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[Track] トラック世界選の機材について

時に時速70kmを超えるトラック競技の機材開発で最も優先されるのは空気抵抗の削減です。
 
(1)空気抵抗
空気抵抗は走行時の抵抗全体の90%以上を占めます。
しかも空気抵抗は駆動抵抗や路面抵抗といった他の抵抗と違いスピードが上がれば上がるほど増加しますから1 / 1000秒を削ろうとすると真っ先に取り組むべき課題となります。
空気抵抗の内訳は機材よりも人間の体の方が大きく、空気抵抗全体の70%を占めます。
その為ヘルメットやスキンスーツといったハードはもちろん、風洞実験室でのエアロポジションの研究にも余念がありません。
 
 
(2)新しいハンドルのコンセプト
その中で近年注目されているのはハンドルです。
以前はウイング形状にすることでハンドル自体のエアロ化を図っていましたが、最近は選手の姿勢をよりエアロにする形状のものが出てきました。
写真はエンデュランス種目で使われているハンドルです。
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まるでロードバイクのブレーキフードのような形状をしていますが、実はこの突起を持つことで空気抵抗が減ります。
風洞実験により、ドロップを持って腕を伸ばすよりもフード部を持って腕を直角に曲げる方が空気抵抗が少ないことが分かったのです。(選手の身長やポジションにもよる)
腕全体ではなく上腕部のみで風を受けるからです。
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こうして身体の空気抵抗を減らす方がハンドルをウイング形状にするより余程効果が大きい訳です。
その為、従来のハンドルでは握りにくかったポジションを取りやすくする為に、こういった形状にしています。
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(3)意外な恩恵
またこのハンドル形状により体を預けるように踏めるので、スピードも維持しやすくなります。
その為、以前は見られなかったフード部を持ってのスプリントも最近では頻繁に見られるようになりました。
 
今日から一週間トラック世界選の情報を順次投稿していきます!
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[Track] トラック世界選手権ベルリン

ドイツ・ベルリンにてトラック世界選手権が開幕しました!
出来るだけ多くの情報をお伝え出来るよう頑張ります!
 

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[Track] HUUB WATT BIKEのマシン

4kmチームパーシュートで旋風を巻き起こしたフーブ・ワットバイクチーム。
彼らの出した3分53秒は今季のワールドカップが始まるまで、「史上5番目に速い”ナショナルチーム”」でした。

彼らは地元ダービーを拠点にするためダービーダス(Derbados=ダービー共和国)と自身たちを呼んでいます。

選考や規律があまりに厳しいイギリス・ナショナルチームに反旗を翻す形でチームを結成し自身達で国を作ったというわけです。

 

 

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HUUB Wattbike p/b Vita Coco のバイク

チームの選手であり創設者でもあるダン・ビグハムのエンジニアリングと競技で培われた知識により、彼らのマシンには面白い工夫がなされています。

 

(1)空気の乱流を防ぐDHバー
バイクの一番前についているDHバーは最初に空気を切り裂く場所です。腕とDHバーの間で乱流が起こると抵抗になるために前腕とDHバーの隙間を無くし、一体成型にすることで空気抵抗を10-15W低減しています。

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(2)62 x 15Tのギア
世界の男子トップ選手は4kmTPにおいて4倍以上のギア比を踏みます。62 x 15Tであればギア比は4.13倍

54 x 13T も概ね同じ4.15倍ですが、62 x 15Tの方が後ろのスプロケット1枚にかかるトルクは減ることやチェーンの屈曲が緩くなるために駆動抵抗は減ります。
その為、大ギア x 大ギアの62 x 15Tの方が小ギア x 小ギアの54 x 13Tよりも駆動抵抗が少ないというのがダンの考え方です。(ビッグギアプーリーと同じ考え方)

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(3)ワックス・コーティングされたチェーン
チェーンの摺動抵抗はチェーンの表面ではなく、実はピンとプレートが擦れることによって起こります。その為、チェーン表面にオイルを付けるよりもチェーン内部のピンとプレートを潤滑させるほうが効果的です。

その為、ダンはチェーンのワックスを開発しました。
一度チェーンを脱脂することでファクトリーオイルを落とします。
その上でワックスでチェーンを煮ます。そうすることでチェーン内部にまで潤滑剤を浸透させ駆動抵抗を減らします。

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(4)ピラミッドサイクリングデザイン(Pyramid Cycle Design )の特注カーボンチェーンリング
62−65T ともなるとチェーンリングの半径が通常よりも大幅に大きくなります。その為、少しでも精度が出ていないとチェーンリングは上下左右に跳ねてしまいます。
また大きくなればなるほど剛性を確保するのは難しくなります。

世界のトップ選手だと4kmのスタートでもゆうに1,000Wは超えるので硬いカーボンチェーンリングを使用しています。

 

(5)ウォーカー・ブラザーズ(Walker Brothers Wheels )のテンション構造のディスクホイール
カーボンハニカムのいわゆる板ディスクではなく、スポークのようなテンションディスクにすることで、軽さと剛性そして足に対する反力の少なさを実現しています。

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超低予算の実質アマチュアチームですが、各国のナショナルチームが参考にするほど機材に工夫を凝らしてタイムアップを図っています。

莫大な資金があり風洞実験を繰り返すことの出来る各国のナショナルチームに対抗すべく、創意工夫と科学的アプローチでここまでやれるというのを証明したフーブ・ワットバイク。 

機材の高額化、チーム予算の高騰が止まらない自転車チームの運営ですが、創意工夫でまだまだアマチュアがプロに勝てる余地はありそうです。

 

 

Peaks Coaching Group Japan
中田尚志

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