シーズンオフのトレーニングについて Part1
- 2014年11月2日
- 中田尚志ブログ
日本のレース界の一大イベント、ツール・ド・おきなわも終わり、シーズンオフを迎えると共に既に来季に向けての構想を練っている方も多いと思います。
そこで今回はシーズンオフのトレーニング(オフトレ)についてご紹介したいと思います。
「ロード選手は冬に作られる」という格言の価値は、今も昔も変わりません。
ウェビナー「冬のトレーニングを パワーアップしよう!」 |
レースの無い冬の間に、前年を振り返り、どれくらい進歩したのか?どのレースが良かったのか?何が上手く行ったか?を見直せば
「どのレースを狙うべきか?」
「上手く調子が上がるパターンは?」
2015シーズンへのゴールが見えてくるはずです。そこから逆算すれば「冬の間に何をしておくべきか?」の道筋が見えてくるでしょう。
(1)どれぐらい力を伸ばせるのか?・・・目標を作る
パワーデータを参照して、2013シーズン、2014シーズンを比較し各パワーゾーンの伸びをチェックします。そこから2015シーズンはどこまで伸ばしたいのか?伸びるのか?ゴールを設定します。
左の図を見ても分かるようにある程度毎年の進歩の比率は決まっています。「よし!ニバリとフルームに追いつくために来年はFTPを100ワット伸ばそう!」なんて非現実的な目標は立ててはいけません。過去を振り返り現実的な目標を立てるのが大切です。FTPの向上は完成されたプロの選手なら1-2%、ハイアマチュアなら5-10%程度が現実的なラインです。実現可能な目標を設定しましょう。
WKO+をお持ちの場合は各パワーゾーンの年ごとの変遷をチェックして2015年に獲得すべきパワーを検討しましょう。
意外に思われるかも知れませんがハンターは「目標は紙に書いて壁に貼った方が良い」と言います。
PC上で行うパワーデータの科学的解析が頻繁にクローズアップされますが、彼は元プロ選手だけあって経験則にもとづいたアドバイスも頻繁に行います。日本の受験生みたいな方法を海外の選手も行っているのは面白いですね。
一年間レースを戦ったなかで、「上手く走れたレース」「あと少しで勝てたレース」「いつか勝てる気のするレース」がいくつかあるはずです。
実際、一年間レースを走る中で優勝争いの最終局面に残ることは誰にとっても、そう多くはありません。
数あるレースの中で、脚質に合ったレース、勝てるレースをモノに出来るように計画しましょう。
2014年のパワープロフィールを作成し、脚質を知った上でレースに勝つ戦略を立てるのが必要です。
もし、あなたがクライマーでレースの最終局面で5名のグループに残れても、ゴールまで何もしなければスプリントで負けるのは確実です。ですから最後の登りでアタックする事が勝つ戦略になります。
スプリンターならば出来る限り足を使わないようにゴール前まで来て爆発的なゴールスプリントで勝たなければなりません。
また脚質と今年のレース結果およびコースプロフィールを照らし合わせると「どのレースを狙うべきか?」も見えてきます。
ちなみに脚質はトレーニングによってある程度は変える事が出来ます。
クライマーがオールラウンダー、ルーラーがスプリンターに変貌を遂げることは、しばしば起こります。
しかし、「今月はキッテル、来月はニバリになりたい」と言ってもそれは無理な話です。脚質を見極めた上で狙うレースに向けてフォーカスしたトレーニングをする事が大切です。
パワープロフィールの作り方
・5秒、1分、5分、FTPのベストをそれぞれ体重で割る。
・パワープロフィールをダウンロード
・割った値に一番近い値をパワープロフィール状でマーク
脚質の判断の仕方
・出来上がったパワープロフィールの波形を見て判断。
(―)波形が直線的・・・オールラウンダー
(\)右肩下がり・・・スプリンター
(/)右肩上がり・・・TTスペシャリスト
(凸)凸型・・・オールラウンダーに成りうるスピードマン
(\)スプリンターのパワープロフィール |
パワープロフィールの詳細は「パワー・トレーニング・バイブル」
P.85 第4章 自分の得意分野と苦手分野を知る をご参照ください。
トレーニングピークス
パワープロフィールダウンロード
http://home.trainingpeaks.com/blog/article/power-profiling
PCGブログ
http://peakscoachinggroup-japan.blogspot.com/2014/08/part7.html
(3)何をすれば上手く行くのか・・・調子の波を知る
プロの世界で例を見るとパリ~ルーベとフランドルのダブル、アルデンヌクラシックの連勝などです。
これは上記の脚質と共に調子のピークがピッタリ合ったことが大きいです。
シーズンを振り返りどういったプロセスを踏むと自分の調子が上がるかを把握しましょう。
例 下記の選手は毎年シーズン終盤に大きく調子を落としてしまうことが課題でした。そこで春のシーズン終了後、1ケ月近いオフを取り体をリフレッシュさせることで秋のシーズンに備えました。
彼の場合、2~3週間(TSS300-500)の乗り込みを経て、1週間のレスト週(TSS150-200)を取ると調子が上向く事が分かっていましたので、オフの後3週ON1週OFFのサイクルを実行した結果、9/6に2分のパーソナルベストを更新し秋のレースだけでトップ6に3回入る事に成功しています。
次回は冬のトレーニングのフォーカスについてご紹介したいと思います。
■ウェビナー開催のお知らせ
<ウェビナー> 「冬のトレーニングをパワーアップしよう!」
<日時>
2014年12月6日(土曜日)
PM9:00~日本時間
<料金>
$13≒(JPY1,500)
<プレゼンター>
中田尚志
「自転車選手は冬に作られる。」
言い古された言葉ですが、その価値は今も昔も変わりません。
冬の間に強固なエアロビックベース、シーズンを戦い抜く筋力を養えば、次のシーズンの成功は約束されたようなものです。
低い気温、日照時間などトレーニングを進める上で難しい条件がある中で、トレーニングを成功させる方法を伝授します。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了