秋に入っても好調を維持する武山晃輔選手(Astemo宇都宮ブリッツェン)。滋賀国スポ(旧国体)ロードレースで4位に入りました。
1.国スポロードレース
国スポは、通常のJプロツアーとは趣の異なるレースです。
選手たちは普段所属するチームではなく、各都道府県の代表として、一年に一度このレースに臨みます。
ロードレースとトラックが開催され、各種目で優勝を狙うだけでなく、天皇杯・皇后杯と呼ばれる県別の総合ポイントもレース展開を占う上で重要なポイントです。
ロードレースの代表は各県2名。今年は66名が青年Aの部(旧成年の部)で出走しました。
天皇杯・皇后杯の得点争いはロードレースの戦術に反映されます。エースとアシストという役割をハッキリ決めて最もポイントの高い優勝を狙うチームもあれば、ダブルエースで2名入賞することで得点獲得を狙うチームもあります。
前者の場合は勝ち逃げを決めるためにアシストは捨て身で逃げを作りますし、後者の場合は勝敗はともかく勝ち逃げに2名乗せることを狙います。
武山晃輔選手は山梨県代表として出場。普段アシストとしてレースを走ることが多い彼にとって自身の為に自由に走れる数少ないレースになりました。
2.展開
コースは比較的シンプルな平坦+パワークライムの設定。一見イージーなーコースに見えますが、当日は風の影響もあり激しい展開となりました。
武山選手はチームメートが逃げに乗り、大きな集団で待機。好機を伺います。
後半は集団も分裂します。逃げが吸収された後は武山選手が居る集団から優勝者が出ることが確実になりました。
アップヒルスプリントに強い武山選手にとっては理想的な展開となりながら終盤を迎えます。
しかし、ラスト周回近くで3名の逃げが決まり、武山選手は後方に残りました。そこからは集団トップ狙いに切り替え4位フィニッシュ。
先頭に集団に入れなかったものの堅実な走りでポイントをゲットしました。
「絶好調ではなかった」と語る武山選手ですが、その日の体調に合わせて戦術を組み換え、その日取れる最上位を取れるのは彼の大きな才能です。
3.レースのパワー
平坦やパワークライムでは特に「力を出すべきときに出し、抜くときに抜く」ON/OFFの切り替えが重要になります。すべてのアタックに反応しては自滅しますし、重要な動きに乗り遅れると後でどれだけ大きなパワーを出そうとも勝てることはありません。
・足を貯める
大きな逃げが行き、レースが沈静化した5〜7周目。武山選手のパワーを見てみましょう。
時間: 41分20秒
NP: 239W
平均心拍数: 170bpm
※NP 239Wは武山選手にとってFTPの77%に過ぎません。それはテンポ(76-90% of FTP)の下限に等しいです。
さらに詳しく見てみましょう。下記の図は足を貯めている時間の各パワーゾーンで過ごした時間の積算です。
※NP(ノーマライズド・パワー) 何ワットで一定巡航にするに等しいペースか?=一定ペースで走ったら何ワットになるか?を表す、
この間、実に68%28分をFTP以下のAR〜テンポで過ごし足を貯めています。
・勝負を決める
ラストのゴールスプリント。武山選手は早駆けし、集団から距離を保ったまま最終コーナーに飛び込みます。距離を保ちつつ後ろを確認しながら流し先行し、追手が来ても合わせて踏めるようにスプリント中でさえ足を貯めてフィニッシュに向かいます。
早駆けのパワーは17秒 720W。流し先行は16秒470W。パワーからも抑えて走っているのが分かります。
「自転車レースはドッグレースでは無い」と言われます。レースはパワー比べでもアタック合戦でもありません。
「自身が最初にゴールラインを踏むにはどうしたら良いか?」が最初のゴール。
レースの進行具合によって次に「取りうる最上位を取るには、どう戦術を組めば良いのか?」が次のゴール。
走る中で最善策を模索しながら、自身の駒を進めるのがレースです。
この日の武山選手は、自身の持ちうるパワーとレースの進行状況を冷静に判断して4位に入ったと言えます。
Peaks Coaching Group Japan中田尚志
ピークス・コーチング・グループではパワーデータを元にしたコーチングを行っています。
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