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さぁパワートレーニングを始めよう! Part5 FTP計測編②

前回ご紹介したFTPテストはトレーニング強度を決める大切なものです。

ここでテストの方法について補足説明させて頂きます。


(1)ロードについて
①コース選びについて
事故を避けるのはもちろん、クルマや人とすれ違う為にパワーを抜かなければならないような場所はテストに不向きです。出来るだけ人や車が通る可能性の低い場所を選びましょう。

②環境について
同じ手順でテストを行っても、計測する環境によって多少FTP値に差が出ます。個人差はありますが、おおむね 登り>平坦>ローラーの順で登りが一番値は高くなります。これにはペダル1回転の間に負荷がかかる時間や動員される筋肉、気温などが影響しています。繰り返し同じ環境でテスト出来る場所を選びましょう。







(2)体調・集中力について
既にテストを行ったことのある方なら経験があるかと思いますが、テスト後に必ず「あと数ワットは行けた。」と思うものです。

限界まで追い込めるように数日前から体調を整えベストスコアを叩き出しましょう!

また繰り返しになりますが、集中力を高める為にもロード選びは慎重に。
人・車以外にも、あまり自転車が多い所もお勧めしません。
限界までプッシュしている時に、他のライダーに悠然と追い抜かれたら集中力が切れてしまいます。
また自分が追い越す場合でも、後ろにつかれると思わずペースが乱されてしまうものです。静かに集中できるところが一番です。チームで計測を行う場合は時差発走が良いでしょう。

また計測中はヘッドユニットに気を取られず、しっかりと前を向いて走りに集中しましょう。人が来ないはずのロードでも、動物が横切る可能性だってあります!(事実、アメリカではよく鹿やウサギ、時にはクマが道を横断します。日本でも可能性はあるでしょう。)











(3)ペダリングについて
「最も美しいペダリングが最もパワーの出るペダリングです。」
スムーズで美しいペダリングは、効率が良く高出力を維持できるものです。
パワーを高く表示させるため、力んだり、ギクシャクと踏み込むペダリングをすれば一瞬表示は高く出ますが、決して長続きしません。特にパワーメーター初心者は意識してスムーズなペダリングを行ってください。

(4)記録単位について
必ず記録単位は1秒ごとにして下さい。これは今後トレーニングデータを収集する時も同じです。1秒を超える単位でのデータ収集は解析には不向きです。

(5)ヘッドユニットの画面設定について
画面設定を変更できる場合は、やる気をかき立てられるように、デザインしてみましょう。ここではGarminEDGE510(英語版)を例にとってご説明します。

(クリックすると拡大されます。)

画面設定の目的…ひとつの画面に必要な全ての情報を表示させ、テスト中はヘッドユニットを操作する必要が無いようにします。
重要な情報を見やすい位置に配置し、走りに集中できるようにします。


・現在のパワーをトップに置き、その下に平均パワーを表示し対比できるようにします。


・30秒の平均 30秒の平均を表示させ現在の傾向(過去30秒平均パワーを上げているのか下げているのか?)を確認できるようにします。


・ラップタイム 残り時間が分かるように表示させます。


・ハートレート 心拍数をタコメーターとして使う為に表示させます。


・ケイデンス リズムを一定に保つために表示させます。


・ハートレートやケイデンスをNP(ノーマライズドパワー)、距離、スピードなどに置き換えるのも有効です。自分なりにデザインしてみましょう。

(6)キャリブレーション(校正)の手順について
ここでもGarmin EDGE 510(英語版)とパワータップG3を例にとってご説明します。他のヘッドユニットも概ね方法は同じです。各メーカーの手順に沿って行いましょう。

・ホイールを回転させパワーメーターを起動する。


・無負荷の状態にする。(ペダルに足を載せないで壁などに立て掛ける。)

・ヘッドユニット(今回はEDGE510)を起動する。



・画面中央を押してメニューバーを表示させツールアイコンを押す。


 ・Bike Profilesを選択する。




















・使用しているBikeを選択する。




















・パワーメーターのアイコンを押す。






















・Calibrateを押す。




















・Calibrateを押す。






















・完了!


















(7)測定する場所がない場合
計測する場所が確保できない場合は、下記の方法を試します。
またテスト環境がある場合でも、下記のデータと見比べてFTP値の精度を確かめるのも良い方法です。テストの回数が多いほど、またデータは多ければ多いほど精度はあがります。

FTPテスト代替案
・長いTT(40km程度)のパワーデータ
・60分のクリテリム・ロード・TTなどレースデータのNP(ノーマライズドパワー)

・2 x 20分の限界走の平均値
・30分のTT(練習)

・パワー分析
・20分のTTの91% (事前の5分走を行わない。)

(8)どれを採用すればよいの?
前回ご紹介したハンター・アレンのFTPテストと上記6つのテストの結果は、近いものの完全には一致しません。また20分テストで3%を除くか5%を除くのかも悩ましい所です。
あるFTPテストの結果は300wであり、あるテストの結果は290wかもしれません。では一体どれが正解で、どの数値を採用すれば良いのでしょうか?
答えは全て正解です。どれを採用しても良いのです。

FTP=1時間の最大平均パワー

これが唯一のFTPの定義です。その他の方法は、このFTPを類推する為の手段です。ですから複数のテストを試し、1時間の全力疾走の平均値に一番近くなる方法を採用すれば良いのです。
FTPは日々の体調によって変わります。ですからテストでは1wattでも数値を上げるように努力することが大切ですが、日々のトレーニングはゾーンで把握する事も必要です。

ある時は1wattでも出力を上げる努力を。そしてある時は大まかなゾーンでワット管理を行うフレキシブルさが必要なのです。

「数値に操られるのではなく、操ろう!」これがパワートレーニングの基本です。

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ではロードでお会いましょう!

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ハンター・アレン…全米自転車競技連盟Level1認証コーチ。元プロ・ロード選手。1995年よりあらゆる種目のコーチングを手掛け世界チャンピオン、全米チャンピオンを始め1,000以上の勝利に貢献している。全米自転車競技連盟パワートレーニング講座の講師。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)他、著書多数。

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さぁパワートレーニングを始めよう!Part4 FTP計測編①

さていよいよFTPの計測です。

FTP=1時間の最大平均パワー。 ということをご紹介しましたが、だからと言って毎回テストで1時間全力疾走する必要はありません。
計測は精神的・肉体的負荷を考慮し、20分のテストを行います。20分であれば普段のスケジュールにも取り込みやすいですし、定期的に測ることも簡単です。


FTPの計測に必要な物は下記の4点です。
(1)機材
信頼性の高いパワーメーターとヘッドユニット&データをダウンロードするソフトウエア。
(2)ロード
20分以上、車や人が来ない登りもしくは平坦。下りは含まない方が良い。
日本の場合、勾配が一定な峠の登りがよいでしょう。
近くにない場合はローラーか信号や交差点がない周回コースなどで代用します。
(3)良い体調
今後のパワーゾーンを設定する大切なテストです。レースと同じように体調を整えて挑みましょう。
(4)集中力
繰り返しになりますが、レースと同じ集中力が必要です。痛みに耐え限界まで自分をプッシュするには集中力が必要です。

・パワーメーターによっては気温の変化が精度に大きく影響するものもあります。なるべく気温の変化が少ない日を選ぶ方が無難です。

パワーメーター

テストの準備は整いましたか?
ではスタート!っと言う前にもう一点!走行前に必ずキャリブレーション(校正)を行ってください。これを行わないとせっかくのテストデータはゴミ箱行きになってしまいます。
キャリブレーションの方法については次回詳しくご説明します。

さぁいよいよスタートです!

下記の手順にならってテストを行ってみましょう。
 

FTPテストの例
WU: 10-20 分 エンデュランスゾーンで。 3 x 1分のファーストペダル(高回転走)を入れて足を目覚めさせよう。
——-
MS1: 5分全開。この5分は限界で行うこと。スタートしてすぐにスピードに乗せる。しかしゴール前に失速してしまうほどには上げないこと。ゴールまでしっかりとキープできるペースをつかむことが重要。
最後の45秒は、限界まで追い込むこと。
この5分間の目的は 1.VO2Max領域の能力を測ること 2.続くFTPテストに向けて予備疲労させておくこと。それによりFTPテストの精度が上がる。

終了したらZ2エンデュランスレベルに戻し15分回復させてからMS2に進もう。
——-
MS2: 20分のタイムトライアル

TEST!

スタートして20分間限界を維持する。静かにスタートし最初に飛ばし過ぎないこと! ペースに乗せるまで2分ほどかける。終盤は限界まで追い込む。
終了したら10分間イージースピニングを行って回復。

帰ったらデータをダウンロードしてチェックしよう。
20分のアベレージパワーから3-5%除いた値があなたのFTP値です。
——-
CD: 10-15 分のイージースピニング

お疲れ様でした!良い走りは出来ましたか?

もしMS1の5分走の疲労があまりにも大きくMS2でパワーを維持できなかったのなら、次回は5分走を今回出したFTPの110%程度で行ってみましょう。

今回出した20分の平均パワーを下記の表に当てはめて自分だけのパワートレーニングチャートを作りましょう。

このテストは数か月に1回行い、現在の調子を確認すると共に最適なパワーゾーンを適宜見直して行きましょう。

パワートレーニングチャート

—————————————————————————————————

パワー・トレーニング・ゾーン計算ツール Powered by じてトレ

(テスト結果から3-5%除いた値を入力して下さい。)

FTP W  

レベル %:FTP比 パワー(W)
L1 回復走 ~55% W
L2 耐久走 56~75% W
L3 テンポ走 76~90% W
SST・スイートスポット 88~94% W
L4 LT(乳酸閾値) 91~105% W
L5 VO2max 106~120% W
L6 無酸素運動容量 121~150% W
L7 神経筋パワー  

協力:じてトレ  http://www.jitetore.jp/

—————————————————————————————————
ダウンロードはコチラ

https://files.secureserver.net/0seLpJPsQbFPXW

尚、Anaerobic capacityをじてトレでは無酸素運動容量、PCGではアネロビック(AC無酸素性運動)と表してしますが、内容は同じです。混乱を避けるために今後用語は統一して行く予定です。

次回はテストについての詳しいガイドラインをご紹介します。


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ハンター・アレン…全米自転車競技連盟Level1認証コーチ。元プロ・ロード選手。1995年よりあらゆる種目のコーチングを手掛け世界チャンピオン、全米チャンピオンを始め1,000以上の勝利に貢献している。全米自転車競技連盟パワートレーニング講座の講師。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)他、著書多数。

 

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さぁパワートレーニングを始めよう!Part3 理論編③

さぁパワートレーニングを始めよう!Part3はパワートレーニングによるトレーニングの効率化と精神的アドバンテージ、そしてデメリットについてです。

(5)効率的にトレーニングが出来る。
自転車に夢中になり、乗れば乗るほど強くなる時期(1-2年)が過ぎ、レースでも頭打ちになる時期は必ず訪れます。その時、選手がハマりやすい落とし穴は「もっとたくさん乗ればもっと強くなる。」症候群です。
しかし一定期間乗り込み、持久的運動を行う心肺機能・筋持久力の基礎が出来たら(これをエアロビックベースと言います。)、次に行うべき強化はエアロビックパワーを上げる事です。言い換えれば、もっと遠くに行ける能力ではなく、もっと速く走れる能力を強化すべきなのです。
パワーメーターがあれば、レースで必要な能力を的確に知りその強化を行う事が出来ます。

(6)精神的負荷が減らせる。

Ian Boswell

間違えてはいけないのは効率的なトレーニング=楽なトレーニングではない!という事です。
自分の弱点を把握しそこを責めるのは、精神的にも肉体的にもキツい作業です。しかしパワーメーターをある時は“手綱”として使い、ある時は“ニンジン”として使うことで精神的負荷を減らすことが出来ます。
たとえばコーチに「死ぬ気で頂上まで走れ!」と言われて無我夢中で走るのと「AVG300wを頂上まで維持してみよう!ベストタイムが更新できるはずだ。」と言われるのでは同じ努力であっても、精神的負荷は随分違います。

選手は常に自分のコンディションがどこにあるのか?自分のトレーニングが上手く行っているのか?次のレースでどの辺まで行けるのか?など常に多くの「?」を抱えながら戦っています。

しかし、パワートレーニングで進捗状況をつねに振り返ることで、正確に自分の位置を知る事ができ精神的な安心感を得ることが出来ます。

(7)パワーメーターを使うデメリット

パワーデータは財産です。

・初期投資が必要 
パワートレーニングを始めるのにパワーメーター + ヘッドユニット + PCは必ず必要です。PCは既にお持ちだとしても最低10~15万円の投資は必要です。誰にとっても10~15万円の投資は大きな金額です。
しかし、パワーメーターを使う事により、1年後には今よりずっと強く、健康になれると考えると投資の価値は充分あります。また記録される日々のデーターは今後の競技活動に価格では表せない価値を生む財産と言えます。

・使い方が難しい 
機械が苦手な方にはヘッドユニットの使い方やデータダウンロードが、やや難解かもしれません。しかし、最近の機器はよく考えられており一旦慣れてしまえば直観的に操作が出来るようになると思います。

・解析が難しい 
パワートレーニングに関する知識がないと、解析が難しいのは事実です。また中途半端な知識で解析すると自分自身で自分をミスリード(mislead誤った方向に導く事)してしまう可能性があります。しかし基礎的な知識を身に着ければ簡単な解析はどなたでも出来るようになります。

・修理が難しい 
パワーメーターはバイクパーツの中でも複雑な部類に入ります。壊れたら自分で修理するのは、ほぼ不可能です。海外通販などで購入すると、国内でメンテナンスが受けれない事もありますのでお近くのプロショップで購入された方が無難です。

・時に残酷である。 
パワーをダイレクトに測るということは現実を突きつけられます。目標のパワーに全く達していなければ、「気合で何とかなる」レベルではない事がレース前に分かってしまいます

・設定の間違いが悲劇を生む 
自分の長所・弱点にフォーカスしトレーニングが行えるのはパワートレーニングの大きな利点です。
しかし、肝心のFTPの設定が間違っていたり、設定が合っていても処方するトレーニングがアンバランスであったりすると、「見当はずれのトレーニングにフォーカスする。」という悲劇を生みます。
①FTPトレーニングをしているつもりが設定値が低すぎてテンポ走になっていた。
②あまりにFTPにフォーカスした練習を行いスプリントの強化を怠った為、完走率は上がったが勝てないスプリンターが出来上がった。
などというのは、間違ったパワートレーニングが生む悲劇です。

随分と前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ次回は実際ロードに出てFTPを測定してみましょう!

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