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ツール・ド・フランドルとパリ・ルーベのパワーデータについて

先週のツール・ド・フランドルは期待に違わぬ熱いレースが繰り広げられ、今週末のパリ・ルーベが待ちきれない方も多いのではないでしょうか?

今回はハンターが以前行ったパワー解析をもとにこれら2大クラシックに要求されるパワーについてご紹介したいと思います。

どちらも約260㎞を6時間で走破するレースで石畳がキーポイントですが、急坂のフランドル、平坦なパリ・ルーベでは要求されるパワーは少し違います。


2011年この2つのレースを走ったジョージ・ヒンカピー(当時BMC)のパワーデータを見て行きましょう。

データをざっと見るだけでも、いかに厳しいレースかが伝わってきます。
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フランドル / パリ・ルーベ
・レースタイム・・・6h00min / 6h12min
・距離・・・256km / 258km
・順位・・・ 6位 / 42位
・消費エネルギー・・・6,100 / 6,229kj (500mlコーラ約27本分!)
・TSS・・・353 / 319 (1時間の個人TTを3~3.5回連続で走るのと同じストレス)
・ノーマライズド パワー・・・NP342w / 323w (6時間!)

用語解説
TSS(トレーニング ストレス スコア)…1時間のFTP走を100として表わす。
NP(ノーマライズドパワー)…変動なく一定ペースで走ったと仮定した場合のパワー
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そしてこれらは厳しい石畳の上で激しい位置取り争いをしながら記録されたものだということを忘れてはいけません。
1時間のTTを滑らかな舗装路の上で行うだけでも大きなダメージがありますが、それらを石畳の上で3回連続で行うと考えるとどれだけ激しいかがご想像頂けると思います。

この2つのレースは近年ではトム・ボーネン、ファビアン・カンチェラーラなどが両方の優勝者リストに名前を連ねていますが要求されるパワーは、それぞれ少し異なります。

・ツール・ド・フランドル
フランドルは序盤は割と穏やかなペースで、ジョージ・ヒンカピーにとってはアクティブリカバリー(Power Z1, HR Z1, RPE <2)レベル)で進みます。この時間のNPは272w(60% of FTP)

3時間を超えてからは”ベルグ”の連続が始まり一気に強度は上がります。
ここで選手は毎回15秒~2分間、FTPの120%を超えるアネロビック キャパシティ(Power Z6 121-150%, HR Z6, RPE >7)の高さと回復力を試されます。

15~60秒の坂は40回、1~2分の坂は20回を数え、それはさながら石畳の上でポジション争いしながら行うインターバルトレーニングのようです。この時間のNPは一気に上がり404w(90% of FTP)/hに達します。

フランドルで勝つためには、前半は石畳の上でも体力を温存しながら勝負に備えれるハンドリングスキル・エアロビックエンジン、そして後半は繰り返されるアネロビックインターバルをこなす反復能力、ホンの少しの下り区間(5-30秒)で体力を回復させる技術、勝負所で一気にアネロビックパワーを爆発させる集中力が要求されます。

2011 フランドル 全体
2011 フランドル後半





































・パリ・ルーベ
一方、パリ・ルーベはフランドルよりもコースは平坦です。それは決してラクなわけではなく足を止めて休める時間がフランドルより短くなることを意味します。
また最もハードな1時間のNPは353w(78% of FTP)/hとフランドルより50wも低いですが、これはフランドルより前半からペースが速いことが影響しています。

パリ・ルーベの石畳は重要区間のカルフール・ド・ラルブルで3分30秒、最も長い区間で5分を超えます。
石畳に入る前の位置取りでスピードは上がり、石畳に入れば粗い路面をこなす為にパワーが要求されます。更には石畳を出ればポジションを取り戻すために休む間もなく再加速。フランドルは急坂を繋ぐ緩急の激しいインターバルですが、パリ・ルーベは高速巡航する中で、さらに2分~5分の高強度を強いられるクリスクロスのような状態です。

パリ・ルーベをパワーで表すとアネロビック/VO2MaxをFTP付近で繋ぐインターバルと言えます。

パリ・ルーベでは、6時間の長きにわたって高いパワーを維持する能力、石畳区間を抜けダメージを受けた足を高い運動強度の中でも回復させる能力(AC/FTP)が要求されます。そして勝つためには、爆発的パワーを出したアタックの後、すぐに巡航に移れる回復力と耐久力が必要です。

2011 パリ・ルーベ

・二つのレースの共通点

二つのレースに共通するのは、高いアネロビック能力。
フランドルの急坂を登る時、フランス郊外の石畳を走り抜ける時、選手たちはFTPの120%を超える強度を何度も何度も繰り返しながら、勝負に挑んでいると言えます。図中右側がアネロビック領域ですが6位に入ったヒンカピーでさえ6時間のレース中、40分間もこの強度に入っています。

プロロード選手として最後のレースにパリ・ルーベを選んだskyのブラッドリー・ウィギンスは、コーチのティム・ケリソンと共に全ての石畳のタイムを測り、冬の間石畳の長さに合わせたアネロビック/VO2Maxのインターバルをこなしたと言われています。

石畳をこなす選手たちがどんなパワーを要求されながら走っているのかを想像しながら観戦するのも面白いのではないでしょうか。

今週の日曜日が楽しみですね!

二つのクラシックのパワーデータを元にハンター・アレンが考案したトレーニング

ヒルリピート
WU: 15分 エンデュランス(Power Z2 56-75%, HR Z2, RPE 2-3)。
——
クラシックを想定し丘や風に向かってトレーニングを行おう!
MS1: ヒルリピート 20本
30秒ー2分の丘を繰り返し登ろう。
レスト:2-3分
地形:丘もしくは向かい風

同じ丘をリピートする必要はない(もし行いたかったら、もちろんOK。)。
どの坂もアネロビックキャパシティ(Power Z6 121-150%, HR Z6, RPE >7)レベルで。
FTPの150%以上を目指そう!(FTP300wなら、AVG>450w!)
頂上付近では足が焼けつくような感覚が得られるはずだ。
——–
CD: 15分 イージーで。

アネロビック・リピート
WU:20分 
———
MS1:アネロビックキャパシティ(Power Z6 121-150%, HR Z6, RPE >7)
6 x 2分
レスト:1分
地形:丘もしくは向かい風

FTPの135%以上を目指そう!(FTP300wなら、>AVG405w!)
今回はヒルリピートよりもレストを短く。

5分イージー
———
MS2:アネロビックキャパシティ
6 x 1分
レスト:1分
FTPの150%以上を目指そう!(FTP300wなら、>AVG450w!)

5分イージー
———
MS3:アネロビックキャパシティ
6 x 30秒
レスト:1分
オールアウトで!!
——–
CD:15分イージー

家に帰ったらデータをダウンロードして確認しよう。
TSS100は誰にとっても、FTP1時間分のストレス。
6時間のトレーニングでジョージのTSS350は超えれただろうか?
グッド・ラック!!

参考
Training Peaks Blog
Power Numbers From The Spring Classics  Hunter Allen

中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了


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シーズンオフのトレーニングについて part2

前回のブログではシーズンを振り返り来シーズンへの道筋をつける方法をご紹介しました。

今回は実際に冬のトレーニングで何をすべきかを順番にご紹介したいと思います。
冬のトレーニングのフォーカス 4点
(1)FTPの向上
(2)筋力アップ
(3)弱点強化
(4)休養

(1)FTPの向上
一昔前までは、冬のトレーニングと言えばLSD(Long Slow Distance)でした。
エンデュランス(Power Z2 56-75% of FTP)に集中し、じっくり走り込む事で筋持久力・ミトコンドリアの増加を図るという理論です。
この考えは今でも生きていますが、冬の間LSDのみを行うのではなく、テンポ(Power Z3 76-90%)、FTP(Power Z4 91-105%)をメインに走り込む方が短時間で効率良く、よりレースに即した持久力(エアロビックベース)を鍛える事が出来るのが分かっています。

また選手が1年に走れる時間と言うのはある程度決まっていますから、いたずらに多く距離をこなす事なくエアロビックベースを構築できる方が、より長く好調を維持出来ます。たとえば前年1万kmを走った選手が、今年2倍の練習量である2万kmをこなせるようにはなれません。
ですからこの選手が走り込みで6,000km走ったら、本格的なシーズンは残りの4,000-5,000㎞程度で打ち止めで、その後は好調を維持するのが難しくなります。ですから強度を上げて短い距離でエアロビックベースを構築出来た方がレースシーズンの為にも良いのです。

レースに即した持久力
例えばレースの時、勝負所でチギれてしまったのは単純に持久力が無かったからでしょうか?そんな事ばかりではないはずです。
優勝候補が息も切らさず登っていたのに自分は苦しかった(有酸素能力を超えていた)ことや、それまでに足を使っていた(無酸素能力を使っていた。)ことが原因の方が多いはずです。
レースが単純に持久力で決まるなら、毎日10時間走って世界一周をするようなサイクリストがコンタドールに勝てるはずです。

下記の図はFTP 300wと250wの選手が300wで走った場合のイメージ図です。
左の図はFTP 300wの選手と250wの選手の比較です。FTP 300wの選手は1時間300w維持出来るのに対し、FTP 250wの選手は300wではVO2Max領域に入ってしまう為、3-8分しか耐える事が出来ません。

右の図は具体例です。例えばレースで登りに入り、集団について行くには300wが必要だったとします。FTP300wの選手は1時間集団に残れるのに対し、250wの選手は3-8分でチギれてしまいます。高い有酸素能力=高いFTPのパワー。これがレースに即した持久力です。

FTPの絶対値を上げましょう!

FTPを上げるには?
では実際にFTPをあげるにはどうすれば良いのでしょう?
冬の間、FTPを上げるにはエンデュランスの中にテンポ・FTPを組み合わせるのが効果的です。また冬の終わりにはVO2Max(Power Z5 106-120%)も入れる事で更に効率的に鍛える事が出来ます。
FTP増加の為のメニュー

SST(Sweet Spot, Power 88-94% of FTP)トレーニング

WU: 15分 3 x 1分の高回転走を入れて足を目覚めさせよう。
——
MS1: SST 2 x 20分
地形: 緩い登り~登り
ケイデンス: 80-90rpm
——
MS2: テンポ 20-40分(Power Z3 76-90% of FTP)
地形: 平坦~丘陵地
ケイデンス: 90-100rpm(いつもより10rpm速い回転数で。)
——
CD:15分

このトレーニングは典型的なFTP強化の為の週末のメニューです。
テンポは速いケイデンスで行うことで、レース後半でも回転を維持する能力を養います。

2 x 20分の平均値が94%FTP、テンポ40分が問題なく出来るようになったら、次の段階に入りましょう。 次の段階はFTPゾーン、そしてVO2Maxを刺激します。



FTP(91-105% of FTP)トレーニング

WU: 15分 3 x 1分の高回転走を入れて足を目覚めさせよう。
——
MS1: FTP 2 x 20分
地形: 緩い登り~登り
ケイデンス: 80-90rpm
——
MS2: VO2 Max(106-120% of FTP) 3-4分 x (4-6本)
地形: 登り
AVGが3本目から10%落ちたらその時点で終了。落ちないように頑張ろう!
——
MS3: テンポ 20-40分(Power Z3 76-90% of FTP)
地形: 平坦~丘陵地
ケイデンス: 90-100rpm(いつもより10rpm速い回転数で。)
——
CD:15分

(2)筋力アップ
ロードレースはアタック、ゴールスプリント、登りなど持久競技でありながら、高い筋力が要求されます。
同じ持久力の選手が一緒にゴール地点まで来た場合、筋力のある選手がゴールスプリントに勝つ可能性が高いですから筋力は重要です。
またクライマーであっても、登りの低いケイデンスで高いパワーを出すには高いトルク=筋力が必要です。

アメリカのプロ選手はクライマーであっても冬の間8-12週間は筋力トレーニングに費やします。

充分な筋量を確保してFTPトレーニングに入ることで、より高いFTPを獲得できる可能性が高くなります。
またケガの予防にも筋力トレーニングは大変有効です。
特にマスターの選手は加齢により筋量を失うスピードが加速しますから、シーズン最後まで筋量を確保できるようにジムに通いましょう。

(3)弱点強化
冬の間は、エアロビックベースを確保するのが第一のゴールですが、一方で弱点にアクセスするのも大切です。
冬は弱点強化に最も長く時間を費やせる時期です。
シーズンに入るとレースに合わせた総合的なトレーニングがメインになりますから、集中的に強化するには冬が一番です。

例えばレースで集団のペースが上がった時に足を使い切ってしまって、次の動きに対応できない=VO2Max領域がネックだったとします。

その場合は、冬の間、エンデュランス/テンポ/FTPを行うだけでなく、最低2週間に1回はVO2Maxのトレーニングを入れましょう。

エアロビックベースの構築集中するあまり、全く弱点にアクセスすることなく冬を越してしまったら翌シーズンに弱点を持ち越すことになってしまいますし、FTPの成長を阻害する要素(リミッター)にもなりかねません。時間がなければ週末のトレーニング時に1セット弱点強化メニューを追加するだけでも随分変わるはずです。

(4)休養
シーズンに入れば、激しいレース・トレーニングの繰り返しで少しずつ体力は消耗して行きます。
これをパワートレーニング用語で表すとCTLが高い状態でTSBがネガティブ(<0)になる状態と言います。

CTL…過去42日間のトレーニング量
ATL…過去7日間のトレーニング量
TSBCTLATL フレッシュさ。
CTLが高く(=過去42日間のトレーニング量が充分)、ATLが低い(=過去7日間はトレーニングが軽い)状態であれば、TSBはポジティブ(=練習量充分でフレッシュ)になりレースで良いパフォーマンスが発揮できる可能性が高くなります。

一方、高いCTLを維持している上にATLも高い状態になるとTSBはネガティブとなり深い疲労状態に入っていると言えます(ステージレース直後など)。

このような疲労状態を1年維持するのは不可能ですから、しっかりとしたエアロビックベースを構築しながらも、適度に休養をとりフレッシュな状態でシーズンに入ることが大切です。

CTL/ATL/TSBについて詳しくはパワー・トレーニング・バイブルP.189 第8章 パフォーマンスの調整方法をご覧ください。

フレッシュにシーズンに入ろう!





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Winter Training Plan

Winter Training Plan


PCGではウィンタートレーニングに絞った8週間のトレーニングプランを発売しています。

2015年の目標に合わせてトレーニングプランを作成致します。
パワーメーターを使ってゴールを決め、トレーニングを分析し、プランを組み立て、レースに向けての戦略を組み立てて行きます。「来季はレースで勝ちたい!」「最高の状態でシーズンに入りたい。」と計画する方の為のプランです。コミュニケーションはPCG勤務の日本人スタッフが対応しますので、日本語で行えます。

詳しくはPCGストアをご覧下さい。

PCGストア
http://www.shop.peakscoachinggroup.com/category.sc?categoryId=66

中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了


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シーズンオフのトレーニングについて Part1

日本のレース界の一大イベント、ツール・ド・おきなわも終わり、シーズンオフを迎えると共に既に来季に向けての構想を練っている方も多いと思います。

そこで今回はシーズンオフのトレーニング(オフトレ)についてご紹介したいと思います。

「ロード選手は冬に作られる」という格言の価値は、今も昔も変わりません。

ウェビナー「冬のトレーニングを
パワーアップしよう!」

レースの無い冬の間に、前年を振り返り、どれくらい進歩したのか?どのレースが良かったのか?何が上手く行ったか?を見直せば


「どれぐらい力を伸ばせるのか?」

「どのレースを狙うべきか?」

「上手く調子が上がるパターンは?」

2015シーズンへのゴールが見えてくるはずです。そこから逆算すれば「冬の間に何をしておくべきか?」の道筋が見えてくるでしょう。

(1)どれぐらい力を伸ばせるのか?・・・目標を作る
パワーデータを参照して、2013シーズン、2014シーズンを比較し各パワーゾーンの伸びをチェックします。そこから2015シーズンはどこまで伸ばしたいのか?伸びるのか?ゴールを設定します。


参照するデータの例
5秒、1分、2分、5分、20分

1年ごとの変化を振り返ろう!

2015年の目標を立てよう!

左の図を見ても分かるようにある程度毎年の進歩の比率は決まっています。「よし!ニバリとフルームに追いつくために来年はFTPを100ワット伸ばそう!」なんて非現実的な目標は立ててはいけません。過去を振り返り現実的な目標を立てるのが大切です。FTPの向上は完成されたプロの選手なら1-2%、ハイアマチュアなら5-10%程度が現実的なラインです。実現可能な目標を設定しましょう。

一方であまり簡単な目標を設定するのも考え物です。選手は成功率が50%の時に一番モチベーションが上がると言われています。自転車選手たるものチャレンジの部分を入れておいた方がモチベーションアップにつながります。

WKO+をお持ちの場合は各パワーゾーンの年ごとの変遷をチェックして2015年に獲得すべきパワーを検討しましょう。


意外に思われるかも知れませんがハンターは「目標は紙に書いて壁に貼った方が良い」と言います。
PC上で行うパワーデータの科学的解析が頻繁にクローズアップされますが、彼は元プロ選手だけあって経験則にもとづいたアドバイスも頻繁に行います。日本の受験生みたいな方法を海外の選手も行っているのは面白いですね。

(2)どのレースを狙うべきか?・・・脚質を知る。
一年間レースを戦ったなかで、「上手く走れたレース」「あと少しで勝てたレース」「いつか勝てる気のするレース」がいくつかあるはずです。
反対に「お話にならなかったレース」もまたあるはずです。

実際、一年間レースを走る中で優勝争いの最終局面に残ることは誰にとっても、そう多くはありません。
数あるレースの中で、脚質に合ったレース、勝てるレースをモノに出来るように計画しましょう。

2014年のパワープロフィールを作成し、脚質を知った上でレースに勝つ戦略を立てるのが必要です。

もし、あなたがクライマーでレースの最終局面で5名のグループに残れても、ゴールまで何もしなければスプリントで負けるのは確実です。ですから最後の登りでアタックする事が勝つ戦略になります。

スプリンターならば出来る限り足を使わないようにゴール前まで来て爆発的なゴールスプリントで勝たなければなりません。

また脚質と今年のレース結果およびコースプロフィールを照らし合わせると「どのレースを狙うべきか?」も見えてきます。

ちなみに脚質はトレーニングによってある程度は変える事が出来ます。
クライマーがオールラウンダー、ルーラーがスプリンターに変貌を遂げることは、しばしば起こります。
しかし、「今月はキッテル、来月はニバリになりたい」と言ってもそれは無理な話です。脚質を見極めた上で狙うレースに向けてフォーカスしたトレーニングをする事が大切です。

パワープロフィールの作り方
・5秒、1分、5分、FTPのベストをそれぞれ体重で割る。
・パワープロフィールをダウンロード
・割った値に一番近い値をパワープロフィール状でマーク

脚質の判断の仕方
・出来上がったパワープロフィールの波形を見て判断。
(―)波形が直線的・・・オールラウンダー
(\)右肩下がり・・・スプリンター
(/)右肩上がり・・・TTスペシャリスト
(凸)凸型・・・オールラウンダーに成りうるスピードマン

()スプリンターのパワープロフィール

パワープロフィールの詳細は「パワー・トレーニング・バイブル
P.85 第4章 自分の得意分野と苦手分野を知る をご参照ください。

トレーニングピークス
パワープロフィールダウンロード
http://home.trainingpeaks.com/blog/article/power-profiling

PCGブログ
http://peakscoachinggroup-japan.blogspot.com/2014/08/part7.html

(3)何をすれば上手く行くのか・・・調子の波を知る

選手が1ケ月程の短い期間に連続して勝利を上げる事はよくあります。
プロの世界で例を見るとパリ~ルーベとフランドルのダブル、アルデンヌクラシックの連勝などです。

これは上記の脚質と共に調子のピークがピッタリ合ったことが大きいです。
シーズンを振り返りどういったプロセスを踏むと自分の調子が上がるかを把握しましょう。

例 下記の選手は毎年シーズン終盤に大きく調子を落としてしまうことが課題でした。そこで春のシーズン終了後、1ケ月近いオフを取り体をリフレッシュさせることで秋のシーズンに備えました。
彼の場合、2~3週間(TSS300-500)の乗り込みを経て、1週間のレスト週(TSS150-200)を取ると調子が上向く事が分かっていましたので、オフの後3週ON1週OFFのサイクルを実行した結果、9/6に2分のパーソナルベストを更新し秋のレースだけでトップ6に3回入る事に成功しています。

次回は冬のトレーニングのフォーカスについてご紹介したいと思います。

■ウェビナー開催のお知らせ

<ウェビナー> 「冬のトレーニングをパワーアップしよう!」


<日時>
2014年12月6日(土曜日)
PM9:00~日本時間


<料金>
$13≒(JPY1,500)


<プレゼンター>
中田尚志

「自転車選手は冬に作られる。」

言い古された言葉ですが、その価値は今も昔も変わりません。

冬の間に強固なエアロビックベース、シーズンを戦い抜く筋力を養えば、次のシーズンの成功は約束されたようなものです。

低い気温、日照時間などトレーニングを進める上で難しい条件がある中で、トレーニングを成功させる方法を伝授します。

中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了