シーズンオフのトレーニングについて part2
- 2015年02月1日
- 中田尚志ブログ
前回のブログではシーズンを振り返り来シーズンへの道筋をつける方法をご紹介しました。
また選手が1年に走れる時間と言うのはある程度決まっていますから、いたずらに多く距離をこなす事なくエアロビックベースを構築できる方が、より長く好調を維持出来ます。たとえば前年1万kmを走った選手が、今年2倍の練習量である2万kmをこなせるようにはなれません。
ですからこの選手が走り込みで6,000km走ったら、本格的なシーズンは残りの4,000-5,000㎞程度で打ち止めで、その後は好調を維持するのが難しくなります。ですから強度を上げて短い距離でエアロビックベースを構築出来た方がレースシーズンの為にも良いのです。
下記の図はFTP 300wと250wの選手が300wで走った場合のイメージ図です。
左の図はFTP 300wの選手と250wの選手の比較です。FTP 300wの選手は1時間300w維持出来るのに対し、FTP 250wの選手は300wではVO2Max領域に入ってしまう為、3-8分しか耐える事が出来ません。
右の図は具体例です。例えばレースで登りに入り、集団について行くには300wが必要だったとします。FTP300wの選手は1時間集団に残れるのに対し、250wの選手は3-8分でチギれてしまいます。高い有酸素能力=高いFTPのパワー。これがレースに即した持久力です。
FTPの絶対値を上げましょう! |
冬の間、FTPを上げるにはエンデュランスの中にテンポ・FTPを組み合わせるのが効果的です。また冬の終わりにはVO2Max(Power Z5 106-120%)も入れる事で更に効率的に鍛える事が出来ます。
SST(Sweet Spot, Power 88-94% of FTP)トレーニング
WU: 15分 3 x 1分の高回転走を入れて足を目覚めさせよう。
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MS1: SST 2 x 20分
地形: 緩い登り~登り
ケイデンス: 80-90rpm
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MS2: テンポ 20-40分(Power Z3 76-90% of FTP)
地形: 平坦~丘陵地
ケイデンス: 90-100rpm(いつもより10rpm速い回転数で。)
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CD:15分
このトレーニングは典型的なFTP強化の為の週末のメニューです。
テンポは速いケイデンスで行うことで、レース後半でも回転を維持する能力を養います。
2 x 20分の平均値が94%FTP、テンポ40分が問題なく出来るようになったら、次の段階に入りましょう。 次の段階はFTPゾーン、そしてVO2Maxを刺激します。
FTP(91-105% of FTP)トレーニング
WU: 15分 3 x 1分の高回転走を入れて足を目覚めさせよう。
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MS1: FTP 2 x 20分
地形: 緩い登り~登り
ケイデンス: 80-90rpm
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MS2: VO2 Max(106-120% of FTP) 3-4分 x (4-6本)
地形: 登り
AVGが3本目から10%落ちたらその時点で終了。落ちないように頑張ろう!
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MS3: テンポ 20-40分(Power Z3 76-90% of FTP)
地形: 平坦~丘陵地
ケイデンス: 90-100rpm(いつもより10rpm速い回転数で。)
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CD:15分
(2)筋力アップ
ロードレースはアタック、ゴールスプリント、登りなど持久競技でありながら、高い筋力が要求されます。
同じ持久力の選手が一緒にゴール地点まで来た場合、筋力のある選手がゴールスプリントに勝つ可能性が高いですから筋力は重要です。
またクライマーであっても、登りの低いケイデンスで高いパワーを出すには高いトルク=筋力が必要です。
アメリカのプロ選手はクライマーであっても冬の間8-12週間は筋力トレーニングに費やします。
充分な筋量を確保してFTPトレーニングに入ることで、より高いFTPを獲得できる可能性が高くなります。
またケガの予防にも筋力トレーニングは大変有効です。
特にマスターの選手は加齢により筋量を失うスピードが加速しますから、シーズン最後まで筋量を確保できるようにジムに通いましょう。
(3)弱点強化
冬の間は、エアロビックベースを確保するのが第一のゴールですが、一方で弱点にアクセスするのも大切です。
冬は弱点強化に最も長く時間を費やせる時期です。
シーズンに入るとレースに合わせた総合的なトレーニングがメインになりますから、集中的に強化するには冬が一番です。
例えばレースで集団のペースが上がった時に足を使い切ってしまって、次の動きに対応できない=VO2Max領域がネックだったとします。
その場合は、冬の間、エンデュランス/テンポ/FTPを行うだけでなく、最低2週間に1回はVO2Maxのトレーニングを入れましょう。
エアロビックベースの構築集中するあまり、全く弱点にアクセスすることなく冬を越してしまったら翌シーズンに弱点を持ち越すことになってしまいますし、FTPの成長を阻害する要素(リミッター)にもなりかねません。時間がなければ週末のトレーニング時に1セット弱点強化メニューを追加するだけでも随分変わるはずです。
(4)休養
シーズンに入れば、激しいレース・トレーニングの繰り返しで少しずつ体力は消耗して行きます。
これをパワートレーニング用語で表すとCTLが高い状態でTSBがネガティブ(<0)になる状態と言います。
CTL…過去42日間のトレーニング量
ATL…過去7日間のトレーニング量
TSB…CTL–ATL フレッシュさ。
CTLが高く(=過去42日間のトレーニング量が充分)、ATLが低い(=過去7日間はトレーニングが軽い)状態であれば、TSBはポジティブ(=練習量充分でフレッシュ)になりレースで良いパフォーマンスが発揮できる可能性が高くなります。
一方、高いCTLを維持している上にATLも高い状態になるとTSBはネガティブとなり深い疲労状態に入っていると言えます(ステージレース直後など)。
このような疲労状態を1年維持するのは不可能ですから、しっかりとしたエアロビックベースを構築しながらも、適度に休養をとりフレッシュな状態でシーズンに入ることが大切です。
CTL/ATL/TSBについて詳しくはパワー・トレーニング・バイブルP.189 第8章 パフォーマンスの調整方法をご覧ください。
フレッシュにシーズンに入ろう! |
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パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了