イリス・スラッペンデールさん来日
長きにわたって女子ロードの世界でトップ選手として活躍してきたオランダ人 イリス・スラッペンデール(Iris Slappendel)さんが来日されました。
2020東京五輪でオランダチームの合宿地に立候補している高知県宿毛市でのサイクリングイベントに参加した後、観光の為に京都に寄られました。
日本で女子チーム High Ambition Womens Cycling Academy X Boardmanを主宰する加藤修さんに夕食をご一緒する機会を頂きました。
夕食時に話をした内容をご紹介したいと思います。
ー日本の印象はいかがですか?
昨年に続き2回目ですが、とても楽しいです!食事も美味しいですね。高知県で食べたカツオは最高でした。それに高知にはクルマの少ない静かな道が沢山あるし治安が良いのも魅力的ですね。
飛行機を使えば都心部へのアクセスが良いのも五輪合宿地として魅力的ですね。
ー京都まではどうやって来ましたか?
自走です!旅をするのが好きですし、レースを離れても色々な道を走るのが好きなんです。
ーえっ~! 自走ですか?
ええ。地図もGPSもWi-Fiもなかったので道路標識だけを見てここまで来ました。
ー 一同仰天
標識が日本語でしか書いていないところがあったので、ちょっと困りましたが美しい風景を楽しみましたよ。
ある日はホテルを予約しないままに日が暮れてしまいました。カフェでたまたま声をかけた人が民宿を経営していたのですが、予約がいっぱいで・・・。
他のホテルを探してくれましたが満室で取れませんでした。
そうしたら彼らがリビングルームに簡易のベッドを置いて泊まらせてくれたんですよ!ラッキーでした。日本人は親切ですね。
そういえば今泊まっている民泊はどうやら違法みたいです。泊まるまで分からなかったけど。
でも私は毎日沢山走って帰ってくるのでグッスリ眠れますよ。(一同再度仰天)
サイクリングの補給はバナナとオニギリです。納豆のオニギリが好きで沢山食べました。
ーところでバイクレースを始められたキッカケは?
元々はスピードスケートの選手だったんですよ。ジュニア時代にスケートとサイクリングを並行してやっていたのですが、スケートよりもサイクリングで成績が伸び始めたので、サイクリングを選びました。
ジュニア時代に世界選ITTで2位になったのが大きいですね。当時はオランダ代表になれて喜んでいたのぐらいだったのに、まさか世界選で2位に入れるとは思っていませんでした。
ー世界の第一線に居ながら引退されましたがキッカケは?
既に12年もプロとして活動していましたし、トレーニング・食事・回復にフォーカスした生活はもう充分だと思いました。
またある程度まだエネルギーが残された状態で引退した方が次の人生をパワフルに始められると思ったのです。
ーオランダの女子は今、世界のレースを席巻していますがその理由はどこにあると思いますか?
それはもう激しい競争に尽きます。 オランダで世界選代表の8名に選ばれれば既に世界でもトップレベルで走れる実力があると言えます。
また私が競技を始めた頃はレースを2名で出走するようなことがありましたが、今は大きなプロトンで走る事ができるほどに女子のレースがメジャーになりました。
ーアメリカのレースはいかがでしたか?(彼女はユナイテッド・ヘルスケアの女子チームに所属していた。ちなみに彼女のプロ選手として最後の勝利はアメリカのレース)
アメリカもオランダと同じように世界でトップレベルにあります。ノースカロライナ州アシュビルに住んで活動していましたが、当時破竹の勢いで活躍しだしたコリン・リベラ(現サンウェブ)など個性豊かな選手が多くて楽しかったですね。
ー自転車以外の活動に関して教えてください。
私はグラフィックアートのスキルを持っていますので選手生活のかたわらでデザイナーとしての仕事もしていました。 2014年の女子のワールドツアーのリーダージャージは私がUCIに応募し採用されたものです。
また引退後は女子の選手組合を立ち上げました。
女子のレース界は面白い経歴の持ち主が多いのです。プロとして活躍する彼女たちのパーソナリティを知ってもらう事ができたら、より人気が出ると思うしメディアやスポンサーも注目すると思います。
例えばミーガン・ガルニエ(Megan Guarnier ボエルス・ドルマンス)は、大学院を出て核施設で働いた経歴の持ち主ですし、昨年引退したエヴェリン・スティーブンス(Evelyn Stevens)はウォール街で働く銀行員でした。
こういったバックグラウンドや個性を知ってもらえたらレースはより魅力的なものになると思います。
他にはコンチネンタルチームのスポーツディレクターを行ったりもしています。引退後も深く自転車界に関わっていると言えますね。
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私の彼女に対する印象はとにかく健康的。 また世界で走っていただけあって行動力が凄いですね。
世界を股にかけて走ろうと思えば多少のことで動じない心の強さが要求されますし、心身共にタフである事がプロ生活を生き抜く鍵になります。
彼女が12年間のプロ生活で得たものはこういったタフさ。そして他国の人ともすぐに仲良くなれるフレンドリーさとコミ
ュニケーション能力(日本語も結構ご存知でした。)ではないかと感じました。
また彼女自身の好奇心(冒険心)の強さが世界レベルの選手へと彼女を導いたのではないかと思います。
夕食を一緒に食べた人みんなが彼女のことを好きになる。そんな魅力の持ち主でした。