[パワー] 全日本最速店長選手権 レースデータの解析方法 その2
前回はレースデータから概要を掴む方法をお伝えしました。
今回はさらに深くデータを解析して、今後のレースに向けたトレーニングを考えてみたいと思います。
1.時間・TSS・エネルギー消費量を確認する。 |
2.NP(ノーマライズド・パワー)を確認する。 |
3.VI(バリアビリティ・インデックス)などを使ってレース展開を見て行く |
パワーデータをさらに深くみる方法
.fit(フィットファイル)に代表されるパワーデータには(パワー・ケイデンス・時間・距離・心拍数・スピード・標高・温度)などのデータが1秒ごとに記録されています。
これらのデータから多くの情報を得ることができますが、ライダーの思考までは記録されません。
その為、データとレース中に考えていたことをシンクロさせるのが次に行う作業です。
レース中何を考えていたのか? アタックを待っていた? 集団にしがみついていた? データ上は同じ300Wでもライダーにとっては全く違ったシチュエーションだった可能性があります。
梅林店長のコメントとレースレポートから
・前半調子が良く前で展開
・中盤は一旦集団の中程に戻り待機
・勝負のかかった48周目で集団のギャップを詰めるために全開!
・ここからは完走を目指してゴール
(1) データをアンズーム(Unzoom)する。
レースは自分のペースで走れることの方が少なく、路面や相手のペースに合わせて加減速が続きます。ですから激しく変化するレースのデータを眺めるだけでは何が起こったのは分かりません。
そこでパワーデータと心拍数だけに絞ってアンズームするとペースの変化がみやすくなります。
ハンターの言う「無駄な情報を全て取り払ったときに真実が見えてくる。」ですね。(彼は日本の禅からこのヒントを得たそう。)
アンズーム前
アンズーム後
・展開出来た前半 FTP(緑の破線)を超えている時間が長く、キレのあるアタックを数本している。心拍も高い。
・集団で足を貯めた中盤 FTP以下で足を温存している
・最後の勝負に出た終盤 48周目あたりで集団のギャップを埋めようと頑張ったところからパワー・心拍共に高い。
(2)マッチを確認する。
下の図はレース中どれだけ激しい努力をしたか(英語のレース用語ではマッチを燃やすと言います)を表したものです。
・レース前半: FTPの140%を30秒以上維持するような激しいマッチ(オレンジ)120%を30秒以上するマッチ(黄緑)共に多い
・レース中盤: 集団で温存しマッチは燃やしていない
・レース終盤: 最後の力を振り絞って>120%のマッチを燃やしている。
ここまで見てくると本人のレポートとパワーデータが概ね一致し課題がクリアになってきます。
データから学ぶレース戦術
パワーデータから得られる情報は、次のレースに向けて重要な資料になります。
ここまでレポートとデータをシンクロさせる作業を行ってきました。彼の課題は何かを考えてみましょう。
梅林店長のレース
・前半調子がよく結構動けている。(マッチを多く燃やしている)
・中盤の中休みのあと終盤も数回動く余力はある。(集団は梅林店長のFTP以下で進行し後半再度動ける回復力がある。)
ここからレースのレベルは梅林店長にとって手のつけられない高さではないことが分かります。
むしろ前半動き過ぎた為に早めに足を売り切れさせてしまった可能性があります。
上位を狙うには下記の二つの戦術が考えられます
1.前半もう少し足を温存する。
マッチを前半に使い切っている可能性が高いので、もう少し温存した方が良いです。温存と言っても足を止めていては置いていかれるだけですから、決まらないアタックには反応しない。 集団の中で出来るだけ足を使わない技術を向上させるのが大切です。勝負のかかっていない時は後ろで休む。流れるラインを見つけて前に上がる技術。足を温存するペダリングスタイルなどです。
2.決定的なアタックを見極める。
レースは実力が拮抗した選手の争いです。「ガンガン行く」「後先考えずに行く」のはカミカゼ・アタックでしかありません。冷静に展開をみて自身の脚質を最大限に活かす必要があります。また勝負を決めれる爆発力を養うのも必要です。
2018店長選手権に向けたトレーニング
上記のレース戦術を可能にさせる為のトレーニングを考えてみましょう。
課題
テーマは主に2つ FTPアップとマッチを増やすことです。
・FTP向上 集団で足を貯めるにはFTPをあげることが必要。FTPを上げれば相対的に強度は下がりますから余裕が生まれ足を貯めやすくなります。
・マッチを増やす 足を温存するだけでなくマッチを増やす必要もあります。幾度となく繰り返されるアタックに対応し、最後は勝負を決める一発を打てるようにしなければなりません。単独でトレーニングすることの多い日本選手の場合、このトレーニングを行うことで激しいリズムの変化に対応しレースの成績向上に成功する選手が多いので参考にして頂きたいと思います。
上記から店長選手権に向けたトレーニングを考えてみましょう。
2018店長選手権に向けたトレーニング
WU: 20-30 分 エンデュランスレベルで。
3 x 1分の高回転走を入れて足を目覚めさせよう。
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MS1: SST 2 x 20分
レスト:10分
スムーズなペダリングを意識し、出来るだけ少ないエネルギーでSSTを維持すること。
集団の中で足を貯めるイメージで。
10分流し
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MS2 : マイクロバースト (120% / 80%)
(15秒ON / 15秒 OFF) x 20 = 10分
15秒ON = 120% of FTP
15秒OFF = 80% of FTP
レースの攻防をイメージして。ペースが上がった集団で展開しているイメージで。 OFFで80%以下に落とさないように注意すること。
10-15分流し
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MS3: タバタ
(20秒 / 10秒) x 8=4分
全開で!!!
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CD: 10 分 アクティブリカバリーレベルで軽く回そう
まとめ
・データから概要を掴む
・データと感覚をシンクロさせる
・データから次回への対応策を考える。
皆様もデータからトレーニングを編み出して勝利に近づいて頂きたいと思います。