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佐藤信哉選手( VC FUKUOKA ) マスターズ優勝!!

(c) VC福岡提供(Kensaku SAKAI)

 

コーチングさせて頂いている佐藤信哉選手(VC Fukuoka)が昨日行われた JBCF 西日本ロード・マスターズの部で優勝されました。

(1)マスターズの強化

43才の佐藤選手は素晴らしい安定度で、今年参加したほぼ全てのレースでトップ10に入っています。

マスターズのトレーニングというと「老化を食い止める」という印象が強いかもしれませんが、実はマスターズは強化が行いやすいカテゴリーです。

若い選手と走ってスピードを高めることも出来ますし、今回のように初日はE12日目はマスターズと1レースで2回出走出来るのもマスターズの強化を促進してくれます。

佐藤選手の今シーズンの成績

レース カテゴリー 順位
はりちゅう Day1 E1  6位
はりちゅう Day2 E1 5位
東日本ロードDay1 E1 2位
東日本ロード Day2 E1 2位
群馬CSCロード P/E1 20位
HSR九州サイクルロードレース2021 1 チャンピオン 3
西日本ロード             E1  4位
西日本ロード M 優勝!!

(2)マスターズで勝つには?

マスターズのレースで勝つには2つのアプローチがあります。

1.自身の得意分野を徹底的に突き詰める

マスターズの年齢になると総合的な強さを強化するのは難しくなります。

しかし、スプリントが得意な選手はスプリント、クライマーは登り、長距離が得意な選手は長距離と得意分野にフォーカスを絞り伸ばして行くのはマスターズになっても案外難しくありません。

色々な可能性を見つけ伸ばすために若い時はある程度総合的な強化をすべきですが、マスターズの年齢になり自身の得意分野が分かってきたら、そこにフォーカスし突き詰めたほうが勝率は上がります。

2.総合的な強化をする

マスターズのレースは多いわけではないので、レースが行われる全てのコースに対応できるように総合的な強化をしておいた方が勝率が上がります。

マスターズになれば多くのレースは2時間以内。 

若い頃は1hのクリテから6hのロードレースに対応出来ることを求められたかもしれませんが、マスターズの年齢になれば2時間以内のレースに対応できる能力を徹底的に磨けば勝機はあります。

1.と相反するように見えますが、強化のフォーカスを絞るという意味でアプローチは共通です。

(3)マスターズのシーズンのデザイン

上記のアプローチ方法を決定したら、レース参戦予定を考慮にいれてPMC(パフォーマンス・マネージメント・チャート)のデザインを決めていきます。

仕事・家庭・トレーニング&レースを高度にマネージメントすることがマスターズでは必要になってきます。

もし一年の中で大きなレースに参戦するのがニセコとオキナワの2回だけだとしたら、CTL(42日間のTSSの平均→フィットネスレベルを表す)は2つのレース前に上げるようなデザインにすれば良いでしょう。

佐藤選手のように毎月レースがあるJBCFを中心に参戦するのであれば、3月から10月までCTLはシーズン中ある程度一定に保って大きな変動が無いようにします。

フィットネスレベルを上げるには体力を消耗します。来たるべきレースに向けてあまりにCTLを乱高下させると返って消耗してしまいますからCTLを一定に保つわけです。

ただ高いフィットネスレベルを維持するのもまた体力が要ります。そのためにあまりに疲労するようなビッグライド(例: TSS300以上)や3日以上高いTSSを稼ぐようなライドは避け、TSB(CTL-ATL=TSB→調子や疲労度を表す)を下げすぎないようにします。トレーニングは継続して行いつつ疲労は溜めないようにコントロールするわけです。

 

(4)マスターズのパワー

年齢的に落ちやすいのはVO2MaxFTP

練習量が減ると落ちやすい領域でもあります。マスターズの年齢になると体力的にも時間的にもビッグライドを繰り返すのは難しくなりますから、ポイントを絞ってFTPならFTPインターバル、VO2MaxならVO2Maxとフォーカスを絞ったほうが、余分な体力を消耗せずに強化が行なえます。フォーカスを絞れば年齢を重ねてもVO2MaxやFTPを上げていくことが出来ます。

上記のように回復時間を確保する為にいたずらに長距離トレーニングに出かけることがないようにするのも重要なポイントです。

鍛えたいパワーゾーンにフォーカスを絞ることがトレーニング効果を高めます。

 

(5)マスターズのパワーを上げるために

体感的に感じている方も多いと思いますが、年齢を重ねると疲労が抜けにくくなります。睡眠不足や移動で受ける影響も大きくなります。また体は硬くなり故障も増えます。

さらには動体視力が落ち、平衡感覚が鈍くなること。体が硬いことが重なって落車のダメージは大きくなりがちです。筋量が落ちやすいのも特徴です。

コンスタントにトレーニングを重ねるためには、落車に注意し、体のケアもより入念に行う必要があります。

トレーニング前後のケアを行い、早寝早起きを心がけ、節制した生活をして、安全なトレーニングコースを選ぶ。周到な準備と日常生活を整えることがトレーニング成功のカギになります。

 

(6)トレーニングは楽しく

上述のように多くのマスターズ選手は仕事・家庭・レースを高次元でジャグリングする必要があります。あまりに追い詰めてレースがストレスになってはどこかに破綻を来します。

レース会場では若い選手の成長を喜び、マスターズのお互いの健闘を称え合えるようなメンバーと過ごせれば楽しくレース活動をすることが出来るでしょう。そのような環境に身を置ければ、ずっと自転車が好きでいられるし、自転車が毎日の生活でこれ以上ないストレス解消法になります。

健康でハッピーなライダーで居ることが、パフォーマンスアップにつながると思います。

 

 
 
 
 
 
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レース後にライバルと健闘を称え合う事が出来るのもマスターズの魅力

 

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中田尚志

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プロ自転車選手にブルーマンデーはある? クリス・ホーナー

バイシクルクラブのWeb版 Funqに「プロ選手ブルマンデーはあるの?」を掲載頂きました。

クリス・ホーナーは、インタビューのあいだ、常に朗らかで話しやすい印象でした。

コミュニケーション能力に長けていて、いかにも多国籍のチームでも上手くやっていけそうな人柄だと感じました。プロというのは足が強ければそれで良いというものではありません。チームメートと協力関係を築き共通のゴールに向けて”一緒に仕事をする”能力が問われます。

そのような中で、仕えたくなる上司もいれば、そうでない人もいる。やりやすい同僚も居ればそうでない人もいる。何のストレスもなく自転車に乗っておけば良いというのは幻想で、一般社会人と同じ常識やストレスマネージメント力が必要なのだと感じさせられるホーナーの言葉でした。

Peaks Coaching Group – Japan

中田尚志

 

 

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夢を見続ける 33才でツール初出場を遂げたクリス・ホーナー

2013年ヴェルタ・ア・エスパーニャで総合優勝したクリス・ホーナーにインタビューすることが出来ましたので少しずつシェアしていきたいと思います。

33歳という異例の遅さでツール・ド・フランスに初出場したクリス・ホーナー。

そこに至るまでの道のりから、海を越えてヨーロッパで活動する選手の苦労を知ることが出来ます。

(1)ツール出場の夢

ホーナーはアメリカ国内のステージレース、’96年ツアー・オブ・デュポンのステージ優勝がきっかけでヨーロッパのチームと契約しました。

アトランタ五輪の為にアメリカ入りしていたフランス人・アラン・ギャロパンの目に留まり、フランセージュ・デジュ(現FDJ)入り出来たのです。

それまでの給料は月に3万円。「今週末のレースで賞金を取らなければ、来週から仕事を探さないといけない。そんなことが自分のキャリアの中では何度もあった」

アメリカではチームのサラリーだけで生計を立てるのは難しい為、賞金をあてにする不安定な生活が続いたといいます。

晴れてプロになりフランスでの生活を始めるも彼はすぐにホームシックになってしまいます。カリフォルニア育ちの彼にとってパリの冬は寒すぎたし、まだインターネットもスマートフォンもない当時は物理的距離と共に精神的な距離が遠い時代でした。

外国暮らしのストレスから成績は伸び悩み、”悲惨だった”というフランセージュ・デジュでの生活ですが、それでも彼は少年時代からの夢だったツール出場のチャンスを掴みます。

チームの選考レース、ミディ・リブレ最終日の朝、監督から「クリス。君はツールのメンバーに選ばれた。」と告げられます。しかし夢が叶ったと思ったのも束の間、最終ステージで落車し手首を骨折。ツール出場の夢はあえなく消えてしまいました。

(2)2度目のチャンス

フランセーズ・デジュを退団後、’00-01年はアメリカ国籍のマーキュリーに移籍。アメリカに住みつつヨーロッパ遠征に行けるこのチームはホーナーにとって新天地になるはずでした。

チームはFICPランキング6位に位置している為にツールの出場権を持っていました。ここで彼にとって2度目のツール出場のチャンスが訪れました。しかしツール・オーガナイザーのASOはフランスチームを優先し、マーキュリーの出場を却下。ツールを最大の目標にしていたチームはこの出来事が原因でシーズン途中で解散。ここでもホーナーのツール出場のチャンスは露と消えました。

Chris HORNER leader overall winner.(c) Chris Horner

 

(3)3度目のチャンス

マーキュリー解散後はアジアや国内のレースを主に活動するアメリカ国内のプロ/アマチームに在籍し、多くのレースに勝利します。ヨーロッパ行きの夢は持ち続けてはいましたが、チームの規模から断念せざるをえなかったと言います。

2004年ヴェローナで行われた世界選手権。その年一度もヨーロッパで走るチャンスがなかったにも関わらず8位入賞を成し遂げます。ここでスペインのプロチーム、サニュエ・デュバルと仮契約。テスト生として走ったジロ・デ・ロンバルディアで11位に入り正式にオファーを受けます。

国内チームから多額のオファーがあったにも関わらず、ツール出場の夢を叶えるためにサニュエ・デュバルと最低年俸で契約。アメリカの家の家賃を前払いしたあと所持金は殆ど残っておらず、ヨーロッパの空港に着いた時は1万4000円しか財布に入って居なかったそうです。

Embed from Getty Images

優勝したオスカー・フレイレの後ろに星条旗を着たホーナーが見える

 

(4)骨折

’05年シーズンにチームから渡されたレースプログラムはツールでは無くジロ出場。ホーナーはジロでステージ優勝しツールのメンバーに選ばれることを目論みます。

しかし、ジロ前のレースで落車骨折。ステージ優勝どころかジロへの出場も叶いませんでした。そこで次に考えたのが全米選手権優勝。チームはスコット社のバイクに乗っていたので、ここで勝てばメーカーとして星条旗のジャージを推してくれると考えたわけです。しかし結果は3位。

それでもホーナーはツール出場の夢を諦めきれずツール前最後のビッグレース、ツール・ド・スイスでの活躍に賭けます。

 

(5)ツール・ド・スイスでの成功

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スイスの時点でチームは既にツールのメンバー選考を終えており、ステージ終了ごとに「ツールに出たい」と頼んでも監督の答えは毎回ノー。「 メンバーはもう決まっている」。

そこで監督の考えを覆すには総合上位に入るかステージ優勝するかしかないと彼は考えます。

ホーナーは最後の望みをかけて走り続け、第6ステージで遂にステージ優勝を飾ります。

レース後、監督の元を訪ねると「OK. 君はツールに行ける」と告げられツール初出場が決まりました。

 

(6)夢のツールへ

 

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こうしてクリス・ホーナーは33才にしてツール初出場の夢を叶えました。

「例えば飛行機に乗った時に隣の乗客と話すとする。仕事はプロの自転車選手だよって話したら、たいてい次の質問はこうだ。”ツール・ド・フランスには出たことがあるの?”多くのレースに勝ち、30歳を超えていた僕のキャリアに足りないのはツール出場だけだった。」

初めてのツールは、人の壁をくぐり、シフトチェンジの音さえ聞こえないほどの歓声の中を走れたと言います。

「その年は逃げに乗ったり、グルペットに入ったりして、色々な角度からツールを楽しむことが出来た。遂に僕は33歳でツール・ド・フランスに出たんだよ!」

 

大変な苦労をしてツール出場の夢を叶えたホーナーですが、彼と話していると、”執念のツール出場”といった言葉は相応しくないと感じます。

どちらかというと何歳になっても夢を見続けた結果で、そこに悲壮感は感じられません。

ラストチャンスというのは自分が勝手に決めた限界で、失敗しても「また別の方法でチャレンジすればいい。」と再チャレンジする精神が彼をツールに導いたのだと思います。

夢を追い続けたホーナーのストーリーから我々が学ぶことは沢山あると思います。

Peaks Coaching Group Japan
中田尚志

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クリスホーナーのYoutube チャンネル ”バタフライ・エフェクト”

動画前半でスイスでチャンスを掴みツールのスポットを得たことを話しています。