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暑い日のライドについて Exercising in extremely hot weather

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夏真っ盛りですね。
皆さんのお住まいの地域でも厳しい暑さが続いていることと思います。

アメリカでも日本以上に暑くなる場所があります(デスバレーでは50℃を超えます!)。
そこで今日は暑さ対策についてご紹介しましょう。

夏のダメージをシーズン終盤に持ち越してしまわぬよう入念に対策をしましょう!


(1)トレーニング内容
たった10分のライディングで体内温度は1℃上がると言われています。体内温度が上がれば、体温調整の為に心拍数は上がります。
それは、いつもと同じ心拍数で走ってもパワーは下がっていることを意味します。身体を少しでもクールに保ち練習効果を上げる努力をしましょう。

  • エンデュランス走を高めの領域で行う。…夏場はエンデュランス(PowerZ2 FTP56-75%)を高めの領域で行い走行時間を短縮しましょう。高いエンデュランス領域(FTP70%程度)でトレーニングする事で、低い領域(FTP60%以下)で長時間トレーニングするのと同様の効果を得られることが分かっています。暑さの中、低強度・長時間走り込むとトレーニング効果よりもダメージの方が大きくなってしまいます。
  • インターバルトレーニングを取り入れる。…夏場はクリテリウムや短時間のロードレースが多くなります。それらの為に高強度・短時間のインターバルトレーニングを取り入れましょう。

夏のトレーニングメニューはブログ最後に紹介します。

(2)コース選び
コース選びを工夫することで随分と気温に差が出るものです。トレーニングメニューに合わせてクリエイティブなコース作りを行いましょう!

日陰・水辺・時間・標高を考慮してコースを作ろう!
  • 日陰が多いコースを選択…夏場直射日光が当たる路面の温度は60℃にも達します。日陰のないサイクリングロードのような場所だと、サイクリストは60℃の路面と37℃の気温にサンドイッチされて走ることになります。サンドイッチに挟まれたベーコンみたいになってしまわぬように直射日光を避け、日陰を選んで走りましょう。 日本は森が多く一旦山の中に入ってしまえば、案外日光を避けて走れるものです。木陰の地表温度は通常気温よりも2-3℃低いと言われています。
  • 水辺を走る…山間部に流れる川沿いの道を見つけて走りましょう。流れる川が涼しい風を運んでくれます。また水を張った田んぼの多い所も暑さを和らげる風を運んでくれます。
  • 標高が高い所を走る…一般的に標高が100m上がると気温は0.65℃下がると言われます。しかし自転車の場合、標高が高い場所の方が緑が多く道路やビルの輻射熱が減る為、それ以上の冷却効果が期待できます(図参照)。
  • 避暑地に行く…上記の方法では「焼け石に水だ!」と思ったら、長野県・北海道などの涼しい地域にバカンスがてら走りに行くのもお勧めです。実際、暑い時期に家族を連れて避暑地でトレーニングするプロ選手は多く居ます。北海道まで行かなくても2~3時間ドライブするだけで、緑が多く涼しい所が見つかるかもしれません。例えば京都市の8月の平均気温は29℃ですが、たった60㎞しか離れていない美山町では25℃です。

(3)時間帯

  • 涼しい時間を選んで走りましょう。日本の京都を例にとると、夏場の朝夕の気温差は10-15℃程度あります。朝・夕の2回に分けて走るのも良いアイデアです。

(4)装備

  • 水分…運動中1時間に1~2L発汗で水分を失います。ダブルボトルを装備して出かけましょう。発汗により体重の1%を失うとエアロビック能力は落ち、5%失うと熱痙攣を起こすと言われています。水分補給は15分ごとを目安にこまめに行いましょう。スタート前にグラス一杯の水を飲みましょう。予め水分を補給できる場所(コンビニなど)をチェックしておくのも大切です。水分補給を忘れないために15分ごとにアラームが鳴るようにしておくのも良いアイデアです。ボトルの水を顔や首筋にかけて冷却するのも効果的です。
  • 補給…猛烈な暑さの中では食欲が失せるのも当然です。しかし、人間は出力の約4倍を排気熱として消費します。200wattsで巡航している時、同時に800wattsの廃棄熱を発しているのです。暑さの中では排気熱は更に増えます。エネルギー切れを防ぐためライド中こまめに炭水化物・タンパク質を補給しましょう。また発汗で失う塩分・ミネラルを補給するのも忘れずに。
  • 日焼け止め…SPF(紫外線防御指数)、PA(UVA波防御指数)が共に高い物を選びましょう。ロードを走るサイクリストにはSPF50、PA+++がお勧めです。また日焼け止めは、乳液やジェルタイプのものを使いましょう。オイルベースのものは発汗を阻害してしまうので避けるべきです。サイクリストの日焼けスポットである前腕・上腕・膝そして首の後ろ側にしっかりと塗りましょう。
  • サングラス…紫外線から目を守るだけでなく、体感的に涼しさを感じる効果もあります。
アルコール厳禁!

(5)練習後

  • アイシング…熱を持った筋肉は回復が遅れがちになります。頭・首筋・胸・筋肉を中心にアイシングを行い回復を促進しましょう。
  • 栄養補給…練習中に水分補給を行っていてもトレーニング後、体重が2-3%減ってしまうこともあります。次の日には体重が元に戻るように練習後もこまめに水分を補給しましょう。しかしアルコールは厳禁!アルコールは水分を奪います。誘惑に耐えきれない時は、ノンアルコールビールでしのぎましょう。



(6)暑い日のトレーニングメニュー(エリートレーサー向け)
エンデュランスは高い領域(70%FTP)で行い時間を短縮します。またクリテ・ロードレースに必要なFTP・VO2Maxのインターバルを強化します。
山の麓までクルマで自転車を運び、気温の低い山の頂上付近でインターバルを行うのも良い方法です。
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トレーニングメニュー 4時間(夏用)
・WU: 20分 後半10分は75%FTPで。
MS:
・2 x 20分 FTPの93-100%で。安定したスムーズなペダリングを心がけること。
レストは10分。峠を登って反対側に下ったらすぐに引き返すのも良い方法だ。
・30分 エンデュランス。 途中スピードを落としてスプリント6本 前半3本はインナーギア、後半3本はアウターで。
レストは各5分流し。
・5 x 3-5分のVO2Max(Power Z5 106-120%, HR Z5, RPE 6-7) レストは充分に。(ワークの1-2倍程度、3分モガキなら6分程度休み)。山の頂上付近を行き来するのも良い。
・30分 エンデュランス。途中5分ごとに8秒のスプリントを入れる。ギアは同じか1枚重くする程度でシャープに加速し回し切る。
・休憩
コンビニに立ち寄って最後の補給。
水・食料と共にコーラかレッドブル。「最後の踏ん張り」をサポートする食料を摂ろう!
・45分のスィートスポット(88-93% of FTP)。少し抑え目にスタートしてラストの15分はしっかりと踏むこと!
・CD: 5-10 分 ストレッチ・栄養&水分補給を忘れずに!!
お疲れさまでした!
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Peaks Coaching Group
ハンターアレン、中田尚志(共著)ハンター・アレン…全米自転車競技連盟Level1認証コーチ。元プロ・ロード選手。1995年よりあらゆる種目のコーチングを手掛け世界チャンピオン、全米チャンピオンを始め1,000以上の勝利に貢献している。全米自転車競技連盟パワートレーニング講座の講師。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)他、著書多数。

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さぁパワートレーニングを始めよう!Part2 理論編②

前回はパワートレーニングの基本的な考え方について述べましたが、今回は実際のメリットについてご説明します。

パワートレーニングのメリット
(1) 目標値の設定・確認が出来る。
FTPを基準にパワーゾーンを設定する事で、長所・弱点の把握が行えます。
また目標に対してどれだけの強化が出来たか把握できます。


目標設定の例
・前回300wattsで20分かかった登りを今日は310wattsで登ってみよう!
・いつもは360wattsで5本繰り返すインターバルを今日は6本やってみよう!

達成度確認の例
・300watts 15分 x 3本の練習を繰り返し 310watts 15分 x 3本が出来るようになった。→約3% x 3本の向上
・330wattsで3分しか維持できなかったパワーが360wattsで出来るようになった。→約10%の向上

またパワーメーターがあれば、練習とレースのパワーを比較する事も出来ます。

過去の自分を打ち負かそう!












(2)データ解析が出来る。
下記の図はあるプロ選手のゴール前1kmのデータです。

赤い線が心拍数・青色がスピード
・オレンジが勾配を表しています。

心拍数はラスト1kmの地点で163bpmであったのが、ゴール前で174bpmまで上昇しています。
このデータからは段々とゴールまでペースが上がったように見えます。

ではこの図にパワーをあらわす黄色の線を加えてみましょう。パワーデータが表す彼の動きは下記の通りです。

・アシストに引かれて足を使わずスピードを上げています。
(図中①)

・この後、パワーは0ワットになり一瞬脱力していることが分かります。
(図中②)

・解き放たれた彼はスプリントを開始します(図中③)。

・相手との距離を測り一瞬足を貯めます(図中④)

・そして最終スプリントに入ります(図中⑤)

・後続は離れフィニッシュラインを踏む時は脱力しています
(図中⑥)。

そう、彼はこのレースを優勝したのです!

パワーデータを解析すると下記のようになります。
・アシストに引かれて前に上がる時に無駄に足を使わなかった(24秒平均587w①)。
・アシストに解き放たれる直前に一度完全に脱力し足を貯めた(5秒0-120w②)。
・解き放たれた瞬間に2度900wのキックを行い後続を突き放した③。
・再度足を貯めた(5秒間15-322w④)
・ゴール直前で3度目のキックを行い完全にライバルを諦めさせる事に成功した。(7秒間平均604w⑤)
・最後は流してゴールした⑥。

このようにパワーデータはデータのみに留まらずレースのストーリーさえも克明に描き出してくれます。

これはコーチと選手が情報を共有する上で非常に有益になります
彼のコーチは後に「30秒間600wを維持した後、3秒OFF -5秒ON(90%Sprint) -3秒OFF -15秒MAX SPRINT!!」のレース シュミレーションメニューをこの選手に与えています。

(3)トレーニングの最適化が図れる。
トレーニングは一見「どこまでも遠く、誰よりも速く」走った人が一番強くなれるように思えます。しかし実際は毎日頭が真っ白になるまで走ったからと言ってレースに勝てるほど自転車競技は単純なものではありません。
その時必要な強度で、最適な時間トレーニングを積めた選手が、レースで最適な走り方をした時に勝利はもたらされます
パワーメーターは必要な強度・最適な時間を正確に測る事が出来ます。

(4)時間短縮トレーニングが出来る。
長いトレーニングでも“実際にトレーニングしている時間”は意外に短いものです。
例えば峠をいくつも越えるハードなトレーニングを行ったとしても、実際半分以上はエンデュランス領域もしくはリカバリー領域で走っているものです。
4時間のトレーニングの中で、20分の峠を3回FTP領域で攻めたならば実際の練習内容は概ね下記ぐらいになります。

FTP20分×3=1時間
エンデュランス領域=1時間
リカバリー領域=2時間
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合計     4時間

この中で実際のトレーニング=体に負荷を与えているのはFTPとエンデュランス領域に入っている時間ですから、リカバリーを刈り込み、ほぼ同じ負荷の練習を3時間で行う事は可能です。余った1時間は他の強化に使う事も出来ますし、家で”実際にリカバリーする”時間に回すこともできます。このようにパワーゾーンでトレーニングを管理することにより、より短い時間でより効果的なトレーニングが可能になります。

無駄な時間を刈り込もう!






 
 

少し長くなってきましたので、続きは明日にしましょう。
明日はあまり語られないデメリットについてもご説明します。

Peaks Coaching Group
ハンターアレン、中田尚志(共著)

ハンター・アレン…全米自転車競技連盟Level1認証コーチ。元プロ・ロード選手。1995年よりあらゆる種目のコーチングを手掛け世界チャンピオン、全米チャンピオンを始め1,000以上の勝利に貢献している。全米自転車競技連盟パワートレーニング講座の講師。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)他、著書多数。