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[パワー] 全日本最速店長選手権 レースデータの解析方法 その1

サイクルスポーツ誌の名物企画 全日本最速店長選手権に参戦したYs Road 梅林様よりパワーデータを頂きました。

データを元にパワーデータの解析方法をご紹介したいと思います。

その1 レースデータをどうやって見るか?

その2 レースデータから作るパワーワークアウト

 レースデータを解析する方法

早速、店長選手権のパワーデータを見ていきましょう!

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このレースは健脚自慢のバイクショップ店長が「日本最速店長」の座をかけて闘うものです。

パワーデータ(データは全てメーター読み)

時間 1h51:15
距離 78km
平均時速 42.1kph
NP 220W
TSS 156
エネルギー消費量  1287kJ

パワーデータを見る方法

パワーデータを見るときは時間・TSS・エネルギー量を見て概要を掴みます。

このレースでは約2時間、TSS 156、エネルギー1287kJ消費していますから、1時間に概ね80tss/h エネルギーは概ね650kcal 消費していることが分かります。

TSS 156

FTP1時間走るとTSS100になります。 1時間50分で156TSSですから、梅林店長はこのレースで1時間のTT 1.5本分頑張ったと言えます。

また1時間あたりのTSSは80tss/h。 レースや激しいトレーニングでは概ね70Tss/h以上。 エンデュランスでは50tss/h。 ゆっくりしたペースでは30tss/hあたりが目安ですから、2時間のロードレースとしては高い強度だったことも分かります。

エネルギー消費量 1287kJ

人間は1287kJを産出しようとすると概ね1300kcalを消費します。

成人男子の1日の基礎代謝量が2000kcal程度ですから、梅林店長は2000+1300=3300kcalをこの日消費したことになります。

言い換えれば3300 ÷ 2000 1.5

1.5日分”働いた”ことになります。

ここまでで店長選手権は、遊びの企画ではなく、強度の高い「本物のレース」であることが分かります。

NP 220W

NP=ノーマライズドパワーは「もし一定ペースで走っていたら何ワットになったか?」を表すメトリクスです。

レースにおいてアベレージワット数は、強度を測る目安になりません。

というのも仮にアタックの掛け合いの後に沈静化したレースと、ずっと一定ペースで進んだレース、この二つのレースのアベレージワット数が同じになっても、体にかかる生理学的な”コスト”は異なるからです。

例の場合、前者のアタックの掛け合いが続いたレースの方がダッシュを繰り返した分、体にかかる負担は増えます。それを表そうとしたのがノーマライズドパワーというわけです。

梅林店長のこの日のNP220W、彼のFTP240W

NP ÷ FTP = 220 ÷240= 0.92

この日彼はFTP92%の強度で2時間近くも走り続けたことになります。

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NP/ VIからみるレース展開

NPを更に細かく見ていきましょう。

レースを3分割し、前半・中盤・後半に分けて見ていきます。

この時、VI( Variability Index=バリアビリティ・インデックス )を使うと更にレース展開を追うことが出来ます。

VI= NP / AVP = ノーマライズドパワー ÷ アベレージパワー

これはNPとアベレージパワーの割合により、ペースの変化を見るものです。NPを計算する式は大きい数字を重く見ます。ペースの変化が大きいとNPは高くなるわけです。 ですからVIが高ければペースの変化が激しかった(>1.15程度)。 低ければ一定ペース(<1.05)に近かったと言えるわけです。

・前半 NP 242W,  VI 1.13, 42.7kph※

・中盤   NP 198W,  VI 1.13,  41.4kph

・後半   NP 211W,  VI 1.12,  42.1kph

※平均速度は主催者発表よりもかなり高いですが、比較の為メーター読みのままにしています。

NPは比較的大きく変化しています。

前半は242W であったのに対し、中盤は198W, 後半は211W です。それに対しVIはあまり変わっていません。

ここから前半は速いペースで進み、中盤は中だるみ(実際に”弛んで”いるわけではなく足を休めて後半に向けてセーブしている状態)、後半はまたペースが上がっているのが分かります。

またペースの緩急は比較的少なく、”流れる”レースだったことが分かります。

これは急な登りがなく、かつ長時間足を止める下りが無い高低差の少ないコース(1周の標高差9m)だったことも影響していると思われます。

ここまでで大体のレース内容が見えて来ます。

次回はさらにレースを細かく見ていき、さらにパワーデータを元に来年の店長選手権に向けてのワークアウトを考えて見たいと思います。

資料:

Y’s Road 名古屋本館 梅林店長 レースレポート

その1

その2

サイクルスポーツ レースレポート

サイクルスポーツ12月号

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[ストーリー] なぜマクナルティーは欧州ではなくアメリカでレースする事を選んだのか?

アメリカのサイクリング誌Velonewsに興味深い記事がありましたのでご紹介します。


ブランドン・マクナルティーは、現ジュニア世界選手権ITTチャンピオンで、グレッグ・レモンの再来と言われるほどの逸材です。

 

欧州のレースでも既に実績を挙げていて、複数のワールドツアーチームがU23の育成チームに彼を欲しがったほどです。
(ワールドツアーチームの多くはデベロップメントチームと言って、U23の選手を育成するチームを持っています。)

 

しかし、マクナルティーが選んだのは、米国内のコンチネンタルチーム、ラリーサイクリング(Rally Cycling Team)でした。

 

 

「難しい選択だった」

 

 

ワールドツアーに入るにはU23時代に欧州で成績をあげることが必要です。
しかし、これまで多くの才能ある若者が文化の壁、言葉の壁、家族から遠く離れた生活に適応できずに競技を離れて行きました。

 

マクナルティーと彼のコーチ陣の一人であるロイ・ニックマン(TDF出場経験もある元プロ選手)は、彼のシャイな性格や既に高い競技力を持つ事を勘案し、性急に事を進めて競技から離れる危険を冒すことよりも徐々に適応して行く道を選びました。

 

アメリカのワールドツアー育成チームはアクセル・メルクスが運営するAXEON(アクション)が有名ですが、ラリーにもワールドツアーで活動経験のある現役プロやコーチ、チームスタッフがいます。
(例えばダニー・ペートは元チームsky所属したプロでU23のITT世界チャンピオンにも輝いた選手です。彼は、チャンピオン獲得後に欧州でフルシーズン過ごす道を選びましたが、適応するまでに大変な時間を過ごしたと言います。)

 

 

 

ジュニア世界チャンピオンのパワー

体重68kg 30分 380W

 

USAサイクリングのコーチの一人バーニー・キングは、マクナルティーのパワーファイルを見て驚愕しUSAサイクリングの強化副委員長ジム・ミラーに転送します。

 

「パワーメーターが壊れてるんじゃないのか?彼ぐらいの年齢のジュニアは340Wぐらいだ。TJ、フィニー、クラドック(現ワールドツアーの選手達)でさえ。」

現在アメリカのホープと言えばアドリエン・コスタ。しかし、彼は同等以上かもしれない。

 


ワールドツアーに行くために

 

マクナルティーはナショナルチームの一員としてチェコで行われる歴史のあるステージレース、ピースレースに参加。
第一ステージで優勝し、44年の歴史の中で初のアメリカ人総合優勝者になりました。

 

「今までワールドツアーに行った選手がこのレースに参加してきたけど、勝てなかった。ブランドンはクイーンステージに勝ち総合も獲ってしまった。」

 

過去に輝かしい成績を出したアメリカ人がたった2シーズン欧州で過ごした後に引退した例は今でもアメリカのコーチの記憶に残っています。

ニックマンもキツすぎるレースプログラムをこなさせない事を条件にラヴィクレールと契約しましたが、結果的に31日間連続で出場させられる羽目になった経験を持っています。「これは自分は消耗品として扱われたと言う事だ。サイクリングはビジネスなんだよ。」

 

“強い物だけが生き残る” このスタイルが誰にとっても合う訳ではありません。

 

 

時には足踏みとも思える時間を取ることが結果的に競技力を向上させるだけでなく、自転車をずっと好きでいられるようにしてくれます。

幸いアメリカには育成を目的としたレースやチーム、車連のバックアップ体制があります。

 

自転車を本当に愛し、選手達が豊かな競技人生を送れるように願うコーチや監督も多いことが高い競技力を生んでいると感じます。

彼らが欧州に選手を連れて行きレースを経験させ、彼らの性格・パワーを分析した上で最善の道を選手に提案することが出来るのが、大きな強みと言えるでしょう。

 

その為に、各地域のコーチが中央のコーチと連携している点も見逃せません。

キングがミラーにパワーファイルを送らなければ、マクナルティーの並外れたパワーを元にTJやフィニー、クラドックと言った先輩の通った道筋を参考に彼にとって最善の方策を提案する事は不可能だったかもしれません。

 

またそうした組織的な努力がアメリカ国内に居てもある程度のレベルには到達できる環境を作り出しています。

 

もうひとつ加えるならば、単に高い競技力を手に入れる為に欧州に行くのではなく、アメリカの国内チームでは自転車だけでは食べていけない現状があります。

その為、才能のある選手はいつか欧州に送り出し、欧州で通用する選手にすることで食べて行けるようにしたいという関係者の願いもあります。

アメリカのレース界も大きいですが、それでも職業として成り立つのは本場欧州のみと言う認識が、彼らをいつか欧州で通用する選手を育てたいという活動につながっていると感じます。

 

 

中田尚志

出典・引用元: Velonews
Why Brandon McNulty chose to race in the U.S., not Europe

http://www.velonews.com/2017/06/from-the-mag/why-brandon-mcnulty-chose-to-race-in-the-u-s-not-europe_440975

 

 Why Brandon McNulty chose to race in the U.S., not Europe | VeloNews.com