今年も4,000人以上のクライマーが出場したマウンテンサイクリング in 乗鞍。
女子の部でコースレコードまで20秒に迫る走りで優勝した牧瀬翼選手のデータを見てレースを振り返ってみましょう!
牧瀬選手はPCGの伊藤透コーチの指導のもと春先欧州でレースをこなし、全日本選手権(3位)までを区切りとしてコーチングしてきました。
今回のレースは既に2019年を見据えたトレーニングの一環として参加しています。
(1)牧瀬選手の脚質
牧瀬選手は陸上の実業団選手としてキャリアを積んだ後にロードレースに転向した選手です。
エンデュランス・アスリートとしてのバックグラウンドは比較的早く自転車のパフォーマンスに活かされ、20代中盤を過ぎて本格的に競技に取り組み始めたにも関わらず2016年全日本選手権4位、そして今年は3位表彰台と実績を残してきました。
彼女のパワープロファイルも他のエンデュランス・スポーツから転向した選手によくある傾向を示しています。
それは他のスポーツではあまり筋力を必要とせずに発揮できるスプリント、AC(無酸素能力)は比較的低く、VO2Max(最大酸素摂取量)およびFTP(有酸素能力)が非常に高い、パワープロファイルの右側に行く程(有酸素の割合が多くなるほど)高くなるというものです。
牧瀬選手の場合、特にVO2Maxが高く、ワールドクラスに届こうかというレベルです。これは早い内にスポーツに取り組んでいたことと天性の資質によるものだと思われます。
これは同時に彼女のFTPはまだ若干上げられる可能性があることも示しています。
パワープロファイル 5秒, 1分, 5分, 20分のマックスパワーを体重で割ったもの。 各時間のマックスを測ることで、各エネルギー供給システムごとの能力を知り、さらに体重で割ることで選手の脚質を知ることが出来る。 5秒: スプリント 1分: 無酸素能力 5分: VO2Max 20分: 有酸素能力 |
牧瀬選手のパワープロファイル
写真提供 (c)Tsubasa Makise
(2)当日のコンディション
全日本後に休養を取り、その後、彼女はエアロビックなトレーニングを中心にトレーニングを行ってきました。
その為、レースシーズンのような”バリバリ”のコンディションではないものの彼女のCTLは、ある程度高い所(CTL=89tss/d)にあり、尚且つシーズンの疲労を引きずってはいない為に、コンディションとしてはまずまずの走りが出来る可能があったことがPMC(パフォーマンス・マネージメント・チャート)からも読み取れます。
また来季のトレーニングの一環として参加したために、レースに向けてトレーニング量を落とすコンディショニングをしたわけでもない(ATL=99tss/d, TSB=-6)こともまたPMCから読み取ることが出来ます。
PMC(パフォーマンス・マネージメント・チャート)
CTL: 過去42日間のTSSの平均≒フィットネスレベルを表す。 TSB: CTL-ATL=TSB 当日の調子を表す。
例: CTLが高くATLが低い=TSBは0以上→しっかり練習できていながら疲労は無い=調子が良い。 CTL – ATL = 100 tss/d – 80 tss/d = +20 = TSB
CTLが低くATLが高い=TSBは0以下→今まであまり練習していなかったにも関わらず、この一週間で一気に乗り込んだ=今日は疲れていて調子が悪い。 CTL – ATL = 70 – 90 = -20 = TSB
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乗鞍の試走を行う牧瀬選手
写真提供 (c)Tsubasa Makise
次回は牧瀬選手のレース当日のパワーデータの詳細を追っていきたいと思います。
Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志