日本でもパワートレーニングを始めたいという方が増えて来ました。
ただパワーメーターに興味はあるものの…
「専門用語が分からない。」
「FTPを上げたらレースに勝てるようになるの?」
などの疑問を持っている方が多いように思います。
そこで今回からシリーズで「パワーメーター活用法」を連載してみたいと思います。
パワートレーニング用語について(FTP, パワーゾーン, MMP, TSS, kJ)
パワートレーニングを始めるにあたって、知っておいて頂きたい用語がいくつかあります。これらを理解することによって、より簡単にパワートレーニングを実行出来るようになりますので、順番に覚えて行って頂ければと思います。
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・FTP … 1時間の全力疾走のAVGパワー
有酸素能力の上限レベルを測る指標。高いほど有酸素能力が高い。1時間のテストは肉体的・精神的負荷が高い為、通常20分テストの95~97%をFTPとみなす。
例:20分テストのAVG315w ⇒ 315w x (95~97%) = FTP 300~306w
FTPは有酸素能力の限界を測る指標になるだけでなく、パワーゾーン設定の基準になります。また後に登場するTSSやPMCをつくる元となります。
ちなみに「FTPが上がればレースに勝てるか?」ですが答えは「NO」です。
レースはFTPだけでなく、エンデュランス能力・VO2Max・スプリントなどの各パワーと回復力、更に脚質・戦術・チーム力などあらゆる要素が絡み合って結果が出ます。
FTPが上がれば勝つ可能性が上がるのは間違いないですが、それだけで結果を求めるべきではありません。極端にFTP強化だけに偏った強化をするのではなくレースで要求される能力をバランス良く強化すべきです。
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・パワーゾーン … FTPを基準に設定する7つの運動強度
パワートレーニングではアンディ・コガン博士が設定した7つのゾーンに分けて、トレーニングを行います。目標とするレースの種類、各個人の脚質に合わせて、フォーカスするパワーゾーンを把握するのが大切です。
ハンター・アレンの言葉を借りれば「トレーニング成功の秘訣は、パワーゾーンに割り当てる時間の最適化」です。
パワーゾーンチャートのダウンロードはコチラ
https://files.secureserver.net/0seLpJPsQbFPXW
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・MMP … 平均最大パワー (Mean Maximal Powerの略)
各時間単位(通常 5秒・1分・5分・20分)のMaxパワー。
通常パワーゾーンの スプリント、アネロビック、VO2Max、FTPに分けて計測します。
皆さんがトレーニングを行う中で「最近スプリントのかかりが良い」とか「丘は走れるけど、峠はダメ」といった会話を仲間内ですることがあると思います。
これはまさにMMPの話で「スプリントのかかりが良い」時に5秒のMMPを測ると高い数値が出るはずですし、「丘は良く、峠はダメ」な時は、VO2Maxは高くFTPは低いはずです。このようにMMPを各パワーゾーンごとに把握することで、自身のトレーニングの進捗具合をより詳細に把握することが出来ます。
左の図は2014年と2015年の冬のMMPを比較したものです。
2014年 … 破線
2015年 … 黄色実線
殆どの時間帯は前年と同レベルにありますが、20-60秒は大きく劣っていることが分かります。
ここから前年にならぶにはアネロビックレベルのトレーニングを増やす必要があることが分かります。
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・TSS … トレーニング ストレス スコア(Training Stress Scoreの略)
強度(インテンシティ)と量(ボリューム)を一元管理できる。
FTPを基準に体にかかったストレスを表す。FTPで1時間運動=100TSS
例えば100㎞を5時間かけて走ったとします。距離と時間はどちらも量(ボリューム)を表わしていて、強度を表すことは出来ません。
例えば山岳コースを100㎞5時間集中して走ったのと、サイクリングコースを100㎞5時間流したのでは距離と時間は同じでも強度は全く違います。
TSSであれば前者は例えば300TSS、後者は200TSSと強度を加味して表示されます。
例:5時間のトレーニングが300TSSだった。 ⇒ 1時間の全力疾走3本分の運動ストレスがかかった。
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・kJ(キロジュール) … 運動により消費したエネルギー量
パワートレーニングでは 1 Cal ≒ 1 J として計算します。
パワーメーターはライダーが生み出すパワーをダイレクトに測りますから、心拍などから推測するカロリー消費量よりも遥かに正確にエネルギー量を計測できます。
また時間に影響されない為、簡単に消費すべきカロリーを計算することが出来ます。
例えばダイエットを行う場合、脂肪を1kg落とすのに何時間走れば良いかを計算することは出来ません。強度が関係するからです。
しかし、kJであれば実際に産出したエネルギーですから簡単に計算する事が出来ます。
脂肪1kgのカロリーは約7,000kcalですから、自転車で7,000kJ消費すれば体重は1kg減る計算になります。
ここでおや?と思う方も居るかもしれません。本来エネルギーの法則によると 1 Cal = 4.184 J だからです。
1 Cal≒1Jとして扱う理由:
人の体は、産生カロリーに対し約4倍のエネルギーを消費します。(1Calエネルギー産出するのに、4Cal消費)。
例: 2時間のトレーニングで1,200kJ消費した。
1,200kJ≒300kcal
300kcal産出する為に体が消費したカロリーは 300 x 約4倍 =1,200kcal
その為、1,200kJ≒1,200kcalとして扱う。
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ここまでご紹介したFTP・パワーゾーン・MMP・TSS・kJ の5つが、まずは覚えて頂きたいトレーニング用語です。
パワートレーニングを行っていない方には専門的で難解だったかもしれませんが、トレーニングを行うと、非常に実用的で便利なことが分かって頂けると思います。
補足
パワーメーターの登場により自転車を漕ぐパワーと消費エネルギーはダイレクトに測れるようになりました。全てのスポーツでリアルタイムにこれらの計測が出来るのはサイクリングだけです。
エンデュランス スポーツの中でも頭抜けて競技時間が長い為、トレーニングの研究が難しかったサイクリングが一気にスポーツサイエンスの最先端に躍り出たのはパワーメーター登場の恩恵です。
次回は更に深くパワートレーニングを行う為の用語解説を行いたいと思います。
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パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了