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ジョー・ドンブロスキーの話

コロラド州ボルダーで出会ったドンブロスキー(左)、右はハンターがコーチしていたイアン・ボズウェル

ジョー・ドンブロスキーはバージニア州の出身。

丁度私がバージニアに住んでいる頃にプロになった。本人とは1回しか会ったことはないけど、友人のジェレマイア・ビショップがコーチをしていたこともあり近い存在だった。

ドンブロスキーとボズウェルのバイク。

 

ジョーはアマチュアのジロでアメリカ人として初めて総合優勝。

最近は珍しい生粋のクライマーながら総合優勝を狙える選手として、当時は大きな期待が寄せられていた。

チームskyから新人としては例外的な3年契約のオファーを得てプロ入り。一年目からツール・ド・スイスであわやステージ優勝のところまで行き、彼の未来は明るく見えた。

しかし、プロ2年目に足の血行障害(イリアック・アテリー)を発症。

片方の足に力が入らなくなる状態に陥り手術。

その後はEF、UAE、アスタナに所属し、米国内のレースではエース、それ以外は山岳で総合を狙う選手の重要なアシスト要員としてグランツールに出場していた。

チームskyの合宿に招かれジェレマイアとハンターはスペインのマヨルカ島でコーチングの引き継ぎを行った。

 

突如潮目が変わったのは昨年。

アスタナはカベンディッシュのツール最多勝を目指すチーム編成に方針転換。 

平坦一本で勝利を狙うチームに山岳アシストの居場所は無くなった。

チーム方針が変化すると突如高給取りの選手は居場所が無くなる。

いくら強い選手とは言え、カベンディッシュのゴールスプリントをお膳立てをする選手に鞍替え出来るわけもない。

 

今季はチームが決まらないまま渡欧。

トレーニングを続けながら就職活動を行うもチームは見つからず引退となった。

どれだけ強くともチームが見つかるわけではない。プロサイクリングの厳しさを再認識した出来事だった。

Peaks Coaching Group – Japan

中田尚志

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30年前のバイクと現代のバイクどちらが速いのか?

クリス・ボードマンが1992年バルセロナ五輪で使ったロータスは”未来から来た”バイク。

ボードマンはこのバイクで世界記録を更新し、バルセロナ五輪では決勝で追い抜き勝ちを決めて金メダル獲得。
更にツールのプロローグでは総合で上位に来るルック・ルブランを追い抜いてしまいました。
 
まだ鉄に乗る選手も多かった当時、自由な造形で空気抵抗が削減出来るカーボンはまさに未来の素材でした。
 
時が経ちUCIルール上、ロータスのバイクは使えなくなりました。
フレーム形状でダウンチューブが無いのは認められず、更にはフレームの縦横比が決められたからです。
 
現在はUCIルールを遵守しつつ、少しでも空気抵抗が少ないバイクの開発が進められています。
 
ではUCIルールに関係なく自由な形を作れたロータスと現在のルールに適合しつつ空気抵抗を減らしたバイクのどちらが速いのか?
 
ロータスとサーベロ両方でアワーレコードに挑戦したことがあるコルビー・ピアースに聞いてみました。
 
答えは「サーベロ」。
 
「ロータスは確かに速かったもののフレームの精度、カーボンの材質、各部品の性能は現在のバイクに軍配があがる。
またUCIルールを守りつつも空気抵抗はサーベロの方が少ないと思う。」
との事でした。
 
技術の進歩は凄いですね。
 
Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志
 
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デレック・ジーの2023 ジロ・デ・イタリア

今年のジロ・デ・イタリアで大活躍したデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)が彼のパワーデータをインスタグラムで公開していました。彼の走りをデータで見ていきましょう!

 

ジロ3週間

走行時間 92h

距離 3410km(トンネル含まず)

TSS 5,376

消費エネルギー 84,000kcal

獲得標高 45,725m

解説

一週間の平均走行時間は約30時間 , TSSは1,800tss, 消費エネルギーは28,000kcalにもなります。

多くのアマチュアサイクリストのトレーニング時間は6-10時間、TSSは300-500前後です。ジロではアマチュアの3倍の仕事を3週間に渡って続けることになります。

TSS ジーの1時間あたりのTSSは5,376÷92=58tss/h 

1時間FTPで走るとTSSは100になります。ですから全工程を通しておおむね全開の60%の強度で走り続けたことになります。トップレベルのサイクリストで世界のトップ選手と変わらないFTPを持つ選手は意外に多く居ます。しかし、60%の強度で21日間走れる能力を持っているのは世界でも限られたワールド・ツアーの選手だけです。

 

クイーン・ステージ(第16ステージ)

https://www.procyclingstats.com/race/giro-d-italia/2023/stage-16/today/profiles

時間 6時間20分

距離 196km

TSS 423

消費カロリー 6,666kcal

獲得標高 5076m

平均ワット数 293W

NP 339W

解説

ジロ・ツール・ブエルタ、いづれのグランツールでもクイーンステージは獲得標高5,000mあたりに設定されることが多いです。アップダウンを繰り返しつつ富士山の1.3倍の高さを6時間で稼いでしまうのですから驚異的です。

 

クイーンステージは多くの選手にとって400TSSを超えます。400tssの意味するところは、この日彼は6時間かけて1時間のタイムトライアル4本分のストレスを体にかけたという意味です。

平均ワット数からエネルギー量を計算すると7,750kJ。1時間あたりのエネルギー量は1,220kJに達します。エネルギー量は体のサイズに大きく左右されますが、春のクラシックで活躍する選手の1時間あたりのエネルギー量は1,000kJ/hが目安です。グランツールの3週目に来て春のクラシック並の負荷のステージが登場していることが分かります。

翌々日からは2日連続の獲得標高4,000m超、さらに最終日前日の個人TTと繋がっていきます。例えるならクラシックの翌々日にさらにクラシックを1レース走るようなものですから、超人的な回復力が要求されます。

 

 

最もキツかったステージ(第13ステージ)

https://www.procyclingstats.com/race/giro-d-italia/2023/stage-16/today/profiles

時間 2時間18分

距離 73km

TSS 207

消費カロリー 2,922kcal

獲得標高 2,350m

平均ワット数 354W

NP 395W

解説

この日、ジーは4位に入っています。短いステージになるとその分、スピードは上がりレースは難しくなります。距離が短いからラクということは無いわけです。

また距離が短い分、タイムカットの時間も短くなります。その為、短距離の山岳ステージは、スプリンターにとってミスが許されません。

 

この日のジーの1hあたりのTSSは90tss/h。 1時間の全開走が100tss/hになりますから、90%で2時間以上走ったことになります。

2時間18分の平均ワット数が354Wからエネルギー量は3,313kJ。 1時間あたりのエネルギー量は1,410kJにも達します。

 

デレック・ジーのデータから、グランツールがいかに厳しいものかが伝わってきます。データを見ることで、より彼らの超人的な能力をうかがい知ることが出来ますね!

ピークス・コーチング・グループ

中田尚志

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