5月頃ハンターの元に一通のメールが届いた。
「セルビアチームを助けてくれないか?」
差出人は現役時代にアメリカで走り、現在はセルビアチームの監督をしているラディーシャからだった。
セルビアチームはリッチモンド世界選開催中に現地で宿泊を提供してくれる人やトレーニングコース案内、予備機材の手配をしてくれるボランティアを探していた。
PCGコーチのジェームズ・シェーファーは自身の家を宿泊先として提供し、元プロのジョン・ハンブレンはソワニャー兼メカとしてクルマの手配からトレーニングコースの設定までを請け負った。
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こうして出来た即席セルビアチームからエリートのレースに出たのはイヴァン・ステヴィッチ。
アメリカで活動したこともある彼にとってこの世界選はプロ生活の集大成。
「俺にとって6時間のレースは長過ぎる。でも出来る限りのことをやるよ」
地元バージニア出身のベン・キングと逃げるイヴァン
スタート前こう話していたイヴァンは、地元リッチモンド出身のベン・キング(現在ディメンションデータ)が逃げることを察知しマーク。見事に逃げに乗り4時間以上も逃げ続けた。
それはレース前に話していた「出来る限りのことをやる」という言葉の証明だった。
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スタート前にジェームスの家族と記念撮影
彼のアメリカ時代の知り合いは大喜び。もちろん我々即席セルビアチームは皆彼を尊敬し誇りに思った。
現在彼は引退し、地元で若手の指導をしている。
彼が育てた選手が、将来世界選手権で活躍したら嬉しいし、彼と同じファイティングスピリットを持って競技なり人生なりを過ごしていければ素晴らしいと思う。
中田尚志
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セルビアチーム帯同記はチクリッシモNo.50 2016年4月号に掲載しています。
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photo by Tommy Cheng, Takashi Nakata