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[Track] トラック世界選手権で驚いたこと その4 アシュトン・ランビー

アシュトン・ランビーは彗星のように表れたスター選手です。
彼はトラック競技を始めて3年で2度の世界記録を樹立しました。
世界で活躍する選手はたいていジュニア時代から本格的に競技を始めていますがランビーの経歴はちょっと違います。
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高校時代から自転車には乗っていましたが、レースで特に好成績を収めた選手ではありませんでした。
学生時代の彼の興味はバンド活動だったと言います。

2016年のリオ五輪時でさえ「こいつら凄え」と言いながらTVで観戦していたと言います。
自転車の興味はオフロードにあり、いわゆる「公認レースでない」グラベルレースに出る自転車好きの青年でした。

 

2017年、地元にある芝生のトラックレースに出たことがキッカケでトラック競技に興味を持ち公式戦に参戦開始。
その中で元五輪選手のカール・サンドクイストの導きもあり全米選手権に参加する権利を得ました。
ここから彼の快進撃が始まります。
推薦されて出た全米選手権では早速IPで優勝

 

2018年にはナショナルチームに代表入りしIP4kmで世界記録を樹立。
あまりの突然の出来事に誰もが「アシュトン・ランビーって誰だ?」と驚きました。

 

突然階段を上り詰めた彼のレースに取り組む姿勢は、ジュニア時代から百戦錬磨の経験を積んだ選手とはかなり違います。
パンクやスリップの危険がある為にホコリがひとつ落ちていても気にするトラック・インフィールドに自身のグラベルバイクを持参。
そのバイクはフロントバッグとフェンダーが着いている完全なるツーリング仕様。

 

私は30年間で初めてフロントバッグの着いている自転車でウォームアップをしているトラック選手を見ました。

予選では自身のPBを更新する4分3秒640を記録(平均時速59.437km/h!)
これはチーム・イネオスに所属するイタリア代表のフィリッポ・ガンナに次いで2位の記録です。
ワールド・ツアーの選手とグラベル出身の青年が世界選手権の決勝で対決する。
10年前には考えられなかったことが起こりました。

 

自転車競技に新しい風を吹き込む彼の活躍にワクワクしました!

 

Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志

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[Track] トラック世界選手権で驚いたこと その3 橋本英也選手

ベルリンのベロドロームは周長250m 幅員7.5m 最大傾斜は45°です。
オムニアムではこの狭いトラックを25名ほどの選手がひしめき合って走ります。
トップレベルの選手たちは勝負どころでは肘をぶつけ合いポジションを主張します。
 
写真はオムニアムでの日本の橋本英也選手とギャビン・フーバー選手
S/Fラインで接触し、落車を避けた橋本選手はペダルを外したまま1コーナーへ。
トラックバイクは固定ギアのため足を止めることは出来ませんしブレーキもありません。
加えてこのとき彼は安定性の悪いハンドルの肩の部分に手を載せるスタイルで走っていたので私も思わず「いった…。」と思いました。
しかしクランクが強制的に回っている状態から再度ペダルをキャッチし落車を回避。
事なきを得ました。
世界のトップで走っている選手はペダルの位置がどこにあるかを的確に捉えていますし、また危険回避能力も高いですね。
今回の世界選随一のナイスセーブでした!
 
 

 
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[Track] 持ちタイム

 どんなレベルの選手にとっても「持ちタイムを上げる」というのは大切です。
それはTTやトラックに限らずロードでもMTBでもCXでさえ同じです。
 
「一人で走って速い選手は、人と走っても強い」
 
というのは古くから言われていることです。
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決められた区間を速く走れるということは、人と走った時に相対的に楽に走ることが出来、勝てる可能性は高くなります。
チームパーシュートでは特にそれが求められ、1kmとIP(男子4km, 女子3km)が速い選手はチームパーシュートを走っても速いです。
先頭交代の上手さやメンバー間の足の差を上手く調整できる能力も求められますが、まずは持ちタイムが重要です。
今回の世界選手権でアメリカチームはチームパーシュートで優勝しましたが、メンバーのクロエ・ダイガートはIPでも世界記録を出して優勝、エマ・ホワイトはトラックに転向して間もないにも関わらずIPで6位に入っています。
 
 
世界選は当然、世界最高峰を決める大会ですが、今年の場合は同時に五輪の結果を占う大会でもありました。
各国はメンバーを入れ替えながらワールドカップを戦い、一番タイムの出る布陣で世界選を走り五輪に向けた最終確認を行っていました。
このような状況を鑑みながら、チームパーシュートを見ると五輪でUSチームのライバルになりそうなチームが見えてきます。
私が東京でUSチームのライバルになりそうだと思ったチームはリオ五輪のチャンピオンで予選を0.6秒遅れの2位で上がったイギリスでも、3位のカナダでもありません。
4秒も遅れ予選7位に終わったドイツです。
 
理由はメンバーの3km IPの持ちタイムが良いからです。
WTでも活躍するリザ・ブラナウアーを筆頭にリザ・クライン、フランシスカ・ブラウザというメンバーがIPで2位、3位、4位に入って居ます。
しかもブラナウアーは2500mまでクロエに勝っていますし、クライン、ブラウザの二人はラストの1kmでクロエとの差を詰めています(写真)。
また彼女たちは予選のラスト1kmで先頭交代の失敗から崩壊するまではUSチームに0.27秒遅れの2位に居ました。
五輪までに大きくパワーアップするのはこのレベルでは難しくとも、戦術を修正することで大幅にタイムを上げてくる可能性は充分あります。
それだけに完璧な走りをしたチームよりも、ドイツのよう各自の持ちタイムが速く大幅なタイムアップの可能性を残しているチームの方が怖いと言えます。
 
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持ちタイムが速いことはそれだけレースで強い選手になれるポテンシャルが高いということです。もしトラックに入れるのであれば200m、1km、4kmは測っておく価値があります。
トラック選手でなくともトップ選手の多くはトレーニングコースの中でタイムアタックする場所を決めています。
パワートレーニングの観点から言うと 5秒、1分、5分、20分のタイムアタックが出来る場所が設定できれば完璧です。
そこでパワーと共にタイムを測っておくと(5分程度の坂のタイムもしくは5分でどこまで進めるかで測定)、自身の強化の進捗をみることが出来ます。
そのタイムをSTRAVAなどにアップロードしておいて、ライバルよりも持ちタイムが良ければレースで勝てる可能性は高くなります。
またもし自分の方が大幅に持ちタイムが良いにも関わらず、常に負けてしまう場合は戦術や足を貯める技術に問題があることが分かり、強化の方向性を考えることも出来ます。
皆様も是非一度「持ちタイム」という意識を持ってトレーニングして頂ければと思います。
写真はWCブリスベンでのTPと世界選出走前のドイツチーム
 
中田尚志