを行い独走力を養う事はロードレース/クリテなどにも必ず好影響をもたらします。

TTトレーニングの例
このトレーニングはFTP領域とその上のVO2Max領域を行き来することからCrisscross(交差インターバル)と名づけられました。
有酸素領域の限界近くと一部無酸素に入る領域を行き来することで、有酸素レベル限界付近でのパワー、乳酸除去力、回復力、ペダリングスキルを鍛えます。
この能力は高速のクリテリウムやマスドスタートでのヒルクライムにも役立ちます。また一人で練習している場合でも出力に変化をつけることで、チームや集団で走る時のシュミレーションになります。

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WU:15分 エンデュランス(Power Z2 56-75%, HR Z2, RPE 2-3)領域で。
後半に3 x 1分の高回転走を入れる。ワットは気にせずスムーズで軽やかに回しましょう。
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MS1: Sweet Spot Crisscross(交差インターバル) 2 x 20分

FTPの89-92%で巡航し、2分ごとに30秒間VO2MAX(120%FTP)までペースを上げます。その後また89-92%FTP巡航に戻り2分間(85%以下には落とさないこと!)、また120%FTPで30秒・・・と繰り返します。

地形:平坦もしくは緩い登り 30秒のペースアップは1枚か2枚のギアチェンジになるはずです。

ケイデンス:TTT/ITTのケイデンス(90-100rpm)で。
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CD:10-15分のイージースピニング。

All rights reserved Hunter Allen.

Peaks Coaching Group
Takashi Nakata

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この度、PCGではPower Tapの正規輸入代理店㈱キルシュベルクとタッグを組んでTTT/ITTのトレーニングプランを皆様に提供する事になりました。

ご興味のある方は下記のHPをご覧ください。
Peaks Coaching Group x Power Tap Presents
Hunter Allen’s 7weeks TT スキルアッププログラム

http://www.kirschberg.co.jp/partners/pcg_tttraining.html

ご要望・ご質問のある方はtakashi@peakscoachinggroup.comまでお気軽にご連絡下さい。

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ツール・ド・フランスのTTT/ITTパワーデータ比較

いよいよツール・ド・フランスが開幕ですね!
Peaks Coaching Groupのあるバージニア州からはBen King選手がGarmin-SHARP チーム代表として出場します。

新城選手と共に彼の活躍にも注目して頂ければと思います。

今日は過去のツール・ド・フランスのデータを使って個人タイムトライアル(ITT)、チームタイムトライアル(TTT)のパワーデータ比較と要求される能力についてご紹介しましょう。
下記のグラフは2011年ツール・ド・フランスでのクリス・アンケル・ソレンセン選手(Saxo Bank-Sungard当時)のパワーデータです。

上が第2ステージでのTTT
下が最終日前日のITTのデータです。(クリックすると拡大します。)

グラフ中(1)黄色…パワーwatt (2)緑…ケイデンスrpm (3)ブルー…時速mph (4)オレンジ…標高ft

TTTとITTを比較するとTTTはパワーの変動が大きくITTは一定の出力をキープしているのが見て取れます。
これはTTTでは先頭に出たときに空気抵抗を受ける為、大きなパワーが必要とされ、後ろに回った時は他の選手のドラフティングに入るのでエネルギーをセーブ出来ることを表しています。
ITTでは常に一人で空気抵抗を受けているので負荷は一定になっています。
またケイデンスもTTTでは大きく変化しITTでは一定なのが見て取れます。

ではそれぞれのステージをパワーゾーンに分けて見てみましょう。
同じく上がTTT、下がITTのグラフです。(クリックすると拡大します。)

グラフ左から右へと運動強度が上がります。
AR…アクティブリカバリー(Power Z1, <55%FTP) 
E…エンデュランス(Power Z2 56-75%FTP)
TE…テンポ(Power Z3 76-90%FTP)
TH…FTP(Power Z4 90-105%FTP)
VM…VO2Max(Power Z5 106-120%FTP)
AC…アネロビック (Power Z6 121-150%FTP)

両者を比較して下記の特徴が挙げられます。
・TTT・・・AC領域の時間が突出している。全体的には高い運動強度ながらARの時間も長い。=強度の緩急の差が大きい。

・ITT・・・FTP領域が突出している。=FTP付近で一定の巡航をしている。

これらのデータから下記の点についてTTT/ITTに必要な運動能力が分かります。

(1)TTTに要求される能力
   ・先頭を引く為の大きなアネロビック(無酸素)能力とそれを繰り返し発揮する能力。
   ・後方に回った時の回復力
   ・高い有酸素能力(FTP)による高速巡航能力

(2).ITTに要求される能力
   ・高いFTP・VO2Maxの能力

(3)TTT/ITT両方に要求される能力
  ・高いFTP…高速巡航を可能にする有酸素能力。
  ・高いペダリングスキル…高速巡航と後方で休むことを可能にする。
  ・高いハンドリングスキル…高速巡航の中で前走者との距離を詰める。コーナーで最速ラインを攻める。後方の走者を休ませる。最短ラインを取ることを可能にする。
  ・強烈な運動強度に耐えうる高い精神力・集中力!

上記以外にレースでは高強度を維持するためのペーシング(ペース配分)・ウォーミングアップも非常に重要になってきます。

これらの非常に高い運動能力とスキルを21日間のレースの中で幾度となく発揮するプロ・ロード選手たちの超人的な耐久力に感服せずにはいられません。

今年も21日間におよぶ闘いが楽しみですね!

最後に貴重なデータを提供いただきましたクリス・アンケル・ソレンセン選手、トレーニングピークス社に感謝いたします。

All rights reserved Hunter Allen.

Peaks Coaching Group
Takashi Nakata

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Ride with HUNTER ALLEN

ハンターと朝練に行きました。

ベッドフォード郊外をぐるりと周る56kmのループです。

ここでハンター・アレン氏をご存じない方の為に少し説明をさせて頂きます。

氏はUSAC(アメリカ自転車競技連盟)レベル1コーチで元プロロード選手、パワートレーニングバイブルの著者であり、パワートレーニングの先駆者でもあり、五輪BMXチームのコーチを務めていた経験があり、二男一女の親でもあります。


そして当社Peaks Coaching Groupの最高経営責任者(CEO)です。

彼が作ったパワートレーニングのワークアウトは1,000を超え、今まで400人以上の選手を指導し1,000以上の勝利に導いてきました。

その彼が幾多のワークアウトを考案したコースを実際に走れるのは、日本で7年以上にわたり氏のパワートレーニングを行ってきた私としては非常に興味深いものがありました。

前置きはこれぐらいにして実際に走り出すと、元プロ選手のご多分に漏れず平坦の巡航速度が速かったです。

途中、犬に追いかけられたりしつつも「さぁローテーションを始めよう!」とか「次のコーナーを曲がったらヒルジャム(丘を何本もモガきながら越える事)だ!」などとメニューを入れてくるのは、さすが元プロ選手でありパワートレーニングのコーチといったところでしょうか。

メニューの間に行う自転車上での会話は万国共通で、ツール・ド・フランスの話から、日本の自転車文化、素晴らしい若手の台頭についてなどで盛り上がりました。

特に今アメリカでは若手の台頭が目覚ましく、それはNDP(National Development Program)という若手育成プログラムが機能している事が大きいのですが、その話題に及ぶと「どうやったら選手は強くなるのか?」と熱く語っていました。

ところでアメリカの自転車企業では、このようなカンパニーライドと言われるお昼や朝に社員が一緒に走りに行くライドが結構盛んです。もちろん上司と部下も一緒に走ります。

CEOのハンターは元プロ選手ですし、今でも結構走っているので年齢の割に驚くほど強いですが、ここ最近はソフトウエアの開発に忙しくあまり走っていませんでした。
さすがの彼でも結構苦しそうです。
ここで日本人サラリーマンとして生きてきた私に沸き起こった疑問

「最高経営責任者を振り切って山頂を目指すべきか?」

登りに入る前に「頂上まで約1kmだ。途中キツイがどんどん行ってくれ。VO2max領域を維持するがいい。」と言われた場合、正直にVO2Maxを維持する事がサラリーマン的に正解なのか、はたまた上司を立ててゆっくり走るのが正解なのか?

酸素が少なくなりつつある脳で「ひょっとしたら帰社後、パワーデータを見て”VO2Maxまで追い込めてないな”と言われるかもしれない。ここは飛ばそう。」「いや、ここはペースを落とし経営者を立てよう。」などと考え少々混乱してしまいました。

そんなライドに興味のある方は下記のリンクをクリックしてみて下さい。

Ride with Hunter Allen
http://tpks.ws/gGxr

ハンター
彼がテストするバイクはF1開発チームが作ったFactorというバイクです。

PCGジャパンBLOG(仮オープン中)
http://peakscoachinggroup-japan.blogspot.com/

PCGジャパン Face Book ページ
https://www.facebook.com/peaksjapan

PCGウェブサイト(英語)
http://www.peakscoachinggroup.com/

National Development Program(英語)
http://www.usacycling.org/ndp/

サービス・ブログについてなど、お問い合わせは下記メールアドレスまでお願い致します。
takashi@peakscoachinggroup.com